映画「 バービー 」公開でフィーバー到来:マテル社の小売戦略が大当たり

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バービー(Barbie)はこの数年間ブームを巻き起こしているが、「バービーコア(Barbiecore)」のトレンドは今年、グレタ・ガーウィグ監督、マーゴット・ロビー主演の実写映画への期待から最高の盛り上がりを見せている。

そのため、この数カ月間で数十ものブランドが限定版のバービー商品をリリースしている。バービーブランドのコラボレーションの数について公式に発表されたものはないが、マテル(Mattel)社の公式発表によると、7月21日の映画公開に向けて、100を超えるブランドが参加している。

ファストファッションから、飲食物、百貨店まで、あらゆる小売企業がバービーのピンク色の流行に飛び乗っているようだ。ギャップ(Gap)、アルド(Aldo)、フォーエバー21(Forever 21)、プライマーク(Primark)、ホットトピック(Hot Topic)、スピリットハローウィン(Spirit Halloween)など、いくつものアパレル小売企業が、この新しい映画の公開にちなんだコレクションをリリースした。スタートアップ企業もこの流れに乗り、ベイズ(Béis)やミーアンディーズ(MeUndies)などのD2Cブランドは、バービーをテーマにした限定版のコレクションをリリースしている。一方で、飲料の新興企業のスウーン(Swoon)はバービーに合わせたピンク色のレモネードをターゲット(Target)の玩具エリアで販売した。

IPビジネスを強化してきたマテル社

バービーが業界を席巻しているのは驚くにあたらない。玩具会社であるマテル社は、この1年間にわたって自社のIP(知的財産)事業を強化してきたからだ。マテルはIPライセンス契約に投資した結果、昨年第2四半期に利益に転じ、売上は20%増加した。同社の主なライセンス・フランチャイズには、ホットウィール(Hot Wheels)やバービーがある。コラボレーションは通常、新興企業が新しい顧客にリーチする方法として、ブランド間でますます人気になっている。しかし、バービー人形が今年、ポップカルチャーで大きな脚光を浴びており、多くの新しいオーディエンスの目に触れる可能性があるため、ブランドはバービーとのタイアップに大きく期待しているのだ。

このようなコラボレーションのために時代の先端を行く商品をデザインするにあたり、企業はロゴの配置やパッケージ、マテルの総合的な表現などを考慮する必要があった。

マテルの最高フランチャイズ責任者および消費者向け商品のグローバル責任者を務めるジョッシュ・シルバーマン氏は、声明で次のように述べた。「『バービー』は、公開に向けて最近でもっとも評判が高まっている映画のひとつで、何カ月にもわたって話題を独占してきた」と、「マテルにとってのこの歴史的な瞬間は、当社のパートナーと消費者の両方に大きく取り上げられた。我々は映画の公開を待ちわびており、世界中のバービーファンがこのアイコニックな瞬間を祝うことができる、多くの新しい方法を用意している」。

バービー人形の「香り」を再現

ここ数カ月、バービーとのコラボレーションは切れ間なくドロップされてきたが、多くのブランドが次のステップとして、バービーをテーマにした商品で小売店舗を飾ろうとしている。たとえばブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)は7月13日、一部店舗で映画バービーのポップアップ店舗(Barbie The Movie Pop-up Shop)を開き、バービーをテーマにした商品としてスペルガ(Superga)のスニーカーやファンボーイ(Funboy)のプール用フロートなどを販売する。

参加する企業のひとつが、オーストラリアのホームフラグランスメーカーのグラスハウス(Glasshouse)だ。同社の創設者であるニコル・エッケルズ氏は、新商品のキャンドルであるバービー・ドリームハウス・ストロベリー・アンド・ドリームキャンドル(Barbie Dreamhouse Strawberry & Dream Candle)はブルーミングデールズとグラスハウスのウェブ限定商品であると米モダンリテールに語った。55ドル(約7920円)のこのキャンドルは、6月初旬のソフトローンチの段階においてブルーミングデールズで完売したため、6月下旬の正式ローンチのために商品在庫を空輸する必要があった。バービーをテーマにした商品への熱狂がどれほどのものかを示している。

「バービーはブームであるが、これは我々にとって新しいフラグランスへの挑戦だった」とエッケルズ氏は語った。グラスハウスは、バービーの箱を開ける瞬間を想起させるような「新しい人形の匂い」を再現しようと試みたと同氏は説明する。「これは、メーカーがパッケージに使用している実際の匂いだ」。グラスハウスはこの香りを再現するため、ラズベリー、フレッシュストロベリー、プラスチックの人形の香りを融合して調和させた。

このコンセプトが1年半前にバイヤーに持ち込まれたとき、百貨店はバービーをテーマにしたラグジュアリーキャンドルに乗り気ではなかったとエッケルズ氏は語った。「実際に商品を見せ、映画の前評判が広まりだすと、同社はこのキャンドルを取り扱うチャンスに飛びついた」と同氏は述べ、この数カ月間はマテルのマーケティング構想が正しいことを証明するものだったと付け加えた。「バービーフィーバーが起きていて、バービー人形の熱心なファンでなくても、みんなバービーに夢中になっている」。

美容品ブランドもこぞって参加

これらのコラボレーションは小売のあらゆる分野に及んでいるが、バービーが美容品分野に足がかりを得ていたことから、美容品ブランドは特に熱心に参加している。たとえば、ヘアケア企業のチー(Chi)は、ヘアトリートメントとホットツールの新しいコレクションを、アルタ(Ulta)の新しいバービーサロンのポップアップ店舗で販売する。ほかにも、スキンケア企業のトゥルーリィ(Truly)やヘアブラシメーカーのタングルティーザー(Tangle Teezer)は、アイコニックなバービー人形のブランド名を冠した商品を発売した。

チーの親企業であるファロークシステムズ(Farouk Systems)でマーケティング担当プレジデントを務めるリチャード・リーバス氏は、同社が過去4年間でバービーのコラボレーションを行うのは今回が4回目で、「我々はトレンドの先を行っていたことになる」と語る。以前のコレクションでは、旅行用スタイリングキットなど、同じ商品をバービーに着想を得た別のパターンや色で販売していた。

リーバス氏は、さまざまな髪質に対応した各種の商品について、「バービーは美容においてアイコニックな存在だが、現在は美の基準が大きく異なるため、当社はすべての消費者が使用できるツールを開発した」と言及した。「バービーの発売は、我々にとって非常によい結果をもたらしてくれている」と同氏は述べている。同氏は販売実績の数値を明かしていないが、商品が発売されるたびに売れる傾向にあるという。「このリリースにより、子供からバービーとともに成長した世代まで、幅広い層にリーチできる」。

チーとバービーの研究開発は主にチーの社内で行われているが、ライセンスされるバービーの色とロゴについては厳しい基準があるとリーバス氏は言う。「マテルは自社ブランドの表現方法について非常に細かいが、当社はそれを高く評価している」と同氏は述べた。

発売日にトラフィックが激増

6月初旬、キャンドルブランドのホームシック(Homesick)も、人気のあるドールハウスに着想を得たバービー・ドリームハウス・キャンドルの限定版をリリースした。同社のジェネラルマネージャーを務めるローレン・マッコード氏は、マテルが数年にわたって、ホームシックの親会社であるウインブランズ(Win Brands)と話を進めていたという。「しかし、映画の公開はコラボレーションをするのに完璧なタイミングでした」と同氏は説明した。ホームシックはこれまでにライセンスIPのパートナーシップを数多く結んでおり、最近では、トイ・ストーリー(Toy Story)やハリー・ポッター(Harry Potter)、スターウォーズ(Star Wars)などがある。

「課題は、ロゴの配置や、バービー・ピンクの正確な色、パッケージなど、すべてを締め切りに間に合うよう決定することだった」とマッコード氏は話した。キャンドルボックスは切り抜きとクリアパネルでバービードリームハウスを再現しようとしたものだが、これは特に難しく、最終決定まで何度も作り直す必要があったと同氏は付け加えた。

しかし、こうした努力が実を結び、明るいフローラルとシトラスの香りは、ホームシックのファンのあいだですでに人気を得ている。バービードリームハウスのキャンドルは、ホームシックの2023年最大のウェイトリスト登録数を記録し、発売日には同ブランドのウェブサイトのトラフィックは90%増加した。「これは、一般的にキャンドルの売上が落ち込む夏には大きな成果だ」とマッコード氏は語った。このキャンドルはアーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)やバーンズアンドノーブル(Barnes & Noble)でも告知されており、映画の公開直前に発売される予定だ。

小売業界の明るい材料

新規ブランドにとって、バービーとのタイアップは、オーディエンスの幅を広げ、この夏のさまざまなコラボレーションについての評判や取材の恩恵を受けるのに優れた方法だとマッコード氏は語る。「この波に参加し、ほかのさまざまなブランドの発売を見ることができるのは楽しい」と同氏は述べている。

グラスハウスのエッケルズ氏は、小売業界の情勢が思わしくないなか、この業界全体としての方針は明るい材料になったと語る。「マテルがこのブームにうまく乗っかったのは賢いやり方だったと思う。マーケティングの方針としては非常に優れたものだ」と同氏は述べている。

[原文:‘There’s Barbie fever and people are catching it’: How Barbie collaborations took over retail marketing]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Mattel/Swoon/Glasshouse/Truly/Homesick

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