話題だった SNSアプリ 、ビーリアルは失敗の時期にいるのか?

DIGIDAY

近頃、ビーリアル(BeReal)のフィードが少し寂しく見えることに気づいたなら、それはあなただけではない。

2022年に強い勢いがあったこのアンチフィルターアプリだが、最近のサードパーティのデータをみると、ダウンロード数の伸びが落ちている。昨年後半の始め頃から美容ブランドがこのアプリに殺到したものの、現在その活動はおそらく鈍化している。だが、ブランドはまだ見放してはいない。

ビーリアルはZ世代のあいだで「まだレレバンスがあるが、急速に減少している」と指摘したのは、デジタルマーケティングエージェンシーのテイラー&ポンド(Taylor & Pond)で顧客戦略およびサービス部門のバイスプレジデントを務めるカテリン・ウィンカー氏だ。「大学生の多くはまだ使っているが、数カ月前ほどではない。最初に登場したときはもっと人気があったが、人々は(使用を)やめるようになっている。無意味だと感じているからだ」。

ダウンロード数は減少しても、DAUは持ちこたえている

どの日を見ても、このアプリ上での美容ブランドの活動は、昨年にくらべてかなり限られている。追跡した20の美容ブランドの抽出サンプルのうち、2月14日にはトゥーフェイスド(Too Faced)のバレンタインデーの写真のたった1件の投稿しかなかった。同ブランドは、2月15日にほかの3ブランド、インビューティ(Innbeauty)、ピースアウトスキンケア(Peace Out Skincare)、アルペンビューティ(Alpyn Beauty)と並んで、再び投稿している。E.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)やレア・ビューティ(Rare Beauty)など、もっとも熱心だったアーリーアダプターの投稿はない。

「ビーリアルについては、反応やコメントといった意味で、私たちのブランドはプラットフォーム全体で2桁の成長を遂げてきたが、ほかのブランドの投稿数が減少しているのには確かに気づいている」と語ったのは、シアテ・ロンドン(Ciaté London)、ロッティ・ロンドン(Lottie London)、スキンプラウド(Skin Proud)、そして新しくローンチしたブランドのヘアプラウド(Hair Proud)でソーシャルを統括するリンドン・ロバートソン氏だ。

ビーリアルはメディアからの問い合わせには回答しなかったが、いくつかのサードパーティデータが成長数の衰えを示している。ベンチャーキャピタル投資家のサシャ・カレツキー氏によるバイラルツイートでは、センサータワー(Sensor Tower)のグラフが示されており、このアプリの2022年のピーク時から米国での週間ダウンロード数はおよそ95%減少している。data.aiによる2月15日時点でのアプリダウンロードのランキングでは、ビーリアルはソーシャルプラットフォームの8位にランクインしている。全アプリでの順位は、2月4日から8日にかけて64位から109位へとダウンした。だがセンサータワーのデータでは、デイリーアクティブユーザー(DAU)数は、カレツキー氏いわく「よく持ちこたえている」。

このアプリのユーザー数に関するインサイトもTwitterでは大きな話題となっているが、その全体像ははっきりしない。別のベンチャーキャピタル投資家による、月間アクティブユーザー(MAU)とDAUに関するサードパーティデータを混同した誤ったツイートがバイラルになり、本人が訂正するまでに50万ビュー以上閲覧された。アプトピア(Apptopia)の推定では、2022年10月のビーリアルのDAUは2000万人だったと主張している。そして、まだ月が終わっていないため、予測に基づいた場合、その数は2023年2月には1040万人にまで減少するとされている。11月から1月のDAUのデータは記載されていない。

エンゲージメントの数字は必ずしも重要ではない

いくつかの美容ブランドは、エンゲージメントが限定的である点は認めているものの、ビーリアルを続けることを選択している。

「私たちのブランドはビーリアルを使い始めたばかりで、このアプリのすべてを学ぶのを非常に楽しみにしている」と、ピースアウトスキンケアのCMO、ジュニア・ペンス氏は言う。同ブランドはビーリアルに週に2度投稿している。「エンゲージメントのトラッキングをまだ始めたばかりの段階だ。それに関しては、アプリの背後に『アンチ・ソーシャルメディア』という意図があるため、このアプリが限定的であるのに気づいている」。

「平均して、ひとつの投稿につき2〜3件のコメントか反応があり、ビーリアルでは約100人のフォロワーの小さなファンベースを構築している。ブランド視点から見たこのアプリの大きな欠点は、ビーリアルを見せるためにアカウントに500人までしか追加できないことだ」と述べたのは、ヘアケアブランドのノットユアマザーズ(Not Your Mother’s)のソーシャルメディアスペシャリスト、ブリアナ・バジェク氏だ。同ブランドは週に2〜3度投稿しており、ビーリアルによってより多くのフォロワー数を獲得したいと考えている。

メイクアップブランドのトゥーフェイスドでグローバルマーケティング・シニアバイスプレジデントを務めるソマー・テジワニ氏は「定期的にビーリアルを使用しており、エンゲージメントが増加している」と話す。「現時点では、このプラットフォームでコンテンツを作成しているブランドにとって、将来どうなるのかを予測するのは時期尚早だが、ビーリアルはコストも低く、時間のコミットメントも最小限に抑えられるので、ファンに内幕をこっそり見せたいと考えているブランドにはすばらしい選択肢だ」。

だが、エンゲージメントの数字は必ずしも重要ではない、と述べたのは、K18の消費者エンゲージメント責任者マラム・アウディ氏だ。「ビーリアルは指標に基づくプラットフォームではない。TikTokのように、何十億ものビュー数を獲得し続けるのを目標とするプラットフォームとは焦点が異なる。このプラットフォームでの成功の尺度は、興奮させることだ。これは測定が難しいが、ほかのチャネルでアカウントを宣伝し、フォロワーを増やしている。ユニークなコンテンツの瞬間を作り出し、インスタグラムやTikTokで見られるものとは違う何かにコミュニティがアクセスできるよう目指している」。

ほかのプラットフォームとは異なるツボを突いたサービス

ビーリアルの新たな話題性やファーストムーバーであるブランドがこのアプリを採用したことで、美容にFOMO(チャンスを逃すことへの不安)効果が生じた。TikTokでの大成功に続き、新たなプラットフォームのアーリーアダプターになることにマーケティング戦略を賭けているE.l.f.ビューティのおかげで、2022年8月にビーリアルにはブランドが次々と集まってきた。同じ月に参加したK18とインビューティとともに、E.l.f.ビューティは同アプリにローンチした最初の美容ブランドのひとつである。

「ビーリアルに参入したら、その2日後には15ブランドが追随した」とE.l.f.ビューティのCMO、コリー・マルキソット氏は言う。

その後、数週間から数カ月のうちに後に続いたブランドには、キールズ(Kiehl’s)、セラヴィ(CeraVe)、トゥーフェイスド(Too Faced)、アーバンディケイ(Urban Decay)といった大手コングロマリットが所有するブランドや、グロウレシピ(Glow Recipe)やセレーナ・ゴメス氏のレア・ビューティといったセフォラ独占の大手ブランドなどがある。

テジワニ氏によると、トゥーフェイスドの「ソーシャルにおけるファーストムーバーであるという経歴」も、このアプリを採用するきっかけとなった。

E.l.f.のビーリアルの設定を手助けしたクリエイティブエージェンシー、ムーバーズ&シェイカーズ(Movers + Shakers)の共同創業者エヴァン・ホロウィッツ氏は、いまも「ビーリアルの将来について強気」だという。「最初の成長曲線は緩やかになったものの、我々のソーシャルリスニングでは、大きな消費者セグメントがビーリアルを非常に活発に使い続けていることが示されている。他のソーシャル・プラットフォームとはかなり異なる、ツボを突いたサービスなのだ」。同ブランドは、スーパーボウルの広告キャンペーンでこのプラットフォームに投稿している。

他のアプリもデュアルカメラの競合機能を開始

ビーリアルでの最初の美容ブランドのひとつ、インビューティの共同創業者アリサ・メッツガー氏は、いまもこのアプリに投稿しているのは、「同ブランドでは、コミュニティが時間を費やしている新興プラットフォームや新しいソーシャルメディアのフォーマットを最優先している」ためだと語った。とはいえ最近では、投稿スケジュールが以前よりも散発的になっている。

「このアプリの限られたフォロワー構成と自発的なタイミングは、ユーザーは気に入っているようだが、ブランドとしては、インスタグラムやTikTokで行うのと同じやり方で、ビーリアルのための一貫したコンテンツプランの構築は優先しないという意味になる」。

また、ブランドはここ数カ月でTikTokやインスタグラム、Snapchatに誕生したビーリアルの競合機能の実験を始めている。

ロバートソン氏いわく、彼女の会社のブランドは、舞台裏のコンテンツを提供するため、デュアルカメラの「TikTok Now」機能の使用を開始している。一部のマーケターによると、このデュアルカメラ形式は、ブランドにとってビーリアルよりも多くの可能性があるかもしれない。

ビーリアルを推奨するのは余力があるブランドに限る

ビーリアルが「ディスカバリープラットフォームを試して収益化しようとする」ことを期待するロバートソン氏は、「デュアルカメラは、すべてのソーシャルプラットフォームで目立つコンテンツスタイルになるだろう」と予測している。

「ブランドがこのアプリの使用を推進せず、ソーシャル戦略に組み込んでいない理由の大部分は、インスタグラムやTikTok、Facebook、Snapchatにはみられる収益化の機会が欠如しているためだと推察できる」と、ウィンカー氏は述べた。

小規模なソーシャルチームを抱えるブランドは、限られたリソースを投資対効果がより実証されているアプリに割いた方がよいかもしれないと、専門家は考えている。「多くのソーシャルプラットフォームにまたがってうまくエンゲージメントする余力があるブランドには、ビーリアルを推奨する」とホロウィッツ氏は言う。「とは言え、我々は常に量より質を重視しており、ビーリアルのリーチはもともと制限されている。したがって、TikTokとインスタグラムでの勝負が一流でないと感じるなら、そちらにエネルギーを集中し、新しく光って見えるものに気を取られないようにしたほうがいい。主要なプラットフォームで勝つよりもFOMOに気を取られてしまうのは、よくあることだ」。

[原文:Is BeReal in its flop era?]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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