調理ソースのヘイブンズキッチン、QRコード付き包装に刷新 : 顧客インサイトを掴む接点に

DIGIDAY

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パンデミックがはじまると、レストランから小売店まで、さまざまな企業がQRコードを採用するようになった。ヘイブンズキッチン(Haven’s Kitchen)というCPGブランドは、サイトへのトラフィックを増やす方法としてQRコードを利用している。

ジュニパーリサーチ(Juniper Research)のレポートによると、2022年末までには約53億枚のQRコードクーポンが利用される見込みだ。この数は、Covid時代における利用によって増加したものだ。過去2年間に一部の消費者向けブランドは、消費者の行動を追跡する方法として、パッケージにQRコードの使用を増やしてきた。ビール会社のステラアルトワ(Stella Artois)などのように、ソーシャルディスタンスを可能にするブランドアクティベーションを実行するため、QRコードを使用してきた企業もある

マリネ、ドレッシング、料理用ソースを販売するヘイブンズキッチンでは、QRコードが同社の小売マーケティング活動にとってより重要な役割を果たすとともに、QRコードにより顧客の行動について有益なデータを収集している。同社はパッケージを一新してQRコードを掲載し、同社が最近制作を開始した多くのオリジナル料理動画に顧客を誘導している。ウェブサイトへの集客が増えるにつれ、顧客が自社製品をいつ、どのように使用するかについても、より深い洞察を得ることができるようになってきた。

QRコード付きのパッケージに刷新

ヘイブンズキッチンの商品ラインが最初にリリースされたのは2018年で、現在はホールフーズマーケット(Whole Foods Market)やターゲット(Target)など全国的チェーン店の2000店舗で販売されている。これらの店舗のうち1500店舗は過去2年間に追加されたもので、ヘイブンズキッチンが小売店での扱いを増やすにつれ、売上は劇的に増加した。2020年には売上高が前年比で500%、次の年には80%も増加した。

消費者が自宅での調理に慣れてきた現在、創設者でCEOを務めるアリソン・ケイン氏は、ヘイブンズキッチンが、顧客の毎週の食料調達の定番になることを望んでいる。「冷蔵食品なので、D2Cで大規模に販売するのは困難だ」とケイン氏は付け加えている。「そこで当社は、便利なレシピによってリピート購入を生み出す必要があることを最初から理解していた」。

このためにヘイブンズキッチンは2021年末、自社ウェブサイトのリンクにつながるQRコードを印刷した、新しいソースパウチと段ボール製の商品棚を段階的に導入しはじめた。同社の8つのSKUそれぞれにはQRコードが印刷されており、顧客はオーダーメイドのソースのレシピや、ソースを使用するカスタマイズされたレシピや、候補となる材料のリストにアクセスすることができる。また、小売店の棚に置かれる段ボール箱にもQRコードがあり、スキャンするとカスタマイズされたレシピが表示される。この戦略は、食料品ブランドが、物理的な原材料ラベルをデジタルQRコードに置き換え、農業的な調達やトレーサビリティを紹介するようになってきている傾向とも合致していると、同氏は語る。

料理学校として同社を始めたケイン氏によると、「食品のコンテンツは過去数年間に何回も変化してきた」。多くの家庭調理が、フード52(Food52)のようなアウトレットや、ソーシャルメディアのフィードに目を向けるようになり、食品ブランドはあまり複雑でないレシピを作ることで、要点を明確にできるようになった。

レシピへのリンクが記載されたQRコードを顧客が実際に撮影するかどうかを確認することは、高額なリスクを伴うことだった。「パッケージの変更は大きな投資だった。特に、すぐに新しい売上につながるとは限らないことが問題だった」と同氏は述べている。過去4カ月のあいだで同社はパウチのデザインを変更し、小売業者に出荷する必要があった。さらに社内チームは付属のレシピを同社のニューヨークにあるテスト用キッチンで作り上げた。「当社は、自社サイトで自社のSKUを中心とするエコシステムを作り上げるため、150本の調理動画を制作した」と同氏は述べている。

しかし早期段階での実績は、この戦略がうまく機能することを示した。1月にQRコードを導入して以来、同社のウェブサイトでは、小売店で買い物をした客によるトラフィックが先週比で増加したと、ケイン氏は語る。新しいパウチが使用開始されてからの30日間で、レシピへの参照も70%増加したことも確認できた。

顧客の行動の新しいデータ

現在のところ、ヘイブンズキッチンがQRトラフィックを使用する主な目的は、新しい売上の追跡ではなく、オンラインでのエンゲージメントの測定だと、ケイン氏は語る。

QRコードにより生み出されたトラフィックにより、マーケティングチームは、スキャンをする時間から、週全体を通しての驚くべき消費パターンがあることに気づいたと、同氏は語る。「たとえば、土曜日と日曜日はサイトの訪問者がもっとも多い曜日で、これは、顧客がいつ当社のレシピを使用するかについて、私の当初の仮説に反するものだった」と同氏は説明している。さらに、トラフィックは通常午後7時頃に急増する。これは、顧客が、購入したソースのSKUのレシピを、すでに自宅で探していることを示している。

またヘイブンズキッチンは、行動喚起のためのさまざまなマーケティング表現もテストしてきた。たとえば、「スキャンすると数百のレシピを見られます」の代わりに、「400のレシピ」というシンプルな表現のほうがより人目を引くことに気づいたと、ケイン氏は語っている。「数カ月のうちに、夕食時間のスキャンがひとつの方向に固まれば、当社はそれに合わせてコンテンツを調整する」と同氏は述べる。

一方、QRの使用法のいくつかは、同社の価値提案を強化していると、ケイン氏は語っている。「QRのスキャン数は、各SKUの売上ランキングと一致している」と同氏は述べる。たとえばヘイブンズキッチンのゴールデンタヒニ(Golden Tahini)と、新しいココナッツカシュー(Coconut Cashew)ソースはもっとも多く売れていると同時に、トラフィックを大幅に増やしている。一方でショウガ入り味噌(Gingery Miso)はスキャン数が少ないが多く売れており、「人々が、店舗で何をするかを決めている」ことを示していると同氏は語る。

「人々がどのレシピやショッピングリストを一番早くダウンロードするかを長期的に評価し、将来のコンテンツをその人々に合わせてカスタマイズできるようになるだろう」と同氏は述べている。

顧客をデジタルチャネルに引き込む効果的方法

小規模なD2Cビジネスを行っている食料品ブランドにとって、小売の分析情報を得ることは困難だ。そのため、顧客がどのような人々かを把握するためのクリエイティブな方法を見つけ出す必要に迫られている。

eコマース分析プラットフォームのミックマック(MikMak)の創設者でCEOを務めるレイチェル・ティポグラフ氏は、QRコードは、ブランドが物理的な買い物客をデジタルチャネルに引き入れるための安価で効果的な方法だと語る。

「eコマースの爆発的な増大と、ブランドによる動画やソーシャル広告などのチャネルを組み合わせることで、QRコードを使ったエンゲージメントの黄金時代が到来し、購入までの過程を短縮することができる」と同氏は述べる。

同氏は、多くのCPGブランドが、商品サンプルにQRコードを組み込み、買い物客が商品についてより多くの情報を得て、より多くの買い物をできるようにするとともに、CTV(コネクテッドTV)広告によって、特別価格やプロモーションにアクセス可能にしていると語る。同氏は、ミックマックが最近行った、モンスターエナジー(Monster Energy)とアリゾナサンライズ(Arizona Sunrise)のキャンペーンを例に挙げている。「ブランドパートナーには、これらをビルボードや空港内の広告に使用してもらったこともある」と同氏は述べる。

ヘイブンズキッチンの場合、成長が何年間も続いたあとで、小売店の棚で存在感を保つことが次の課題だ。

「誰もが、コンテンツ、コマース、コミュニティの接点を見出そうとしている」とケイン氏は言う。「我々は、顧客が毎週戻ってこられるようなデジタルコンテンツを使って、食料品ブランドの構築を試みている」。

[原文:How Haven’s Kitchen is using QR codes to get more people visiting its website]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Haven’s Kitchen

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