仕事や学校を辞め、次世代 AIスタートアップ を起業するZ世代たち

DIGIDAY

ジェネレーティブAIの次の波で優位に立つべく、Z世代はすでに行動を開始している。なかには仕事や学校を辞め、「未来の働き方」づくりに一役買うAIテックを起業する若者たちもいる。

24歳のマリク・ドラブラ氏と20歳のライリー・ワルツ氏も、そのような若者だ。ドラブラ氏は先日Googleを退職し、サンフランシスコのアラモスクエアに建つビクトリア様式の大邸宅で開催される、テック起業家のデイブ・フォンテノット氏が設立・出資したAIアクセラレータープログラムに参加している。ワルツ氏も、ニューヨーク市立大学バルーク校の最終学年を休学して、「ハッカー修道院」とあだ名が付けられた同プログラムに参加している。

この12週間の合宿プログラム「ハッカー・フェローシップ・ゼロ(HF0)」に参加すると、起業する会社の2.5%の株式と引き換えに25万ドル(約3250万円)の出資を受けることができる。食事、日用品、洗濯など、日常的な必要はすべてプログラムで面倒を見てくれる。応募するには、オンライン応募で自分の製品を売り込まなければならない。

テック市場でのキャリア構築を望む若者たち

ドラブラ氏は「友人たちには『プログラマー版ハイプハウス(注:Netflixで放送されているリアリティ番組)』といわれる」そうだ。

プログラムでは、ドラブラ氏は23歳のジョナサン・ショーブルック氏と手を組み、他の製品用にコードを書く開発者のアシスタントとなるAIツールの開発に取り組んだ。Adrenaline(アドレナリン)と名付けられたこのツールには、すでに何万人ものユーザーがいる。

ハンドシェイク(Handshake)の最新レポートによると、テック市場の現況にもかかわらず、学生たちはまだこの業界でキャリアを築いていきたいと熱望している。ChatGPTの登場によって拍車のかかるAIの台頭は、テック職をさらに魅力的なものにしているのだ。大学生を対象とした求人検索エンジンであるハンドシェイクでは、テック系専攻の学生は他の学生に比べて倍の数の求人に応募し、50%以上が、10件以上の正社員職に応募している。

ジェネレーティブAIの進歩のペースはあまりにはやく、多くのZ世代や学生たちがどうすれば企業社会で取り残されないかとストレスに悩む原因となっている。

Googleさえも、AIに関しては後手に回っていると批判される。Googleは3月21日に同社の実験的な対話型AIである「バード(Bard)」の公開を開始し、ユーザーにウェイトリストへの登録を呼びかけたところだ。

Googleで4年近く検索機械学習エンジニアを務めていたドラブラ氏は次のように語る。「研究という意味では、Googleは確実に世界最高の場所に数えられる。だが、一般に公開するということになると、本当にとてもゆっくりだ。ChatGPTが登場したときですら、様子を見ているだけで、長いこと何の反応もなかった。これはGoogleの文化をよく示していると思う。非常に優れた研究は行われるのだけど、製品はつくらない」。

「今はとてもエキサイティングなとき」

ジェネレーティブAIの発展スピードに多くの人が不安を抱く一方で、ワルツ氏のようなZ世代は、これを比較的新しいうちに最先端に躍り出るチャンスと見る。

ワルツ氏も、HF0に参加するため、大学に通いながら在籍していたスタートアップ企業の正社員職を数カ月で辞めた。大学ではニューヨーク市のテック系シェアハウスで約15人と共同生活を送っていたため、生活と仕事を共にする空間がいかにコラボレーションを促進するかをよく知っている。

「未来を垣間見せてもらっているような感じだ。ここで開発されているのは最高にクールなテクノロジーなのだから」とワルツ氏は話す。彼は現在、20歳のメーラン・ジャラリ氏とともに、Numerous(ニューメラス)というGoogleシート(Google Sheets)とエクセル(Excel)のプラグインを開発している。データクリーニング、フォーマット変更、数式作成など、スプレッドシートに関するさまざまな作業の自動化に、ChatGPTが使用するものと同じAIを使用し、現在のユーザー数は4000人を超える。ワルツ氏は「今はとてもエキサイティングなときにある」と付け加えた。

ワルツ氏は、急速に進化するAIの展開に大学のカリキュラムが付いていくことができていないという。大学の最後の学期がAIにほぼ触れないのを見たワルツ氏は、いったん休学し、4月までHF0プログラムに参加することで先に進もうと考えた。

「大学の授業はとても時代遅れだった」とワルツ氏は話す。「秋にはAIの話をしている教授もいたが、ある記事に基づいてざっくりとした概要を見ていくだけのものだった。このような情報を教えてもらえるのはいいことだと思うが、大学を出てここに来ることで、大学では絶対にできない形でAIについて深く掘り下げることができる」。

普通の大学生と同じことをするのは、旧式の考え方

こう感じているのはワルツ氏だけではない。

ドラブラ氏も「現在、情報科学教育はやりかたが固まってしまっている」と話す。「単に教科書を読むだけで、オフィスアワー以外でフィードバックを得られることはほとんどない。オフィスアワー中も、ティーチング・アシスタントは大勢の対応に追われ、必ずしも最適な支援をしてもらえるわけではない」。

ジェネレーティブテクノロジー業界が急速に成長を続けるなか、大学とインターンシップという従来のルートでは、学生がこの業界に入るための十分な素養は得られない可能性がある。すべてがあまりに急速に動いているため、今AI分野に入り込めなければもう機会はないと思った、とドラブラ氏は語る。

ショーブルック氏は「ChatGPTがかなり大きな存在となることは、自分にも、自分の仲間のあいだでも、明らかだった。この機を捉えない手はなかっただろう」と話す。

ショーブルック氏も、テック業界で働きたい大学生にはできるだけ早く開発とテストを始めることを勧める。

「いい成績を取ろうとしたり、テストで良い結果を出したり、インターンシップに応募したりと、単に普通の大学生と同じことをするのは、旧式の考え方であり旧式の成功への道だ」とショーブルック氏は話す。「可能な限りの時間を開発に注ぎ、できたものを公表していかなければ、後れを取ってしまう可能性がある。これは多くの学生が感じていることだ」。

「考え方を変え、これまでのやり方を踏襲しない」

ショーブルック氏がテック関連のサブレディットで見かける投稿の多くが、「GPT-4がもっといいコードをどんどん出力できてしまうのに、情報科学を学ぶ意味なんてあるのか」と「非常に不安を感じている大学生たち」のものだという。

「この分野で何かを成したいと思うのであれば、考え方を変え、これまでのやり方を踏襲しないことが必要だ」とショーブルック氏は話す。

ワルツ氏はそれが簡単ではないと認める。「ときどき、インポスター症候群的な感じで自分にまったく自信が持てなくなるときがある。投資家へのプレゼンでは、とてもストレスを感じた。情報はすべて頭の中にあるのだが、それを話すときに自信を持って話しているように見えるか、不安だった」。

だが「シリコンバレーでは年齢は関係ない」と自分にいい聞かせるそうだ。マーク・ザッカーバーグだって、Facebookを始めたときはほんの19歳だったじゃないか。セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジがGoogleを設立したのも20代半ばだ。

「経験が重要だと思うのものだが、ティーンエイジャーが始めた大企業はこれまでもたくさんあった」とワルツ氏はいう。

[原文:How Gen Z are quitting jobs to create next-gen AI startups

Cloey Callahan(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

Source

タイトルとURLをコピーしました