ハイブリッド勤務時代、コミュニケーションはどうあるべき? :古い習慣を改めるとき

DIGIDAY

マネジメントスタイルのパラダイムシフトが必要であることは、どう見ても明らかだ。

今後の主流は、出社とリモートワーク組み合わせたハイブリッドなスタイルになることが予想される。それに伴いリーダーたちは、自分のコミュニケーション方法を時代に適応させ、従業員の連帯感、意欲、生産性を維持することを求められるようになるだろう。

現在、従業員たちの多くはパンデミックに疲れ、先行きを見失い、なかには仕事との向き合い方を見直している者もいる。リーダーたちは日々の経営に加え、このような人々と折り合いをつけ、バランスを図ることを余儀なくされている。うまく舵取りを行うには、職場に人間味をもたらすソフトスキルが求められる。

このような新しい環境をうまく乗り切り、生産性の高い幸せなチームを率いるためには、どのようなコミュニケーションスキルが必要なのか。学界や業界の専門家に話を訊いた。

新たなプレイブックの作成

リーダーシップを専門とするハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School)のエイミー・エドモンドソン氏は、リモートワークとハイブリッドな働き方、さらにはパートタイムとフルタイムも混在する次世代の働き方でもっとも成功するためには「プレイブックを一緒に作成する」チームが必要だ、と話す。エドモンドソン氏は「リモートワークでは、人と人との本物のつながりを育み、従業員が自分の考えを自由に表明できる心理的安全性の高い環境を築くことが難しくなる。懸念や疑問を、場合によっては職務を果たすために極めて重要であるにもかかわらず、人間関係に関する不安をいわずにいるという状況は避けるべきだ」と語った。

職場でのコミュニケーション向上は、古い習慣を改めるところからはじまる。これからの時代は、慣習的な指揮統制型のリーダーシップのみに目を向けるのではなく、従業員へのポジティブなフィードバックや、彼らの学習意欲の評価、そして透明性といった新たな要素を受け入れる時代だ。これから求められる文化は「共有」に重点を置くものであり、懸念、データ、手法、成功事例などの共有や他者の観点を積極的に取り入れることを奨励する。エドモンドソン氏によれば、これらを実現するには、科学的かつアート的な視点が重要なのだという。

また、古い習慣から脱却するには、職場において新しいコミュニケーションのかたちも必要になる。エドモンドソン氏は「科学的な言語手法」と呼べるようなものを説明してくれた。これは、既存のコミュニケーション習慣に科学的な手法を取り込んだもので、「私は現在の状況をこうだと思う。ここで試してみることのできる仮説や実験はこれである。今後入ってくるデータやほかの人たちのアイデアに対してオープンな姿勢を保とう」という文化の醸成につながる。

エドモンドソン氏は「これは旧来のマネジメントのアプローチとは大きく異なる」と付け加えた。

ハードな世界におけるソフトなタッチ

パンデミックの影響で、フリーランス市場では仕事の機会が急増した。企業は、競争の激しい市場でアジャイル戦略を推進する必要に迫られ、その答えとしてギグエコノミーに注目し、固定費を最小限に抑えようとしたのだ。

職場でアウトソースが増えると、一緒に仕事をする人たちがどのような人たちで、どのような考え方を持っているのかについて、全般的に把握していることが求められる。現在、ピッツバーグ大学の言語学博士課程の所属するアレクサス・ブラウン氏は、「人々は、さまざまな種類の言葉を話す人たちと出会うことになる。アクセントや話し方が違うこともあれば、そもそも別の言語を話す場合もある。そうした人たちとうまく調和してやっていかなければならなくなる」といい、「本当に優れたコミュニケーターはストレス要因を減らし、人間的要素、つまり相手への敬意をコミュニケーションに盛り込むことで、『あなたは組織の単なる歯車のひとつではなく、チームに不可欠な一員である』と感じさせることができる」と話す。

では、リーダーたちはこうしたスキルをいかに獲得すれば良いのか。重要なのは、時間を取ってコミュニケーションに集中することだという。ブラウンはさらに、社会言語学的なスタイル(特定の環境下で人々とどのように会話し、交流する傾向があるか)は、人が職場でどのようなつながりを感じることができるかに影響し、仕事の裏表を学ぶ意欲だけでなく、文化全体の中で自分がどのような存在であるかにも影響すると説明している。

技術的な問題

現代の職場はベビーブーマーからZ世代まで4つの世代で構成され、それぞれがデジタルなコミュニケーションについて、異なる習慣や常識を持っている。たとえば、各年齢層でSlackでメッセージを書くときの口調やスタイルはeメールの場合とは異なる。そのため人々はときに、それぞれの手段を活用する際、どのように振る舞うのが適切なのかという疑問にぶつかることになる。

そんななか、ハイブリッドな働き方とリモートワークによって、Slackに加え、Zoom、Teamsといったコミュニケーションツールの使用が増えた。これにより、コミュニケーションに関する規範はさらに多様化しているという。ピッツバーグ大学言語学部の学部長であるスコット・キースリング博士は「こうしたツールは、スタンスやスタイルを解析するための、いわばフレーミングデバイスだ」と述べている。「異なるモードには異なる社会的意味がある。人々はこうしたツールの活用を通じて、伝えたいメッセージを相手に届けるには、どうした良いかを理解することができる」。

スタンスとスタイルは、社会的相互作用の質を決定する重要な言語的要素である。スタンスとは、その人の態度や相手との関係を表すもので、話している内容や使っている言葉も含まれる。たとえば、自分のスタンスをどのように表現するかは、インスタントメッセージよりも、ボディランゲージや声のトーンが把握できる点から、対面やビデオチャットの方が適しているかもしれない。

[原文:Breaking old habits: Hybrid-working setups call for different ways of communicating

NICKLAS BALBOA(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)

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