ニュースの サブスクリプション 、ピークは過ぎ去ったか。米国市場でも減少傾向に

DIGIDAY

ロイター・ジャーナリズム研究所(Reuters Institute for the Study of Journalism:以下、ロイター研究所)が2023年6月14日に公開した最新のデジタルニュース・リポート(Digital News Report)によると、ニュースのサブスクリプションの成長が世界中で横ばいになっているという。20カ国の約4万人を対象に行った調査で、デジタルニュースのサブスクリプション料を払っていると答えた人の割合は、2年連続で平均17%に留まっている。

ここから、「少なくとも現在提供されているサブスクリプション製品に関して、サブスクリプションというトレンドがピークに達してしまったのか」という疑問が生じる、とリポートには書かれている。

一桁台の減少なら「勝ちと言える」状況

米国市場の数字はましな方だ。米国で調査に参加したおよそ2000人のうちの21%が、オンラインのニュースにお金を払っていると答えている。これは2022年の同リポートの19%から増加している。

しかし、米国でもデジタルサブスクリプションが失速し始めていることを示す指標がある。

あるメディア幹部は、匿名を条件に米DIGIDAYの取材に応じ、2022年第1四半期と比べて、2023年第1四半期のサブスクリプションは1桁台の減少となることを明らかにした上で、「いまの市場の状況を考えれば(中略)勝ちといえるだろう」と述べた。

「現在の経済状況を考えれば、このリポートがサブスクリプション市場の軟調さを示唆していることは驚くことではない」と同氏は言う。

ロイター研究所は、各市場のサンプルグループの一部を対象に、過去1年間にサブスクリプションを解約または見直した人の割合を調査した。米国では調査対象者155人の47%が解約または見直していることがわかった。

リポートに掲載された全20の市場を見ると、ニュース購読者の約5人に1人(平均23%)が、継続的に購読しているニュースのうち少なくともひとつを解約したと回答し、同じ割合がより価格が安いコースに変更したと回答している。過去1年間にサブスクリプションを解約した人のうち、その理由として最も多く挙げられたのは、「生活費」「高額なサブスクリプション料」だった。

各パブリッシャーのサブスクリプションの状況

ワシントン・ポスト紙(The Washington Post)は、CEOであるフレッド・ライアン氏が6月12日に退任を発表したばかりだが、過去1年間のデジタル購読者数は250万人に留まっている。これは、2021年の購読者数300万人から減少となる。

一方、ロサンゼルス・タイムズ紙(Los Angeles Times)は、デジタル購読者数を2020年の22万5000人から2022年の45万人に倍増させた。しかし、この1年間で購読者数は約10万人しか増えていないと、同社は報告している。

タイム(TIME)は2023年6月にペイウォールを完全に廃止した。アクシオス(Axios)によると、タイムCEOのジェシカ・シブリー氏は、同社はジャーナリズムで世界のより多くの読者にアプローチしたいと考え、デジタルプラットフォームでより多くの広告付きコンテンツを制作する予定だと述べているという。タイムのデジタル購読者数は25万人だ。

バラエティ(Variety)は、一般向けニュースよりも業界誌としての性格が強いが、バラエティ・インテリジェンス・プラットフォーム(Variety Intelligence Platform)でプレジデント兼チーフメディアアナリストを務めるアンドリュー・ウォレンシュタイン氏がDIGIDAYに語ったところによると、バラエティは6月上旬、そのサブスクリプション製品に低価格版を追加したという。バラエティの「VIP+」という有料サブスクリプションは年間420ドル(約6万円)だが、「VIP+バイタルズ(VIP+ Vitals)」と呼ばれる新階層は年間240ドル(約3万4000円)または月20ドル(約2860円)だ。

「最終損益で痛い目に遭わないようにしたいなら、エディトリアルのサブスクリプション製品は、厳しい市場において常に最高の状態になければならない」とウォレンシュタイン氏は言う。「VIP+では、価格設定、マーケティング、コンテンツ戦略など、さまざまな方法で製品を進化させ続けることで、変化する顧客のニーズに対応できるようにしている」。ウォレンシュタインは、バラエティのVIP+加入者数についての言及は避けた。

加入者増を実現しているパブリッシャーも

悪いニュースばかりではない。ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は2022年第1四半期以降、デジタル版購読者を79万人増やし、現在では900万人を超えるデジタル専版購読者を擁している。

ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)の2023会計年度第3四半期(3月31日締め)のデジタルサブスクリプションは330万件で、前年同期比9%増、前四半期比では13万2000件増となった。

アトランティック(The Atlantic)のサブスクリプション数は現在90万人を超え、そのうち54%がデジタル版だと同社の広報担当者は述べている。2022年末の86万件からの増加となる。アトランティックは2023年初めにダイナミックペイウォールを導入した。

アトランティックCEOのニック・トンプソン氏は2022年12月、DIGIDAYに対し、新しい「スマートメーター」戦略を実施することで、今後2年間で約12万5000人の購読者を獲得することを目指していると語った。

読者にお金を支払わせるもの

ロイター研究所の調査では、コンテンツがより特徴的であれば(22%が回答)、広告なしのオプションがあれば(13%が回答)、価格がより安いかより柔軟であれば(32%が回答)、コンテンツにお金を払うかもしれないと回答している。

しかし、回答者の42%は、何を言われてもお金を払う気にはならないと述べている。

[原文:As news subscriptions stall, the U.S. market is faring better than most

Sara Guaglione(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)

Source

タイトルとURLをコピーしました