Amazon とAppleの台頭で、軋むGoogleとメタの寡占:「勢いのいい話には必ず終わりがある」

DIGIDAY

プラットフォーム業界における勢いは、Googleとメタ(Meta)からAmazonとAppleにシフトしつつある。何を証拠に? そう思われるのなら、最新の決算情報をチェックしてほしい。

Googleの広告総収益は同社史上2度目の減少となったが、すでにあちらこちらで書かれているYouTubeの問題だけがその原因ではない。通常は景気後退にともなう支出削減の影響を受けにくい、検索連動型広告による収益も減少している。

メタも同様で、同社の年間広告収益は、初めて減収を記録した。

一方AmazonとAppleは、Googleやメタに比べればはるかに広告事業の規模は小さいながらも、精力的に広告費を集め続けている。

AmazonとAppleの圧倒的な優位性

この明らかな状況の違いは、なぜ生まれたのか。構造的な理由もあれば、経済的な問題もあるだろう。結論から言えば、AmazonとAppleが持つ圧倒的な優位性が彼らを広告事業へと駆り立て、それが今両社のレバレッジとなって表れはじめたのだ。

AmazonとAppleがどのくらいの速さでそこに注力してくるかは、まだわからない。だが何が起ころうとも、現状が完全にひっくり返されるようなことにはならないだろう。広告業界における資金の動きについては、Googleとメタの影響力があまりに大きいからだ。

だがGoogleとメタの影響力が弱まりつつあるのは明らかだ。2022年の広告収益は緩やかながらも伸びていたが、それでも年間通じてその傾向がみられた。そして2022年第4四半期には、この流れをほとんど変えられなかったどころか、むしろ決定的になってしまった。

状況が悪化し続けるGoogleとメタ

その一例がFacebookからの収入だ。為替変動の影響を除いた第4四半期のFacebookの広告収益は実質2%の増加で、広く報道されている4%の減少という数字に比べればはるかにましである。だがそれでも、広告事業が現在低成長であるという事実に変わりはない。たとえばコロナウイルス感染症によるパンデミックの間にどれほど急成長したかをみてほしい。2020年第4四半期の広告収益は、為替変動の影響を除いた実質値で31%の増加であった。

Googleも同じだ。同社の状況が悪いことは明白で、検索連動型広告からの収益は減少しており、ホリデーシーズンに1.6%減の426億ドル(約5兆5380億円)に落ち込んだ。この期間のYouTube上の広告費は縮小し続け、広告総収益は79億ドル(約1兆300億円)と、2021年の86億ドル(約1兆1180億円)から7.8%の減少となった。

対照的に、AmazonとAppleの業績は、はるかに楽観的だ。

Amazonは、2022年第4四半期に前年比23%増となる116億ドル(約1兆5000億円)の広告収益を上げた。低迷する広告業界にあって、これは、可能な限り最新のインテントデータを広告主に供給できる力を持ったAmazonのような企業だけに起こりうる高成長といえるだろう。

一方、Appleの広告事業を担うサービス部門は、2022年10~12月の3カ月間で208億ドル(約2兆7000億円)という新記録となる収益を上げた。これは、24%の増加であった2021年同期と比べ、為替変動の影響を除いた実質値ベースで2桁の増加だと、同社のCFOであるルカ・マエストリ氏は述べている。

多様さを増す広告市場全体

言うまでもなく、AppleとAmazonが広告業界に及ぼす影響は、四半期ごとに増大している。

とはいえ、これら2社がGoogleやメタと同じような規模――少なくともドル換算額で同等規模――の広告事業をすぐに行えるようになるわけではない。そうではなく、AmazonとAppleのそれぞれの広告ビジネスの影響力が増すことによって、両企業の純資産が評価されるのだ。広告事業を自社のクラウド技術に密接に統合しているAmazonにしても、ライバル企業が効果的な広告提供を行うことを難しくさせているAppleにしても、その広告事業の規模に比べて圧倒的に大きな影響力を市場に及ぼしているのである。

「Googleとメタが姿を消すようなことはないが、広告費の面でいうとこれら2社からより若い広告企業へと再編成が行われるだろう」と、アナリストレポート「インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)」の広告およびメディアプラクティス担当主席アナリスト、ポール・ヴァーナ氏は話している。そして、「広告市場全体は、従来Googleとメタの2社による寡占状態であったが、そこにより小規模な企業が参入して、多数のプレイヤーの間で多様さを増していくだろう」と述べた。

勢いのいい話には必ず終わりがある、というものだ。たとえGoogleとFacebookのように入り込む隙さえない寡占であっても。ただ驚くべきは、その減速の唐突さだ。理由はいくつかあるが、もっとも根本的な理由は、両社が予想以上に早く広告事業の転換点に向けて舵を切ったという事実である。

YouTubeはCTVでの広告費を独占し、現代の文化思潮においては他の追随を許さない存在となった。だが、ストリーミングサービスが広告料収入の必要性を認識し、TikTokが短い動画を世に広めると、どちらもそうではなくなった。

もはや「難攻不落」ではない

一方、メタはAppleの力を低く見積もりすぎていた。メタとしては、Appleの規制強化によってマーケターが出稿した広告の効果をみることが難しくなったとき、自社の事業への打撃があるだろうとは予測していたが、その打撃がどの程度の規模になるのかを過少評価していたのは間違いない。それから2年が経過したが、同社はいまだにその腹に受けた一撃から回復していない。

「われわれの前にあるのは、動画プラットフォームからソーシャルネットワークまで、大規模なWeb 2.0事業の推進力となったデジタル広告のエンジンが成熟を極めた姿だ」と欧州インタラクティブ広告評議会(IAB Europe)のチーフエコノミストであるダニエル・ナップ氏は述べている。「こうしたビジネスは、もはやデジタル広告の成長を上回るものではない」。

つまり、難攻不落と思われていた2社による独占状態が、実はそうではないのだということを暗示している。Googleとメタが他メディアからの脅威とは無縁であった時代は終わった。広告費を大量投入する企業が非常に多いため、拡大した経済の中ではかつてのように急な変化を受け流すことができないのだ。

このような広告主は、ひとたびピンチがおとずれれば、節約のために投資を削減する必要に迫られる。他社の参入により競争が始まったことで、これまで独占してきた2社の盛りの時期は過ぎ去ろうとしている。

広告事業を再び飛躍させられるのか

もっともGoogleやメタの上層部がそう思っているわけではない。それどころか、彼らはすでに、低迷中の広告事業を飛躍させる試みに着手している。短・中期的には、AI(人工知能)を基盤とした取組みを行う。プラットフォームを提供する両社の責任者によれば、いちだんとプライバシーに配慮したアドテクを構築する予定だという。

「より幅広い広告事業を手掛ける中で、われわれは継続的にAIに投資しており、ここにきてその努力が実を結んでいる」と、メタのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏はいう。「2022年第4四半期に広告主が獲得したコンバージョンは、前年比で20%超の増加となった。これが顧客獲得単価の低下と相まって、広告支出に対するリターンの向上につながっている」。

[原文:Google-Meta duopoly continues to creak in their ‘heightened maturity’ as Amazon, Apple ascend

Seb Joseph(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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