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eコマースの大手であるショッピファイ(Shopify)は、ソーシャルメディアの有名人によるオンラインでの売上が増加し続けるのに対応して、リンクポップ(Linkpop)と呼ばれるリンクインバイオ(link in bio)ツールにより、そのシェアを獲得しようと望んでいる。
ほかのリンクインバイオサービスと同様に、リンクポップでも利用者はひとつのページで複数のリンクをプロモートできる。たとえばミュージシャンなら、自分たちの商品サイト、YouTubeチャンネル、Spotifyのページへのリンクをプロモートできる。しかしリンクポップがほかのリンクインバイオツールと異なるのは、可能な限り少ない数のクリックでショッピングをプロモートできるよう、はじめから設計されていることだ。リンクポップの利用者は厳選されたShopify商品をプロモートでき、訪問者はリンクインバイオのページから直接購入できる。たとえば別のリンクをクリックしてAmazonやそのほかのeコマースサイトに移る必要はなくなる。
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3月22日に公開されたこのツールは、Shopifyの出品者かどうかにかかわらず、誰でも無償で使用できる。しかし、購入可能なリンクはShopifyの出品者のみが使用できる。これによって、最終的にリンクポップの利用者は、チェックアウト環境にアクセスできるようにするために、Shopifyのストアフロントを作成するよう動機付けられることが期待されている。
ソーシャルコマースの不可欠な部分
ここ数年間で、リンクインバイオは米国におけるソーシャルコマースの不可欠な部分となった。アパレルラインを持つYouTubeの有名人から、D2Cのブランドまで、あらゆる規模の出品者が、自分たちのソーシャルメディアのページをチェックする人に対して複数のリンクをプロモートするため、リンクインバイオツールを使用している。リンクインバイオのもっとも著名な新興企業のひとつであるリンクツリー(Linktree)は昨年、13億ドル(約1573億円)の評価額を確保した。オンライン売上のなかでTikTokなどのソーシャルメディアアプリが占める割合が増えるにつれ、Shopifyなどのeコマース企業は、ソーシャルメディアサイトがさらに多くのeコマースツールを自分たちで作成することを検討しているにもかかわらず、リンクインバイオの分野に成長の機会を感じ取るようになった。
Shopifyの商品ディレクターを務めるアミール・カバラ氏は、米モダンリテールに宛てた電子メールで次のように記している。「リンクポップでは、出品者が自社のブランドを構築する接触ポイントのすべてをひとつの場所に集め、リンクインバイオのページから直接販売できるため、フォロワーを従来よりも簡単に購入者やブランドの擁護者に変えることができる。リンクポップはコマースを念頭に作成されたので、これを使用している出品者やクリエイターは、すでに使用しているプラットフォームの全体にわたるソーシャルストアフロントを開設し、支持者を増やすことができる」。
このリンクインバイオのスペースは、本質的に迂回策として開始されたものだ。インスタグラムでは今でも、利用者が投稿への直接リンクを追加することが許可されていない。インスタグラムの普及が広がり、毎月のアクティブユーザー数が20億人を超えるにつれ、インスタグラムやソーシャルメディアサイトで多くの支持者を集め、それらの利用者を複数のサイトに誘導したいと望んだ人々にとって、直接リンクがサポートされていないことが問題になった。
ピュブリシス(Publicis)で最高コマース戦略責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は、現在のところリンクインバイオツールは、少なくとも米国では「ソーシャルメディアのトラフィックを収益化するためのもっとも普及した、もっとも一般的な方法だ」と述べている。このようなサイトとしてもっとも有名なリンクツリーは2016年に設立され、現在では利用者が1200万人を超えている。同社は現在、ケイティ・ペリー氏やセレーナ・ゴメス氏などメインストリームのセリブリティを多くの利用者のうちに数えている。
拡大するクリエイターエコノミー
過去数年にわたって、ソーシャルメディアアプリ用のコンテンツを開発し、支持者を獲得して生計を立てている人々はクリエイターやインフルエンサーと呼ばれ、これらの人々に向けてツールを作成している企業に多くの注目が集まるようになった。クリエイターエコノミーと呼ばれるものの重要性の増大は、この分野の企業の評価額がますます高まっていくことにより示されている。たとえばパトレオン(Patreon)は2014年に創設され、昨年に40億ドル(約4840億円)の評価額を達成した。同様に、Shopifyのような従来型のB2B企業も、クリエイターを正面切って対象としたツールのリリースを開始した。
これは、TikTokやインスタグラムのようなアプリが、商品の発見においてさらに重要な役割を果たすようになり、企業の売上をけん引しているためだ。一方で、コマース企業はこのような消費パターンの変化に適応する必要があることを理解しつつある。たとえば「クリエイター」という用語は、最近のShopifyの決算発表で乱発されるようになってきたが、Shopifyのプレジデントを務めるハーレイ・フィンケルスタイン氏は、2月に行われた同社の第4四半期の決算発表において、過去2年間のオンライン売上額の増加は、ほかの要因とともに、「メーカー、クリエイター、インフルエンサー、キュレーターに、より多くの販売機会が」存在することを意味していると語った。
Shopifyには100万を超える出品者が存在し、リンクインバイオ機能などの新しいコマースツールを立ち上げるには適している。しかし同社は、ほかのリンクインバイオ企業と同様に、ソーシャルメディアプラットフォーム自体からの競争の激化に直面している。
「すべてのソーシャルプラットフォームには、意図的にコマースプラットフォームとなる大きなイニシアチブが存在する」とゴールドバーグ氏は語る。インスタグラムは2019年にインスタグラムチェックアウトと呼ばれるアプリ内チェックアウト機能をリリースし、これに対してTikTokは8月にアプリ内ショッピング機能を公開した。これらの事例の多くについて、TikTokの場合と同様に、Shopifyはアプリ内ショッピング環境を実現するため支援するベンダーのひとつだということは特筆に値する。
リンクインバイオ企業たちの困難
このため、コマースに出資するソーシャルメディアアプリが増えていくことを踏まえて、リンクインバイオツールは「おそらく長期的なソリューションではないだろう」とゴールドバーグ氏は語る。この存続の危機に直面した各リンクインバイオ企業は、競って独自の機能を追加して、インスタグラムやTikTokのコマースツールを使うようにますます勧誘されているユーザーが、自社商品を使い続けることに期待している。たとえば、リンクインバイオ企業のコージー(Koji)は、ユーザーが基本的なストアフロントをセットアップできるよう支援するツールを昨年追加し、一方でリンクツリーは各種のコマース企業との統合を増やすことをめざして、昨年夏にカスタムTシャツメーカーのスプリング(Spring)とのパートナーシップを発表した。この最新のShopify製ツールにより、これらの新興企業にとって、この分野はますます競合が激しくなる。
カバラ氏は、Shopifyが今後リンクポップに追加する新機能について、電子メールでの回答を控えたが、同社は自社の役割が「すべてのクリエイター向けのコマースインフラストラクチャ」であることと見なしていると述べた。
「Shopifyでは、熱心なフォロワーを集め、これらのフォロワーに感動、情報、または楽しみを与えている人たちはすべてクリエイターだと考えている」とカバラ氏は記した。
[原文:Shopify targets influencers with new link-in-bio tool Linkpop]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Image from Shopify