Amazon へ徐々に歩み寄る D2C ブランドたち

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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D2Cブランドにとって、Amazonは嫌悪の対象から、プレイブックの不可欠な部分へと変化してきた。

これは、今週ニューオーリンズで開催された米モダンリテールのD2Cサミット(DTC Summit)でも明らかだった。このイベントでは、数十ものD2Cブランドの創設者が一堂に会し、最良の小売戦略について話し合った。そして対話の全体を通して、Amazonが言及され続けていた。

ほんの数年前、Amazonは特定の種類のデジタルブランドから、当のAmazonがその層を取り込もうと必死に努力していたにもかかわらず、避けるべきチャネルと見られていた。これにはいくつかの理由があった。まず、Amazonは各ブランドとめったに顧客データを共有しようとせず、一方で各D2Cブランドは、自分たちのファーストパーティデータ収集に自信を持っていたことだ。さらに、Amazonの購入環境は従来から混乱を極めており、各ブランドが人目を引き、自社のストーリーを確固とした形で語るのは難しかった。

しかし事情は変化しはじめている。各ブランドは、Amazonが持っている膨大なeコマースの能力を認めつつある。マーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)によれば、Amazonのマーケットプレイスは米国のeコマース全体の25%を占める。D2Cの新興企業は、アーリーアダプター以外の層にも販売を広げた際に、アメリカのオンライン買い物客を、それらの客がすでに買い物をしている場所で見つける必要があることを認識する。一方で、Amazonはブランド付きのランディングページを作成する機会を多く提供することで、これらのブランドの取り込みを図っている。

Amazon戦略を推し進める企業たち

たとえば、中国の調味料の新興企業であるフライバイジン(Fly By Jing)は、Amazonのチャネルマネージャーを雇用しようとしている。同社は1年と少し前からAmazonで販売を行っているが、これまで販売について十分に考慮してこなかった。それでも、Amazonは安定したチャネルだということは明らかで、同社の創設者でCEOを務めるジン・ガオ氏によれば、同社の売上の約15%を占めている。

「売上が継続的に得られ、非常にオーガニックなものだった」とガオ氏は述べている。

ガオ氏は現在、フライバイジンのAmazonでの戦略をさらに推し進めることを希望している。これは同ブランドが2020年に操業を開始し、自社ウェブサイトでのみ販売を行っていた頃からの転換だ。同ブランドをどのように提示するかについて、同氏がより細かいコンテロールを希望したのがその理由だ。現在、「当社はAmazonでさらに多くのストーリーテリングを行い、より多くのコンテンツを含めることをめざしている」と同氏は述べる。同氏は、新しいAmazonブランドマネージャーを使用して、同プラットフォームが提供するメディアサービスのすべてをテストし、活用することを計画している。

ガオ氏は次のように述べている。「当社は現在、Amazonでどのようなブランドとして存在するかの答を見つけようとしている」。

Amazonに出戻った企業の考え方

歯磨き粉ブランドのバイト(Bite)も同様に、はじめてAmazonに参入しようとしている。同ブランドは2年前に操業を開始し、ごく初期からAmazonをテストしてきたが、「シャークタンク(Shark Tank)」という番組で取り上げられたあとでバイラル化したとき、同プラットフォームから離れた。同社の創設者でCEOを務めるリンジー・マコーミック氏は「当時は、それだけのものを管理する能力がなかった」と述べている。

しかし現在、同氏はより堅牢なAmazon戦略を作りはじめており、今後2カ月から3カ月で開始したいと考えている。同社のウェブサイトは、顧客をサブスクリプションに誘導することに特化している。しかしマコーミック氏は、Amazonを顧客獲得の新しいチャネルと見なしている。「当社は、自社サイトで提供しないものだけをAmazonで提供する予定だ。それによって顧客を当社のウェブサイトに取り込むことに期待を寄せている」と同氏は述べている。

マコーミック氏は全体として、Amazonについての「創設者の認識が変化した」と述べている。「Amazonの自社ページを自社ウェブサイトとほとんど同じ外観にする方法があり、Amazonのページをカスタマイズし、ブランド化して、ストーリーテリングを行うことが可能だ」。

いまだ躊躇する企業も存在する

すべてのD2C創設者がAmazonを信用しているわけではない。215ドル(約2万8000円)のハイチェアなどのベビー用品を製造しているブランドのラロ(Lalo)は依然として、Amazonプラットフォームへの参入を計画していない。同社の共同創設者でCMOを務めるマイケル・ウィーダー氏は次のように述べている。「当社の商品は日用品ではない。当社は、売上の限界までの増大を求める段階に達していない」。

それでも、少なくとも創設者がAmazonプラットフォームについてどのように語っているかには変化が見られる。Amazonは依然として力のほとんどを握っているが、一部のブランドは自社ビジネスがそれらの制約内で運用可能かどうかを、少なくとも試してたしかめる必要があると感じている。

「Amazonに出品していなければ、またはAmazonを活用していなければ、大きな機会を逃すことになる」とガオ氏は述べている。

[原文:Amazon Briefing: DTC brands are slowly warming up to Amazon]

Cale Guthrie Weissman(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)

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