ChatGPT を教育やスキルアップに活用するダーマロジカ:従業員をAIに置き換えるのではなく、AIを活用できる人材育成

DIGIDAY

5月、プレミアムスキンケアブランドのダーマロジカは、プロフェッショナルのスキンケアセラピストのトレーニングに使用するスキンケアトリートメントマニュアル「ダーマロジカ:ザ・ブック」のChatGPTバージョンをローンチした。従業員をAIに置き換えるのではなく、AIを活用できる人材の育成に力を入れている。

5月、プレミアムスキンケアブランドのダーマロジカ(Dermalogica)は、プロフェッショナルのスキンケアセラピストのトレーニングに使用するスキンケアトリートメントマニュアル「ダーマロジカ:ザ・ブック(Dermalogica: The Book)」のChatGPTバージョンをローンチした。テクノロジー統合を幅広く推進している同ブランドは、従業員をAIに置き換えるのではなく、AIを活用できる人材の育成に力を入れている。

美容ビジネス全体でChatGPTとAIがホットな話題になりつつあるなか、ダーマロジカは早期参入を目指している。「ダーマロジカ:ザ・ブック」の新バージョンでは、チャットボットのようなAI機能を統合し、セラピストが指定されたウェブサイト上で質問できるようになっている。ザ・ブックは2006年に印刷物で発行され、2016年にデジタル化された。スキンケアセラピストはブランドの製品や使用方法、サロンのセットアップについて、チャットボットを使ってより速く、よりパーソナライズされた方法で学べるようになっている。セラピストがボックスに質問を入力すると、製品や使用方法に関する質問に応じた回答が得られる。

グローバル・ダーマロジカのCEOであるオーレリアン・リス氏は、人に触れることを中心とするスキンケアサービスがAIに取って代わられることはないだろうが、新しいツールが市場に登場した際、同ブランドのセラピストが確実にスキルアップしているようにしておきたいと述べた。「AIによってなくなる可能性があるすべての職種の採用を中止したと発表したIBMとは違う。我が社の従業員には、AIの追従者になるのではなく、AI革命のリーダーになるようなスキルを身につけてほしい」。

ジェネレーティブAIはマルチユースな助っ人

検索はジェネレーティブAIアプリケーションの成長分野だ。マイクロソフト(Microsoft)のグローバル検索およびAI製品マーケティング・ディレクターのサラ・モディ氏は、「(世界では)1日に100億件の検索クエリがあるが、その半数は回答されていないと当社では推測している」と話す。マイクロソフトは今年、同社の検索エンジンであるビング(Bing)を採用しているブラウザ、マイクロソフトエッジ(Microsoft Edge)にジェネレーティブAI検索チャットボットツールを搭載した。「人々は、本来設計されていないことをするために検索を使っている。ウェブサイトを見つけるには最適だが、より複雑な質問やタスクには物足りなさを感じることがあまりにも多い。そこでジェネレーティブAIの出番だ」。

透明性を確保するため、ダーマロジカではチャットボットがChatGPTで動作していることを従業員に開示しているが、これはチャットボットを統合するブランドにとって、倫理的な懸念がいまなお問題になっているからだ。またダーマロジカのブックは引き続き従来のウェブのフォーマットでも提供される。「人々がまだ使う準備ができていないかもしれないものを強制することはしない」とリス氏は述べた。

「他の技術ツールとは異なり、ジェネレーティブAIはリアルタイムで適用できる。マルチユースなヘルパーだ」とリス氏は言う。ダーマロジカでは、グローバルビジネスにおける職務説明書の作成、コーディング、コンテンツの翻訳にもAIを活用している。またリス氏は、ジェネレーティブAIを使用してウェブサイトのコンバージョンとナビゲーションを最適化する可能性も見出している。「(買い物客が)検索する際に異なる言葉を提案できるので、すばやく明確な検索結果やよりよいコンバージョンにつながる」。

セラピストの認定にブロックチェーンを活用

そのほかの先端技術やAIの活用として、ダーマロジカは2019年にAIフェイスマッピングツールをローンチしている。2022年3月には、セラピスト認定のためのブロックチェーンによる検証を模索。そして3月下旬には、メディスパ認定プログラムの一環として、非NFTのデジタルコレクタブルをローンチした。そのバッジはブロックチェーン技術を利用し、セラピストがプログラムを通じて認定されたことを証明する変更不可能な証拠を提供する。これによってセラピストはLEDライトセラピーのような高度な治療を行うことができる。それより以前は標準化された資格は存在しなかったし、米国では州ごとにエステティシャンの要件が異なっている。ダーマロジカの調査によると、92%の女性が、訓練を受けている専門家であると確認できるなら、もっと気楽にエステティシャンを訪れて高度なメディスパの施術を受けることができると回答している。

認定を受けたセラピストは、ウェブサイトやリンクトイン(LinkedIn)のプロフィールに掲載可能な銀色のデジタルバッジを獲得できる。「イーロン・マスク氏から15ドル(2000円)で買ったものとは違い、これは実際に現実世界でのクオリティと価値があるものだ」とリス氏は述べている。

[原文:Dermalogica is using ChatGPT for education and upskilling]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)


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