TikTok 、ソーシャルネットワークという位置づけから脱却:「TikTokに対する見方はひとつではない」

DIGIDAY

TikTokでの商品販売が、急速にマーケターにとって広告と同じくらい重要になってきている。ロレアル(L’Oréal)はその好例だ。

ロレアルはわずか1年のうちに、ブランドページからファンに特定の商品を購入してもらう取り組みから、TikTokで最大級のトレンドのひとつ、ハッシュタグ「#TikTokMadeMeBuyIt」のスポンサーになるまでになった。

クリエイターはこのハッシュタグを使って、TikTokで見て購入したものを公開している。TikTokでは何でもそうだが、こうした商品のなかからバイラルするものが出てくる。こうした現象が頻繁に起こるほど、人々の購入意欲はかき立てられる。

実際、最新トレンドについていかなければという気持ちから、人々はトレンドに基づいて商品を購入しがちだ。TikTokはこうした傾向を加速させる。というのも、TikTokのアルゴリズムはユーザーと関連性がある楽しい動画を表示するようになっており、そこには動画で見るまで購入を考えたこともなかった商品がしばしば登場するからだ。

ロレアルは衝動買いの側面に着目

マーケターがTikTokから学んだ教訓があるとしたら、バイラル現象と顕示的消費の関連を軽視してはならないということだろう。いまやスクロールと買い物のあいだのギャップは限りなく縮小しているのだから、なおさらだ。イーマーケター(eMarketer)が引用するバザールボイス(Bazaarvoice)の2022年1月の調査によれば、TikTokで商品購入をした世界のユーザーの5人に1人は、ほかのプラットフォームがトレンドに追随するよりも「ずっと前に」商品を購入したと答えている。ロレアルのマーケターは、こうした衝動買いの側面に注目しているのだ。

彼らはTikTokと提携し、クリエイターが商品をセレクトしたガルニエ(Garnier)やメイベリン(Maybelline)といったブランドのギフトボックスを、英国版のTikTok ショップ・マーケットプレイスから直接購入できるようにした。つまり、アプリをスクロールしていて、お気に入りのビューティコンテンツクリエイターがギフトボックスを紹介しているのが目に入り、欲しいと思えば、次の瞬間にはもう購入できるのだ。

「eコマースの購入はたいてい補充であり、機能と実用的動機に基づいている」と、ロレアルUKおよびアイルランドのCMO、レックス・ブラッドショー=ザンガー氏は述べる。「TikTokと同アプリのクリエイターにとっては、発見がすべてだ。そのため、ショッピング体験は発見要素を中心として今まさに再構築されつつある。画面をスクロールしてクリエイター動画を見る人々が感じる楽しさとの融合が始まっているのだ」。

変化しつつあるTikTokの位置付け

広告主にとって、またTikTokにとっても足かせになるのは、アプリの性質上、販売機会が刹那的であることだ。たとえば、ユーザーが流行しているダンスをコピーした動画を投稿するようになったら、次に移るのは時間の問題だ。こうした一過性がコマースの機会を制限するかもしれない。そうはいっても、TikTokは現在の大成功をもたらした要素を変えようとはしないだろう。広告主もこのことを理解しつつ、短期的な売上をもたらすメリットを評価している。しかし、今の勢いを収益につなげたければ、こうした欠点を克服しなければならないことも、TikTokは認識している。

「TikTokはソーシャルプラットフォームからエンターテインメントプラットフォームへと移行する初期段階にある」と、動画ブランド適性プラットフォームのゼファー(Zefr)で戦略・マーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるアンドリュー・サービー氏はいう。「YouTubeの戦略でもっとも成功したもののひとつが、動画広告のインフラ構築だ。これにより、以前はテレビの広告枠だけを購入していたバイヤーが、YouTubeの広告枠を同等のものとみなすようになった」。

詳しく見てみると、TikTokとロレアルの契約にもこうした変化が確認できる。

ロレアルのギフトボックスにはハッシュタグ「#TikTokMadeMeBuyIt」のブランディングがなされている。TikTokが他の企業の商品にこのようなブランディングをおこなうのは初の試みであり、このパートナーシップがロレアルにとって収益化の機会となりうるだけでなく、TikTokにとってもアプリ上でのコマースを宣伝するチャンスであることを裏づけている。実際、TikTokはコマースを、広告業界が押し付けた「ソーシャルネットワーク」という位置づけを脱する手段とみなしている。

しかしすべてのマーケターがTikTokを、ロレアルが実施しているような、ファネルの全体にわたるマーケティングの手段とみなしているわけではない──少なくとも、今のところは。

TikTokの「本質」とは?

「TikTokに対する見方はひとつではない」と、ブラッドショー=ザンガー氏はいう。

ひとつの側面は、オーディエンスの大きさや、テイクオーバー広告やチャレンジといったインパクトのあるフォーマットを利用してロレアルが実施するような、ファネル上部のマーケティングや大規模なブランド構築の手段であると、同氏は説明する。これに加えて、ファネル下部に注目し、最新のパートナーシップがそうであるように、売上を伸ばすことにも利用できる。

さらに、ファネル中層の検討のフェーズでも、信頼できるクリエイターの声が購入意思を固める後押しをする形で、役に立つ可能性がある。しかし、他のプラットフォームとの違いはファネルが非常に圧縮されていることであり、それがTikTokを理解し活用するうえでのハードルになっていると、ブラッドショー=ザンガー氏は指摘する。

「我々はさまざまなチャネルにおいてマーケティングファネルを十分に研究してきたので、マーケティング目的に応じて予算をどう使うべきかをはっきりと理解している」と、ブラッドショー=ザンガー氏はいう。「目的をできるかぎり明確化しておく必要がある。チャネル自体が何をするかを教えてくれるわけではないからだ」。

メディア戦略の一部として固定的な地位を占める事例がますます増えてきてはいるものの、TikTokが依然としてソーシャル広告予算に頼っている現状は、こうした背景で説明できそうだ。多くのマーケターはまだ、このアプリの本質を把握しようとしている段階にある。

ソーシャルだがソーシャルではない

言うまでもなく、TikTokは本質的にソーシャルだ。他のソーシャルネットワークと同様に、人々はクリックで投票して自分が見たいものを決める。だが、ジョーおじさんとジルおばさんが先週60歳の誕生日にブリュージュで何をしたかを知る場ではない。

「TikTokの成長は圧倒的だが、一部のブランドはいまだに本格的にコミットすることに消極的だ」と、クリエイティブエージェンシーのカルト(Cult)でアソシエイトストラテジーディレクターを務めるアレックス・マニング氏はいう。「ユーザーの年齢層を誤解しているからか、プラットフォームに特化したコンテンツアプローチが必要だからか、あるいは本質を見誤っているからかもしれない。TikTokは、従来の意味でのソーシャルメディアプラットフォームではないのだ」と、同氏は述べた。

[原文:‘Shopping reinvented’: L’Oréal eyes impulse sales on TikTok

Seb Joseph(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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