メタとGoogleの決算から垣間見える、 プラットフォーム 時代の終焉

DIGIDAY

すべての興隆はいつか終わりを迎える。

Google、Facebookそのほかの最新の決算内容から判断するに、デジタル広告快進撃の時代は終わりに近づきつつある。一部の例外を除き、オンラインプラットフォーム最大手各社にとっては今期も厳しい四半期だった。以下、もっとも痛手の大きかった企業について概観してみよう。

  • Googleでは売上高(545億ドル、約7兆6300億円)に関するアナリスト予測が外れただけでなく、インターネット上で巨大な存在感を誇るYouTubeの広告収入(71億ドル、約9940億円)も、2019年第4四半期に決算報告を始めて以降初めて縮小した。従来は景気後退の影響を受けることのなかったGoogleの検索広告ビジネスですら、今期は395億ドル(約5兆5300億円)と息も絶え絶えだった。Googleがくしゃみをすると、業界全体が風邪を引きがちだ。
  • Googleが何を食らったにしても、メタ(Meta)のほうが影響は大きかった。今四半期売上高の減少は、前年同期比(4.5%減)でも前四半期比(3.8%減)でも見られた。純利益も陰りを見せ、前年同期比で52.2%減、前四半期比では34.3%減だ。結論として、四半期業績がこのような調子では、2023年は損失が出るだろう。
  • モバイルメッセージングアプリのスナップ(Snap)は、困難な状況をイノベーションでなんとか乗り切ろうと試みたが(Snapchat+)、最新業績を見るかぎり先は長い。第3四半期の売上高は前年同期比6%増の11.3億ドル(約1582億円)。2017年に上場して以来、最も低い伸びだ。
  • 今や最上位に位置付けているのはファネルの最下層だ。Amazonの今期の広告収入は、前年同期比25%増の95億ドル(約1兆3300億円)に上った。

「減速」の構造的要因

誤解のないように言っておくが、各社ともまだまだ儲かっている。かつてのような勢いではないだけだ。このような減速は避けがたい――といっても、白熱した2021年のあとに何らかの反動が来たというだけではない。もっと構造的な要因がある。

儲けの多い中小企業セクターからの広告収入は縮小しつづけている。広告費の上昇、広告実績の悪化、物流費の急騰、めっきり冷静になってしまった証券市場、期待を下回る需要など、理由はいろいろ考えられる。

それなら、とECに目を向けると、目先のオンライン売上は減少している。つまり、広告展開の余地も減っているということだ。

とはいえ、広告の効果を最大限に引き出せるのは、今もプラットフォームではないのか。おそらくはそのとおりだが、それを確認することはますます難しくなっている。広告費が上昇する一方で効果が測定しづらくなっていることは、記憶に新しいだろう。

ということで皆が見て見ぬふりをしている、あの問題に立ち返ることになる。Appleだ。その施策によって効果的なターゲティングと効果測定を広告主に提供することが難しくなって以来、プラットフォーム最大手に並ぶ企業が収益に苦しむ状況が続いている。

デジタル広告に向けられるあらゆる方向からの視線

オンライン広告がこれまでのように成長拡大していくには、酸欠なのだ。経済的、疫学的、政策的要因が複雑に絡み合って金銭の流れをさらに制約していることはいうまでもない。

この不安定な時期がどのような結果を迎えるにしても、そこにたどり着くまでには何らかの軌道修正がある可能性は高い。投資する側(すなわちマーケター)は、自分たちのリスク許容度がどれほどなのかをすでに認識しつつある。

「今では多くの企業にとって不可欠となったデジタル広告が、成熟期に移る過程にある」と欧州インタラクティブ広告協議会(IAB Europe)のチーフエコノミスト、ダニエル・ナップ氏は語る。「プラットフォームが提供するあらゆるオポチュニティに乗り遅れまいという動きだけで有機的に拡大していくことはもはやできない。広告に投じる金額は、景気や企業の現実的な状況に合わせて伸びていくことになる」。

ナップ氏の見解は特に目新しいものではない。マーケターたちは何年も前から「デジタルは無視するには巨大すぎる」ことを話題にしてきた。だが、この話題がマーケティング界隈の外に出ることはほとんどなかった。今ではさまざまな要因が相まって、オンライン広告業界の仕組みに対する関心が企業全体に広がっている。

たとえば、広告における「データ産業複合体」とそれに対する規制広告支出を巡る環境、社会、ガバナンスの問題。無形資本に対する投資としての広告費。ECの広告。これらすべてを合わせると、かつてないほどオンライン広告とその延長線上にある最大のステークホルダー、すなわちプラットフォームに注目が集まる状況が生まれる。

かつてないほどに肥大化したデジタル広告

デジタル広告に関して大規模な変化が進んでいることをまだ納得いただけない方々に向けて、さらに決定的な状況証拠となる数字を紹介しよう。JPモルガン(J.P. Morgan)によると、前回の金融危機時にデジタルメディアが広告費全体に占める割合は12%だった。2021年の割合は67%だ。広告予算が大きくなればなるほど、その金額と、ひいてはそれを資金源とするメディアオーナーたちも、マクロなトレンドの影響を受けやすくなる。

要するに、デジタル広告は無視するには本当に巨大になりすぎている。

「プラットフォームのような超巨大企業が持続的に成長できるのには限界がある」と話すのはイーマーケター(eMarketer)のデジタル広告・メディア分野のアナリスト、イヴリン・ミッチェル氏だ。「これは避けられないこと。その原因の一つとして、消費者行動が常に変わり続けるもので、広告費が必ずそのあとを追うから、ということがある。これは、2021年の広告関連の2大トレンドであったCTVとリテールメディアが、マクロ経済的な懸念のなかでまだ有望な広告手段として拡大を続けている原因でもある」。

プラットフォーム各社は安泰だ。月間ユーザー数でも1日当たりのユーザー数でも、依然として強大な存在であり、広告主に大きなオーディエンスを提供している。何が問題なのか、意を決して口にするなら、プラットフォームはレガシーのメディアビジネスとなってしまったのだ。少なくとも当面は、かつて彼らがかき乱した既存勢力と同じようにやっていくしかない。うまくやれる企業もあるだろうし、できない企業もあるだろう。

「2つとして同じプラットフォームはない。離れ小島もあればエコシステムもあり、勢いに乗っているものもある」とデジタルエージェンシーのアカディア(Acadia)のCEOであるジャレド・ベルスキー氏は話す。「エージェンシーもクライアントも層が薄くなる景気後退期には、メディアバイヤーは離れ小島と話せる時間が少なくなって、現実的にエコシステムと関わる時間を増やすことになる。エコシステムでは自分たちの運命をコントロールできる。離れ小島の企業のように、一つにすべてを依存しているわけではない」。

平均への回帰

これがオンライン広告市場の勢力変化の兆しを示している分には、それほど心配はいらない。実際、このような軌道修正は、平均値へと回帰する動きにすぎない。だが、その過程では、勝者と敗者が生み出される。

「オンライン広告の成長減速の影響を真に受けるのは、その巨大なスケールと市場浸透率ゆえにマクロ経済的な逆風にもろにさらされる最大手だけだ」とアドテク企業のシードタグ(Seedtag)で英国のカントリーマネージャーを務めるポール・トンプソン氏は話す。「それ以外は、ブランドが価値と差別化、イノベーションと創造性の推進についてほかの選択肢を模索するなか、その恩恵を受けるだろう」。

[原文:Meta, Google earnings suggest RIP to the platform momentum narrative

Seb Joseph & Krystal Scanlon(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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