FTCの プライバシー 保護の動きについて知っておくべきこと:「市場における違法行為を抑止するため、もはやためらいはない」

DIGIDAY

マーケティング業界は産業規模でオーディエンスデータを利用しており、それを懸念する反対派に事欠かない。特に、アドテク分野は近年、矢面に立たされている。

8月上旬には、米連邦取引委員会(以下、FTC)がインターネットユーザーの情報を主な商品にしている企業に「商業的監視」、「ずさんなデータセキュリティ」という非難を浴びせ、これらの問題に対処するためのイニシアチブを発表した。

「この状況、前にも見たような気がする」と思う人もいるだろう。しかし、米国議会では現在、米国データプライバシー保護法(ADPPA)などの法案が審理されており、このような警告に耳を傾ける必要がある。

まずはおさらいから…

FTC委員長のリナ・M・カーン氏によれば、FTCは現在、「ユーザーデータの際限のない吸い上げ」や「潜在的な違法行為」などの幅広い懸念事項について、情報提供者からの意見を求めている。特に、米国経済のデジタル化が進むなか、過去にどのような問題があったのか、また、将来どうすればFTCの要件を満たすことができるかを知りたいと考えている。市民からの意見の「しっかりした公的記録をつくる」ことで、新しい規則の内容を決定する際、より良い情報を得ることができるとカーン氏は説明している。

FTCはまた、企業がどのように個人情報を収益化しているのか、「消費者に影響を与え、そうでなければしないような選択をさせる」ために、消費者を欺くようなデザインやマーケティング手法を用いているかを深く理解したいと考えている。さらに、デジタルツールは子供にどのような影響を与えるのか、企業が顧客への報復のために、どのようにデータを利用しているかについても調査する予定だ。

カーン氏は8月上旬に行われた記者会見で、「FTCは長年、20年以上前から、プライバシー侵害やデータセキュリティ侵害に対抗するため、本当の意味で最前線に立ち、既存の法執行手段を駆使してきた」と語った。「経済のデジタル化が拡大、継続していることは、こうした慣行の一部がまん延することを意味し、ケースバイケースの法執行では、法律違反の抑止や結果として生じる被害の救済を十分に実行できない可能性がある」。

FTCは規則制定案の事前通知(ANPR)を出し、公示後60日間、市民の意見を受け付けることを3対2の投票で決定した。

調査は広範囲に及ぶが、メディア関係者にとって重要なことは

FTCは今後、デジタル経済がどのように運営されているかを多方面から調査する。懸念されている領域は、企業の消費者同意ポリシー、データ収集方法の一般への開示、潜在的な救済措置のコストなどだ。以下は、FTCがパブリックコメントを求めている質問とテーマの抜粋で、広告付きメディア業界の事業者が心に留めておくべきものだ。

  • 新しい規則は、公民権法ですでに課されている制限を超えて、ターゲット広告などの商業的監視行為をどの程度まで制限すべきか?
  • 新しい規則で現在の手段が禁止になった場合、企業はどのような代替広告手段をとることができるのか?
  • ターゲット広告に比べて、コンテクスチュアル広告はどれくらいの費用対効果があるのか?
  • 新しい取引規制は企業による消費者データの収集、使用、保持をどの程度まで制限すべきか?
  • FTCは企業に対し、商業的監視行為の公開をどの程度まで要求すべきか?
  • FTCが商業的監視行為の自己申告、第三者による監査または評価を義務づけるとした場合、どのくらいの頻度で行うべきか?

では、どうすればいいのか?

ANPRの一部として、9月8日にフォーラム開催が予定されており、市民のプライバシーと情報を守る新規則が必要かどうかについて、バーチャルイベントで意見交換できる。

FTCが規則を制定するには、長いプロセスを経る必要があるため、連邦議会の動向を踏まえて計画を「再評価する十分な時間」があるとカーン氏は述べ、市民の意見はFTCだけでなく連邦政府のプライバシー政策に影響を与えると補足した。

FTCの規則制定プロセスは本当に長い。FTCがパブリックコメント期間後に動き出した場合、議会に対して30日前に通告してから、提案を公表する必要があり、その後、さらに公示を行い、パブリックコメント期間を設定し、非公式な聴聞会を繰り返す。最終的な規則を制定する前にも、規則の分析を行い、修正された部分があれば、発効の30日前に公表する必要がある。これらすべてを経て初めて、FTCは「実際の認識または適正な暗黙の了解に基づき」規則違反者の取り締まりを開始できる。

パーミューティブ(Permutive)のCRO、マーク・パールスタイン氏はこうした最新の動向を受け、業界がコンフォートゾーンから抜け出すべきであることがさらに明白になったと指摘している。「GoogleがサードパーティCookieの廃止を遅らせていることからわかるように、大手テクノロジー企業が顧客のプライバシーを最優先することに消極的なのであれば、FTCに選択の余地などあるのだろうか?」。

「FTCは違法行為に対処する義務がある」

FTCの委員を務めるレベッカ・ケリー・スローター氏は8月上旬の記者会見で、FTCは現行法の下、違法行為に対処する「義務」があると述べた。ただし、FTCが承認する新規則は、議会が審議している新法案に「代わるものではなく、補完的なもの」になると言い添えている(同じく委員のアルバロ・ベドヤ氏も、ADDPAと重複する規則には投票しないと断言している)。

ケリー・スローター氏は次のように述べている。「このように記録を開始することは、FTCにとって重要なことだ(中略)市場における違法行為を抑止するため、あらゆる手段を用いることに、もはやためらいはないと示すことができるためだ」

[原文:The Rundown: What you need to know about the FTC’s latest privacy crackdown

Ronan Shields | and Marty Swant(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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