逆境が続く 百貨店 、顧客を呼び戻すための3施策:ノードストローム、メイシーズ、コールズの第1四半期決算

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百貨店にとって、厳しい時期が続いている。

百貨店は家具、電子機器、ゲーム、玩具など、自由裁量とみなされている多くのカテゴリーを販売しているが、消費者が食料品や移動など必需品にお金を回すようになったため、何カ月にもわたって厳しい状況に陥っている。

政府のデータによると、米国における百貨店の調整後売上額は、2月は117億2300万ドル(約1兆6300億円)、3月は115億2900万ドル(約1兆6000億円)、そして4月には113億9800万ドル(約1兆5800億円)へと減少した。百貨店事業の大きな部分を占めるアパレルも打撃を受け、衣料店の売上は3月から4月にかけて下落した。

現在、ノードストローム(Nordstrom)、メイシーズ(Macy’s)、コールズ(Kohl’s)などの店舗は、買い物客が予算を厳しく絞るなかで、事業のどの部分を強調すべきかについて工夫を迫られている。これら3社はすべて、5月下旬から6月初旬にかけて、第1四半期の財務結果を報告しており、いずれも別々の課題に直面している。たとえばコールズはリーダーシップの入れ替えの最中で、ノードストロームはカナダでの事業を縮小しつつある。しかし3社とも、顧客を呼び戻すための方法を重視している。たとえばそれは、価値への注力、プロモーションの強化、小売店とのパートナーシップ締結などである。

各社の取り組みと収益の状況を以下で解説する。

オフプライスブランドに頼る

ノードストロームが5月31日に発表した決算結果は期待を上回っていたが、同社の第1四半期の純売上は前年同期比11.6%減だった。これは、カナダの事業縮小を決定したためだ。同社は、その過程で3億900万ドル(約430億ドル)の税引き前費用が発生したと推定している。eコマース事業も落ち込んだが、それは、2014年に買収したパーソナルスタイリングサービスのトランククラブ(Trunk Club)の終了によるものだ。その一方で、経営幹部は、在庫管理やコスト削減を進めたことを強調し、今年度の残りについては楽観していると語った。

ノードストロームのオフプライスブランドであるノードストロームラック(Nordstrom Rack)は、特に同社の業績を押し上げている。ノードストロームラックの純売上は前年同期に比べて11.9%落ち込んだものの、ノードストロームラックは事業において「新規顧客の最大の獲得源」であると、CEOのエリック・ノードストローム氏は決算発表で述べ、今年中には13店舗のノードストロームラックを新たに開設する計画だ。4月は同社にとって「四半期中の最良の月」であり、この事業のトレンドが「5月も上向き続けている」と述べている。

メイシーズもノードストロームと同様、オフプライスブランドであるメイシーズバックステージ(Macy’s Backstage)の恩恵を受けてきた。メイシーズバックステージの店舗は「シーズンレス商品と強力な価値提案をより重視することで利益を得てきた」と、メイシーズの退任が決まっているCEOのジェフリー・ジェネット氏は決算発表で語った。同社は今春、米国で新たに10店舗のバックステージの店舗内ストアを開設する計画を5月に発表した。よりコスト意識の高い高級志向の顧客にアピールするブルーミングデールズアウトレット(Bloomingdale’s Outlet)も、「良い業績が続いている」と、ジェネット氏は述べている。

オフプライス依存のリスク

しかし、コマースコンサルタンシーのコンフルエンスコマース(Confluence Commerce)の創業者であるブライアン・ギルデンバーグ氏は、オフプライスブランドが「小売業者にとって諸刃の剣」になる可能性があると警告する。

「ノードストロームラックのような事業は、アパレルの観点から見て、1年前に比べて積極的にアパレルを買わなくなったい特定の層の買い物客に強く依存している」と、同氏は述べる。

カンター(Kantar)の小売インサイト担当ディレクターを務めるティファニー・ホーガン氏も、ノードストロームやメイシーズが「すべての労力をオフプライスブランドに注ぎ込む」ことはしないほうがいいと同意している。

「買い物客がこれらのカテゴリーで資金を多少節約すると思われるため、今後数年間、オフプライスブランドは短期的には助けになるだろう」と、同氏は米モダンリテールに語った。「しかし長期的には、非常に競合の激しい市場だ。TJマックス(TJ Maxx)のような非常に強い実績がある業者と競合することになる」。

「ノードストロームラックを『ノードストロームラック』たらしめているのは、ノードストロームが存在するという事実だ」と、同氏は付け加えた。「これらのブランドを生かし続け、時代とともに進化し続けるようにすることが、オフプライスとフルラインの両方で真に成功するためには、もっとも重要になるだろう」。

プロモーションの増加

全体として、メイシーズは決算の予測値を上回ったが、同社の財務概要はアナリストが期待していたものより厳しいものだった。同社は通期の業績予想を下方修正し、売上は3月に弱まり、4月にはさらに弱まったと語った。同社は現在、以前に237億〜242億ドル(約3兆2900億〜3兆3600億円)と予測していた通期売上を、228億〜232億ドル(約3兆1700億〜約3兆2200億円)からに引き下げた。

ほかの百貨店と同様、メイシーズも商品に関して顧客の「転向」を実感している。ジェネット氏は「米国の消費者は、食料品、必需品、サービスに支出を振り向け、特にメイシーズでは予測よりさらに支出を絞った」と認めた。

同社の第2四半期の戦略において、プロモーションは大きな役割を果たすだろう。この期間について「当社は季節性商品を現金化するため、プロモーションイベント、マークダウン、クリアランスのタイミングを早め、深さを促進した」と、ジェネット氏は述べている。2024年にジェネット氏に代わってCEOとなる現社長のトニー・スプリング氏は、同社がパーソナライズされた商品提供も重視しており、第1四半期にこの分野のテストを行ってきたと、語った。

このような経費削減によって、メイシーズは、強く求められている業績改善を達成できるかもしれない。ジェネット氏によると、同社はこれまで中低所得者層を対象とした自社と同じ名前のブランドで、過去最大の落ち込みを見せている。ギルデンバーグ氏は、労働者家族向けのSNAP(補充的栄養支援プログラム)給付金が3月にCovid以前の水準に戻ったことで、これらの買い物客が自由に使える資金が減少したことも指摘している。

モールの稼働率が下降傾向に

メイシーズはモールの課題にも取り組んでいる。「メイシーズは、3社の中でも特にモールと強く結びついていると思う」と、ギルデンバーグ氏は説明する。「モールの稼働率は史上最低水準にある。モールの賃貸料は再び上昇傾向にある」。こうした背景から、メイシーズはモール外への展開に一層注力しはじめ、2024年にはこの取り組みを加速させることを検討している。

また同氏は、「モールに出店しているブランドは、これまで百貨店を通して消費者に知られていたような種類のブランドだ。そのため本質的に、買い物客にブランドを提供するキュレーターとしての百貨店はいま、従来にも増して明確にモールと競合するようになっている。しかも、百貨店は負けつつある」とも指摘している。

店舗内ストアと必需品の採用

コールズは純売上が前年同期比で3.3%減少したが、アナリストの予測を上回り、通期の見通しを再確認した。同社の新CEOであるトム・キングスベリー氏は決算発表で、店舗へのトラフィックが増加し、取引単価が上昇したことを明かした。

同社でもっとも利益を上げているチャネルはセフォラ(Sephora)ショップで、キングスベリー氏はこのショップが「期待を上回る実績」で、1年前から売上が150%も急増したと語る。同社は2023年末までに900店舗以上のコールズにセフォラを置くことで、この販売網を拡大しようとしている。

商品面では、ギフト、装飾品、ペット用品、アウトドア用品など、「十分に取り上げられてこなかった」カテゴリーを拡大していくと、同氏は付け加えた。今後数カ月のうちに、店舗の前面に展示するギフト用品を増やしていく。

同社には、メイシーズやノードストロームと比べてほかにも利点があると、ギルデンバーグ氏は指摘する。「コールズは下着などの絶対的な必需品が非常に強い」と同氏は述べている。「このカテゴリーは、ほかのカテゴリーと比べても経済状況の影響を受けることが大幅に少ない。すなわち、コールズの業績がメイシーズを上回ったなら、必需品が自由裁量の商品を上回ったということだ」。

主力事業への集中

年末に向けて消費パターンが変化するにつれ、百貨店はさらに調整を行う必要に迫られるだろう。最終的に、消費者が百貨店に戻ってくるかどうかは「今のところ、まだ明らかでない」と、ホーガン氏は述べる。同氏は、百貨店の最善の策は、すでにうまくいっているものに集中することだという。

また、同氏は次のように説明する。「この半年ほどで見えてきたことだが、人々は必ずしもこれらの分野で安いものに買い替えているわけではない。単に新しいものに買い替えるだけだ。特に、アパレルやほかの自由裁量のカテゴリーにおいて考え方が多少変化したと思う。そのため私は、主力事業に特化することが、これらすべての小売業者にとっての最善の長期戦略だと考えている」。

[原文:How troubled department stores are trying to get shoppers back]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Nordstrom

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