プライマーク、BOPIS開始後数時間でサイトがクラッシュ:従来型小売によるデジタル化の落とし穴

DIGIDAY

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英国を拠点とするファストファッション小売のプライマーク(Primark)は、eコマース参入に向けた新しい試みとして、「オンラインで購入し、店舗で受け取り(BOPIS)」を導入した。

しかし、ロイターが報じたようにこのプログラムの運用は長く続かず、11月14日にこの機能を発表してからわずか数時間後、プライマークのウェブサイトはクラッシュした。同社によれば、この機能が利用可能となっていたのはイングランドとウェールズの25店舗のみで、ほかの市場に先駆けてこのサービスをテストしている。また、この運用に含まれていたのは子供向けの商品のみだった。

開始数時間にクラッシュ

しかし、このような小規模のパイロットテストでも、実店舗中心の従来型の小売業者には大事であると証明されることになった。プライマークにとって、クリック&コレクトはずっと待ち望まれていたものだった。同社は、コロナウイルスが猛威を振るっていた頃でも、eコマースへの本格的な参入には慎重な姿勢を見せていた。昨年同社はついに、オペレーションをデジタル化する高度なプランを発表し、それには今回発表されたBOPISのオプションや、商品のサイズや数量など店舗の在庫に関する情報を得られるなど、今後搭載される機能も含まれていた。最初にリリースされた機能はBOPISのパイロットで、ほかの機能はまだ提供されていない。同社は依然としてオンラインショッピングを提供しておらず、近いうちに開始する予定もないとしている。同社は「オンラインで購入し、店舗で受け取り」の運用開始によって、eコマースの縮小版を提供したい考えだ。

ソーシャルメディア上のeコマース専門家のなかには、この運用開始の失敗がプライマークの新機能の話題作りに役立っているとまで推測している人もいれば、このデジタルプログラムのクラッシュが、この機能が顧客のあいだですでに人気があることを示していると指摘する人もいる

一方で、プライマークはこの技術的な失敗を平静に受け止めている。

同社のスポークスパーソンは、ウェブサイト機能の障害に関する声明で、「当社の新しいクリック&コレクトのテスト開始に多くの関心を寄せていただいたことに感謝している」と語っている。続けて、「今朝、一部の方たちがウェブサイトにアクセスするのに問題を抱えたことを認識しており、この問題に対処し、誰もが簡単にサイトにアクセスして閲覧できるよう、努力を続けている」と述べている。

BOPIS開始の翌日である15日朝の時点で、プライマークの何人かのオンライン顧客は、同社のウェブサイトが依然としてほとどんど利用不能であると、ソーシャルメディアに投稿した

ヘッドレスコマースプラットフォームのリマーカブルコマース(Remarkable Commerce)で商品責任者を務めるブラッド・ハウルズワース氏は、このウェブサイトのクラッシュは、同社が訪問者からのトラフィックの殺到に対して適切な準備をしていなかったことを示していると語る。「残念ながら、このテクノロジーは実際に発生した量のトラフィックに合わせて正しく構成されておらず、トラフィックの増加によってサイトの動作が遅くなり、最終的には停止してエラーを引き起こした」と、同氏は説明している。

同氏は、H&M(エイチ・アンド・エム)やザラ(Zara)などの競合他社に比べ、技術インフラがはるかに遅れているプライマークにとって、この事故はプログラムの改善を続ける好機だと付け加えている。「eコマースプラットフォームや技術スタックにおいて、ソリューションのストレステストを行い、継続的に効率改善を進め、停止の心配なしに成長できるようにしていくことが絶対不可欠だ」と、同氏は述べている。

eコマースへの投資に二の足を踏むファストファッション勢

プライマークの最大の競合他社も含め、ファストファッションブランドにとって、eコマースは全般的に高価なチャネルであることが証明されてきた。ザラは過去5年間、オンラインと実店舗のチャネルを統合するための方法として、店舗内の利活用や商品引き取りなどのオムニチャネル機能を次第に追加してきた。この戦略は2011年に、同社のオンライン配送機能を導入したことにはじまったもので、スペインの小売業者である同社のパンデミック最中の競争を支えた。一方で、スウェーデンの小売業者であり、2013年に米国のオンライン店舗を開設したH&Mは、依然として地元の買い物客向けにBOPISを提供していない。

プライマークは現在、今後再び店舗へのトラフィックが悪化した場合でも、利幅が痛むことを避けるためにデジタルへの投資を行っている。

プライマークの収益報告書によれば、同社がクリック&コレクトも含めて、いかなる形のeコマースも保有していなかったことは、2020年と2021年に大きな影響を同社に及ぼした。多くの顧客は依然として店舗で買い物をする一方で、同社の営業利益は2021年に3億2100万ポンド(約521億円)に落ち込んだ。今年、プライマークは、利益を7億5600万ポンド(約1260億円)に倍増させ、立ち直ることができた。

ハウルズワース氏は、プライマークの膨大な数の在庫を考えれば、今回の試みは、デジタルフルフィルメントの導入に二の足を踏んでいるほかの小売業者の注目を浴びるだろうと語る。これにはTJマックス(TJ Maxx)やマーシャルズ(Marshalls)の親会社であるティージェーエックス(TJX)、競合のロスストアズ(Ross Stores)やバーリントン(Burlington)など、多くのオフプライス小売業者が含まれる。

同氏は次のように述べている。「多くのブランドが、プライマークの試みの結果がどうなるか、また、この機能をすべての店舗に恒久的に追加するかに大きな関心を寄せているだろう。同社がこの機能を継続的に改善し続ければ、選択的なeコマースへの投資は価値があるということが証明されるかもしれない」。

[原文:Primark’s BOPIS rollout highlights the pitfalls of traditional retailers going digital/a>]

GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Primark

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