現実の洋服を「コスチューム」化、 ロブロックス の新機能が実現するもの:「バーチャルワールドの現実らしさを高める」

DIGIDAY

デジタルファッションは長いあいだ、ロブロックス(Roblox)のバーチャルエコノミーの基盤になってきたが。

そして、同プラットフォームの新機能「レイヤード・クロージング(Layered Clothing)」を使えば、ユーザーは実際の服に近い外観と機能を持つ服をデザインすることができる。この最先端の機能により、ブランドは、自社製品をロブロックスの世界に持ち込む新たな機会を得られる。

開発に2年を要したレイヤード・クロージングでは、ロブロックスに登場するさまざまなキャラクターモデル(基本的に3〜4頭身にデフォルメされている)に合わせて衣類を伸縮させることができる。ロブロックスのデザイナーであるミミ・デブ氏(ロブロックスユーザーに個人情報が漏れる懸念から仮名を希望)は次のように説明する。

「我々にはテンプレートがあり、そのテンプレートにはインナー/アウター・ケージと呼ばれるものが付属している。基本的に、このケージは人型をしていて、その上に服を作っていく。なので、我々の服がすべてそのキャラクターに合うように作られている限り、ロブロックスの他のすべてのキャラクターにも合うようになっている」。

一部のブランドはすでに注目

これまでのところ、レイヤード・クロージングは、ロブロックスユーザーのあいだで好評を得ている。

「レイヤード・クロージングはまだ新しい技術だが、いまのところ非常に好評で、リリースから1週間で数万枚を売り上げた」とロブロックスのクリエイターであるアーサー・トゥルソブ氏は話す。同氏はバーチャル・クロージングの販売で100万ドル以上を稼ぎ、ソニック・ザ・ヘッジホッグ(Sonic the Hedgehog)などの人気IPと協力してプラットフォーム内のアセットを開発した経験がある。

トゥルソブ氏は、「レイヤード・クロージングの存在をブランドにもっと認識してもらう必要はあるが、彼らは間違いなくそれを利用するだろうと思っている」と述べる。ロブロックスのゲーム内販売による売上は、通常、クリエイターとプラットフォームで分配することになっているという。

一部のブランドはすでに注目している。仮想環境内でフォーエバー21(Forever 21)などのブランドに権利をライセンス供与しているバーチャル・ブランド・グループ(Virtual Brand Group:以下、VBG)は、ロブロックスの開発者フォーラムでレイヤード・クロージングの開発を発見すると、同社(とゲーム内クリエイターたち)は、この機能が公開された瞬間にフォーエバー21ブランドの服をデザインして販売することにした。この作戦は成功した。VBGの最高経営責任者(CEO)、ジャスティン・ホックバーグ氏は、「これらの服の一部は、ロブロックスで最も売れているアイテムだ」と述べる。

バーチャル・ファーストのファッションブランドも、レイヤード・クロージングの展開をロブロックスへの入り口として利用している。デジタルファッションブランドのドレスX(DressX)は、この新機能の公開と同時に、12 種類のロブロックス衣類の最初のラインを発表し、50~200ROBUX(ロブロックスのゲーム内通貨。米ドルで約50セント~2ドル)で販売するこのアイテムを、すでに2万6000着販売している。

ドレスXの創設者ダリア・シャポバロワ氏はこう話す。「当初ドレスX用に開発したものを、ロブロックスに持ち込んだ。今後はロブロックス専用アイテムも計画中だ」

目的は「いかにリアルに見せるか」

レイヤード・クロージング機能は2021年10月21日からベータ版テストが行われ、2022年4月4日に正式に公開された。レイヤード・クロージングの登場以前は、ロブロックスでユーザーがアバターに着けられるアイテムは、帽子やスカーフなどのアクセサリーのみで、ロブロックスのほかの服はアバターの表面の色や質感を変えるだけのスキンのようなものだった。

現在、ロブロックスで最も売れている服は、現実のスタイルにマッチしたもので、シンプルな黒のアイテム、ジーンズとクロップトップ(短い丈のシャツ)、猫の絵が描かれたTシャツなどだという。VBGの黒いビーニー(ニット帽)はあまりの人気ぶりに、フォーエバー21が実店舗で販売するために実際に製品を製造する計画を立てたほどだ。

クリエイター側の観測筋もブランド側の観測筋も、レイヤード・クロージングがもたらす自由な創造性が、やがて映画『レディ・プレイヤー1(Ready Player One)』のように、ロブロックスのメタバースな側面を生かした、物理法則を無視したバーチャルな服にユーザーが親しむきっかけになると考えている。

「プレイヤーたちは、奇抜なものか普通のものを好むようで、その中間を好まないようだ」と、同じくロブロックスのクリエイターあるコーヒーナード氏(仮名)はいう。「彼らは、本当に突飛なことをしたいのか、学校や職場で着るような服装をしたいのか、そのどちらかだ」

こうした新ファッションは実に興味をそそるものだが、ロブロックスをはじめとするバーチャルプラットフォームにおけるファッションブランドは、物理世界で製造しているものと同じものを作ることで、メタバースに足を踏み入れたに過ぎない。レイヤード・クロージングのような機能の目的は、ロブロックスの仮想世界の真実らしさを高めること、つまりいかにリアルに見せるかであり、現実の服と同じデザインを作ることはファッションブランドにとって、成功する戦略であると同時に、効果も低いともいえる。

同じ機能がほかのプラットフォームに波及するか?

ブランドの関与が強くなれば、その資金を欲しがるメタバースプラットフォームが追随してくることは間違いない。ホライゾン・ワールド(Horizon Worlds)やフォートナイト(Fortnite)など、他のメタバースプラットフォームが独自のレイヤード・クロージングを導入するのは時間の問題だろう(いまのところ、ホライゾン・ワールドのアバターにはまだ脚がないので、メタ(Meta)が所有するプラットフォームにパンツが登場するまでには、しばらく時間がかかるかもしれない)。

没入型マーケティングエージェンシー、プリティ・ビッグ・モンスター(Pretty Big Monster)のマネージングパートナー、ジェイソン・スタインバーグ氏は、「我々が望むパーソナライゼーションのレベルに到達するには、一連の段階的な改善や革新が必要であり、ロブロックスが実現したカスタマイズできるレイヤーウェアは、そうした段階のひとつだ」と語る。

「また、これを利用できるのがロブロックスのみだったとしても、ほかのすべてのメタバース提供者に対して、同じ種類の機能を追加するよう圧力をかけることになる。その圧力がかかると、皆で共に前進できる」。

[原文:How Roblox’s Layered Clothing makes the virtual world feel more real — and more attractive to brands

Alexander Lee(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)

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