ビューティ分野にも拡がる「 ティーンエイジ・ダートバッグ 」のノスタルジア

DIGIDAY

メイクアップブランドのカラーポップ(ColourPop)は4カ月前、「すべてのエモベイビーのためのグランジコレクション」をリリースした。それは即ヒットして、いまでもその勢いは衰えていない。

カラーポップの「トラブルメーカー」コレクション、大ヒット

「当たったという確信があった。発売日に3カ月間の予想売上数の半分以上が売れた」と述べているのは、カラーポップの親会社、シードビューティ(Seed Beauty)の最高収益責任者であるヴィヴィアン・ウェン氏だ。

カラーポップの「トラブルメーカー(Trouble Maker)」コレクションは、チェッカーボードのデザインに配置されたアイメイクとリップ製品だ。開発には、スケートボードをする女子、「エッジーだけど恐ろしさはない」メイクルック、ヴァンズ(Vans)のシューズ、トラヴィス・バーカー氏とミーガン・フォックス氏のイメージをコラージュしたムードボードが使われた。このコレクションのアイシャドーパレットは今でも同社サイトの売れ筋トップ5に入っており、発売以来10回売り切れている。ウェン氏は「このコレクションの在庫を保つことができない」と語る。

ティーンエイジ・ダートバッグの復活

TikTokで流行しているポップ・パンクや2000年代初期の歌を取り入れるZ世代のミュージシャンたちのおかげで、「ティーンエイジ・ダートバッグ(Teenage Dirtbag)」の復活が起こっている。カラーポップは、今年増加しているノスタルジアに刺激された「シーン」の感性を利用している美容ブランドの1社だ。ロックバンドとのメイクアップコラボレーション、カラフルな髪染め、エモスタイルの黒の「メイルポリッシュ(男性のネイルポリッシュ)」などはファッションや音楽のカムバックとともに人気を博している美容製品である。

「約20年経って(トレンドは)一巡した。『イット(it)』に戻ってきた。汗まみれで、汚くて、グランジ風の『気を配っているが、一見そうは見えない』というような外観だ。当社はそれを完全に再現しようとはしていないが、そのルックにオマージュを捧げている」と述べているのは、染毛剤ブランド、グッドダイヤング(Good Dye Young)の共同創業者兼最高イノベーション責任者のブライアン・オコナー氏だ。オコナー氏はパラモアのリードシンガーのヘイリー・ウィリアムス氏と共に同社を経営している。

2016年創業のグッドダイヤングは2018年にセフォラでローンチしたが、パンデミックのロックダウンによる髪染めブームで売上が急増したとオコナー氏は語っている。同氏によると、それが美容業界全体における反抗的なスタイルの流行につながる転機だったという。

「自分らしくある自由が誰にでもあることに皆気づいた。仕事も、雇用主も、職場もなかった。学校の管理もなし。『気が散るからそれをしてはダメ』という教師もいなかった」とオコナー氏。

2000年代初期の音楽と美容のコラボの増加

2000年代初期のロックスタイルは美容のあらゆる側面に浸透している。メイクアップでは、ヒップドット(HipDot)が2020年のマイ・ケミカル・ロマンスとのコラボレーションに続き、先月、コーン(Korn)とエヴァネッセンス(Evanescence)とのコラボレーションをローンチした。2000年〜2008年にエモボーイに人気だった黒いメイルポリッシュの復活は、自分のブランド、アンダンラッカー(UN/DN Laqr)を率いるマシン・ガン・ケリー氏や、グラムネティック(Glamnetic)とのコラボを通じてTikTokユーザーからポップ・パンクシンガーに転向したリルハディ氏のようなミュージシャンによっても推進されている。

パラモア、ブリンク 182、シンプル・プランの古い曲がTikTokで流行っており、このようなビューティトレンドはポップ・パンクの復活と一致している。「ロックスターのガールフレンド」の感性もTikTokで注目を集めている。ウィータスの2000年の曲で昨年8月に流行った「ティーンエイジ・ダートバッグ」トレンドにはさまざまなセレブが参加した。また、TikTokの「懐かしのインフルエンサー」では、MySpace(マイスペース)時代の「シーン」のヘアルックが再現されている。それはストレートヘアアイロンをかけて前髪はサイドに流した髪と黒のアイライナーをばっちり入れたスタイルだ。

「セレブリティ、音楽業界、当社のインフルエンサーコミュニティの間でそのよううなグランジでエッジーなルックへのシフトが見られた」とウェン氏。

このトレンドはZ世代とミレニアル世代のセレブにより拡大されている。音楽分野では、オリヴィア・ロドリゴ氏、ウィロー・スミス氏、ジェイデン・ホスラー氏といったアーティストがポップ・パンクの音楽とスタイル両方を新世代に紹介して影響を及ぼしている。これは、ウィリアムス氏や、妻であるコートニー・カーダシアン氏の新しいルックに影響を与えたバーカー氏など、2000年代初期に活躍したセレブのメインストリームへの復帰と時を同じくしている。

「カーダシアン一家は流行についてのお墨付きのようなものだと私はずっと思ってきた。彼らは『これは本物のトレンド』という刻印のようなものだ」と述べているのは、プレスオンネイルブランド、レイブネイルズ(Rave Nailz)の創業者、ブレイリン・フランク氏だ。同社は、マットブラックのネイルやピアスやチェーンを使ったデザインなどパンクにインスピレーションを受けたスタイルの製品を提供している。フランク氏はまた、キム・カーダシアン氏が、マシン・ガン・ケリー氏やミーガン・フォックス氏らほかのセレブと同様にピアス付きネイルを使っていることに言及している。最近噂になっているマシン・ガン・ケリー氏とフォックス氏の破局が「パンクの勢いの終焉を意味していないことを祈っている」述べている。

近年ファッションと美容の両方を席巻したY2Kの再来のように、理由は異なるもののミレニアル世代とZ世代の両方がトレンドに夢中になっているとウェン氏は語っている。「Y2Kトレンドを覚えているミレニアル世代のセグメントがいる。これは、彼らが覚えている10代のときの美学への逆戻りだが、それは最新化されている。それから、Y2Kのスタイルについて知っているかもしれないし知っていないかもしれないが、それを初めて取り入れている若い世代がいる」。

この新しい音楽シーンはビューティインフルエンサー分野と重なっている。たとえば、メイクアップインフルエンサーであるアビー・ロバーツ氏は音楽のキャリアをスタートして以来、ロックスターのスタイルに大きく傾倒している。彼女は昨年、モーフィー(Morphe)とロックスターをテーマにしたコレクションを発表し、カラーポップのスポンサー付きコンテンツも作成した。

カラーポップはロバーツ氏やエマ・ノートン氏といった「グランジ」インフルエンサーと協力している一方で、幅広いビューティインフルエンサーに自社コレクションのルックスを紹介して、そのスタイルを主流オーディエンスにアピールするよう働きかけている。

カラーポップのインフルエンサーマーケティング担当シニアディレクター、アラナ・マーダー氏は、「マイクロインフルエンサーにフォーカスしたのは、彼らが芸術性に傾倒していて、次に来るものや新しいトレンドを熱心に試す傾向があるからだ」と述べている。

トレンドの取り入れがうまいZ世代

オコナー氏は、Z世代がスタイルと音楽両方でトレンドを取り入れている方法が気に入っていると語っている。

「クールな再解釈だと思う。それに、正直なところ、Z世代はミレニアル世代よりもうまくトレンドを取り入れている」とオコナー氏。スタイルに関しては、ウルフカットやバタフライカットなどのヘアカットは「当時流行っていたものを改良したバージョンだ」。また、同氏は、文化的には今のシーンはもっとインクルーシブになっているという。

オコナー氏によると、10月にラスベガスで開催され、ノスタルジアに満ちていた「When We Were Young(我らが若かったとき)」フェスティバルでは、ウィリアムス氏がパンクシーンにかつて存在した排他性の問題について語ったという。当時は「(そのシーンは)非常に有毒だった」とオコナー氏。「ウィリアムス氏は男性優位の分野にいる女性なので、無視されているようだった」。

オコナー氏は「だが、Z世代は本当にうまく流行を取り入れており、クールな、そしてインクルーシブな方法で行っている」と語った。

[原文:‘Teenage dirtbag’ nostalgia catches on in beauty

LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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