韓国版Google「 ネイバー 」について知っておくべきこと:米中古ファッション再販ポッシュマークを買収

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

韓国のGoogleと呼ばれることもあるネイバー(Naver)は10月3日、米国での事業拡大を目指す同社にとって最大の買収を発表した。検索エンジン大手の同社は、米国に拠点を置く中古品マーケットプレイスのポッシュマーク(Poshmark)を12億ドル(約1700億円)で買収することで合意した。

この買収は、中古品市場が成長を続けるなかで行われたもので、ネイバーはイーベイ(eBay)やスレッドアップ(ThredUp)のような企業と競争しながら、米国での小売業に足場を築きたいと考えている。調査会社ガートナー(Gartner)のデータによると、調査対象の小売業者の37%が、現在再販プログラムを提供しているか、今後2年以内に開始することを検討しているという。

ガートナーのディレクター・アナリストであるカッシ・ソチャは、「商品の再販やリサイクルは、米国のeコマース分野で高まっている傾向にある」と話す。

日本ではLINEが成功

1999年6月に設立されたネイバーは、当初は検索エンジンとしてスタートしたが、その後、電子メール、メッセージ、決済、ニュースアグリゲーション、オンラインショッピングなどに手を広げてきたインターネットサービスプロバイダだ。オンライン文学プラットフォームのワットパッド(Wattpad)やデジタル漫画のウェブトゥーン(Webtoons)など、韓国でもっとも広く利用されているウェブサイトやモバイルアプリを所有している。。また、ソフトバンクとネイバーが運営する共同持株会社を通じて、日本最大のメッセージングアプリ「LINE」も運営している。ネイバーのウェブサイトによると、昨年の売上高は約48億ドル(約7000億円)で、4595人の従業員数を雇用している。韓国の証券取引所に上場しており、日本、フランス、中国、インドネシア、台湾、タイで海外事業を展開している。

直近の第2四半期決算では、コマース事業の売上が20%近く伸びて3億3900万ドルになった。ネイバーのコマース部門には、ネイバーの決済システムと顧客データ分析を利用して中小企業が製品を販売するeコマースプラットフォームのストアフロント(Storefront)や、小売業者と顧客がリアルタイムでコミュニケーションできるショッピングライブ(Shopping Live)などのベンチャー企業が含まれている。

同社の第2四半期決算報告によると、売上高全体に占めるコマースの割合は検索に次いで2番目に大きい。売上高の増加は、第2四半期に商品総額が20.8%増の78億ドル(約1兆1300億円)に達したことによるものだ。

ソチャ氏は、「ネイバーは、eコマース分野でさらなる買収を行い、現在展開している韓国と日本以外の地域にも拠点を拡大している。eコマースで成功するために世界的にも完璧な位置につけている」と、述べています。「同社は顧客中心のアプローチをとっており、顧客がオンライン上でどのようにデジタルショッピングを行うかを理解し、その消費者の期待に見合ったサービスと体験を提供している。彼らは、D2C体験だけに焦点を当てるのではなく、いかに顧客をその体験に導き、カスタマージャーニーを適切に誘導するための方法に注力している」。

たとえば、日本ではメッセージアプリとして人気の高いLINEでは、ソーシャルコマース事業を立ち上げた。ユーザーは、LINEギフトと呼ばれるソーシャルギフト機能を使って、LINE経由で友人にギフトを送ることができる。

世界進出の歩みを進めてきたネイバー

ネイバーはほかの大陸にも進出しているが、そのリーチの多くはまだアジアに集中している。「彼らはグローバルな展開を望んでいるが、世界の中核的なテクノロジー市場が米国と北米であることは誰もが知っている」と、自身のウェブサイトであるピックール(Pickool)で韓国のテクノロジー界を研究しているフィリップ・リー氏は言う。

コリア・ヘラルドの報道によると、ネイバーは最初の試みとして、2005年と2013年の2回、日本の検索市場に参入しようとしたが、成功しなかった。2019年、ネイバーはソフトバンクと合弁会社のZホールディングスを設立し、子会社や関連会社間の経営統合を模索した。新たな契約では、ソフトバンク傘下のヤフー・ジャパンとネイバーのLINEアプリが統合され、1つの企業となった。

ネイバーは長年にわたり、日本やアジア内の多くの確立された市場で最大の検索エンジンのひとつとなった。AIへの投資も行っており、2017年7月には、フランスに拠点を置くゼロックス・リサーチ・センター・ヨーロッパ(Xerox Research Center Europe)を買収し、人工知能の改良を行うことに注力している。

「検索やコマースといったインターネットの特定の部分だけでなく、インターネット全体のリーダーになるにはどうしたらいいか、を考え続けている。資産だけでなく、実績も差別化することで、彼らはこの分野で世界をリードし続けることができる位置にいる」とソチャは話した。

なぜ「再販」のポッシュマークを買収したのか

専門家は、現在再販市場で繁栄している企業は、eコマースとそれを支える技術の両方に投資している企業であると指摘した。「ネイバーは多くの例のひとつであり、テクノロジーに投資し、オンラインでの(企業間)取引体験に投資すれば、その2つの組み合わせが成功につながる」とソチャ氏は述べた。

両社によると、ネイバーはポッシュマークを1株当たり17.90ドル(約2600円)を現金で支払う。ポッシュマークは2021年1月に上場し、取引初日の時価総額は70億ドル(約1兆円)超だった。しかし、公開市場において、ポッシュマークは一貫して利益を出すのに苦労してきた。8月の第2四半期決算では、2290万ドル(約33億円)の純損失を計上した。ポッシュマークの登録ユーザー数は8000万人を超え、昨年のGMVは20億ドル(約3000億円)に達した。

ソチャ氏は、ポッシュマークが、米国において在庫を持たないというeコマースモデルの成功に基づいており、ネイバーによるポッシュマークの買収を称賛した。「彼らは在庫を持たないので、過剰在庫を抱える小売業者を買収しているわけではない」とソチャ氏は語った。「在庫の供給は消費者基盤に依存している。そのため、Amazonのような大手小売企業が優れた3PLマーケットプレイスを構築し、eコマースのプレゼンスを拡大していることを考えると、ポッシュマークは同じように米国で成功を収めている」。

取引完了後、ポッシュマークはネイバーの独立した米国子会社となり、CEOのマニッシュ・チャンドラ氏とポッシュマークの現在の経営陣が引き続き指揮を執る。

「これは、ポッシュマークが市場で持っている、強力で忠実な既存の顧客基盤を維持するための戦略的地位である」とソチャ氏は述べた。しかし同氏は、「それは潜在的な課題にもなり得る。ポッシュマークの顧客基盤を維持できなければ、在庫へのアクセスを失うことになる」と警告している。

結局のところ、この分野には多くの競争があり、ネイバーにとっては挑戦となる可能性がある。リーバイス(Levi’s)、ノースフェイス(The North Face)、パタゴニア(Patagonia)などの小売業者はここ数年、高いインフレに対処するためにデジタルショッピングを増やしている消費者への対応として、再販プログラムを導入しています。「また、従来の小売業者も、Amazonやポッシュマークのような体験を提供するために対応し、サービスを拡大している。この分野での競争は激化していると思う」とソチャ氏は述べた。

[原文:Unpacked: What to know about Poshmark’s new owner, South Korean search giant Naver]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳・編集:戸田美子)
Image via Poshmark

Source

タイトルとURLをコピーしました