岸田政権は「4島返還」へ回帰か – NEXT MEDIA “Japan In-depth”

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林芳正外相と英国のリズ・トラス外相 2021年12月11日英国・リバプールで開催されたリバプール博物館でのG7外相・開発大臣サミット初日
出典)Photo by Paul Ellis – WPA Pool/Getty Images

樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)

【まとめ】

・林外相は北方領土問題で「4島の帰属が交渉対象」と明言した
・林発言は「2島返還」に譲歩した2018年のシンガポール合意からの決別を示唆している
・「4島返還」に立ち返る意図があるなら、岸田首相は通常国会で明確に表明すべきだ

■「2島返還」が見直される可能性が出てきた。

 林外相は1月13日、日本記者クラブでの会見で、北方領土について「交渉の対象は、4島の帰属問題だ。これが日本の一貫した立場だ」と明確に述べた。

 安倍晋三首相(当時)とプーチン大統領による2018年秋の「シンガポール合意」で、日本は「2島返還」へと転換したが、岸田政権は、これと決別、従来の基本方針への回帰をめざすのだろうか。

■ 岸田発言より踏み込む

 外相発言自体は、就任直後の岸田首相がプーチン大統領と電話協議した後の発言(2021年10月7日)、と同趣旨ではある。

 首相はこの時、「4島の帰属の問題を明らかにして、平和条約を締結する、これが従来の政府の基本的な考え方だ」と述べている。

 13日の林外相発言は、この岸田発言よりさらに踏み込んだ。

 外相は「これまでの両国の諸合意を踏まえて交渉に取り組む」として、シンガポール合意に加え、1993年のエリツィン大統領と細川護熙首相(いずれも当時)による「東京宣言」、2001年の森喜朗首相(同)とプーチン氏による「イルクーツク声明」にわざわざ言及した。

 「東京宣言」は、「国後」、「択捉」、「歯舞」、「色丹」の4島名を列記して「法と正義」による解決を謳っている。イルクーツク声明も同様に4島を明記、これを追認する内容だ。

 二つの合意にわざわざ触れた林発言は「2島」を放擲、「4島返還」への回帰を、いっそう強くにじませるのが狙いではなかったか。 

 外相は13日の会見で、メモに目を落としながら、慎重に答えた。事務方が作成、外相が承認した想定問答とみられ、咄嗟に自分の判断で答えたものではなく、慎重に検討、決められた方針に沿ったとみるべきだろう。

 岸田内閣の北方領土問題に望む基本方針になるのかもしれない。 

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