ドイツのスポーツウェアブランドのプーマ(Puma)は、今後予定している1万人規模の創業75周年記念のPFP NFT(プロファイル画像非代替性トークン)プロジェクトについて2月10日に発表を行った。今回のローンチは、ファッションとWeb3コミュニティの構築に投資し、Web3の教育を社内で広めるという、現在の同社の目標を助長するものだ。
プーマのチーフブランドオフィサー、アダム・ペトリック氏は、「我々にとってWeb3はマーケティングトレンドとはかけ離れている」と述べた。「当社ではWeb3を、消費者とより深く、より意味のある関係を築くための方法として捉えている」。昨年、同ブランドは9月のニューヨーク・ファッションウィークでデビューしたウェブサイト、ブラックステーション(Black Station)を含む、Web3関連のローンチを複数行っている。そのインタラクティブなウェブサイトは、Web3をWeb2の顧客に届けつつ、消費者にブランドの未来を垣間見せることを意図している。
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ファッションと最新技術に関心のあるコミュニティに投資
3月1日、同ブランドはインスタグラムの投稿でリアーナ氏の復帰を発表した。その投稿には、フェンティ x プーマ(Fenty x Puma)の別のコラボレーションが「近日発売」と書かれていた。音楽とファッションにおいて重要な人物であるリアーナ氏は、2014年にスニーカーのコラボレーション(のちに完売となった)を発表した際に、一時的にプーマのクリエイティブ・ディレクターに任命されている。
「長いあいだ、プーマはファッションコミュニティと大きく関わってきた」とペトリック氏は言う。「しばらくのあいだ、そこから離れていたが、いま再びそこに回帰し、大々的に投資している。ファッションに関心のあるコミュニティと、革新的な技術に関心のあるコミュニティはうまく重なり合っている」。ペトリック氏は、プーマが今年9月の世界のファッションウィークイベントに参加する予定であることを認めたが、詳細な説明は避けた。
2022年のプーマの売上高は、前年比19%増の84億7000万ユーロ(約1兆2187億円)だった。
Web3のスーパーカスタマーとの関係性を構築
昨年、メタバース人気が低下したことを受け、プーマは今年Web3でどのように目立つ計画なのかを示しはじめている。完売となったNFTプロジェクトや3万人のメンバーがいるDiscordのコミュニティについて、ペトリック氏は次のように語った。「Web3の分野において非常に強力で小規模なコアコミュニティを構築することにいくらか成功しているので、どちらかといえば、当社のWeb3への関心度は高まっている。Web3のスーパーカスタマー、つまり、新しい分野の技術やブランドとの直接的な交流に興味のある、最先端の消費者との関係性を育むことに我々は懸命に取り組んできた」。
ペトリック氏はこの顧客層を、金融に詳しい暗号通貨ファン、アートに興味のあるコレクター、新しい技術に興味のある顧客という3つのカテゴリーに分類している。
プーマは2月10日に次のNFTプロジェクトとして、1万個のスーパープーマ(Super Puma)のカートゥーンマスコットのNFTを同社のウェブサイトで発表した。価格や鋳造の日付については未定だ。このプロジェクトは、今年創業75周年を迎えるプーマが計画しているWeb3に関連したいくつかのローンチのうちのひとつだが、PFPの領域ではプーマは厳しい競争に直面している。Web3のスニーカーコミュニティでマーケットシェアの大半を占めているのは、ナイキ(Nike)とRTFKT(アーティファクト)なのだ。
2021年にナイキがRTFKTを買収したことを指摘して、Web3プラットフォームのインスティテュート・オブ・デジタルファッション(Institute of Digital Fashion)の創業者リアン・エリオット・ヤング氏は次のように述べた。「NFTのプロジェクトにはオーセンティックな提案が必要だ。RTFKTとナイキの純粋さは、同じ目標を持つ完全なパートナーシップであるため比較するのが難しい。RTFKTとナイキは、現実世界と仮想世界にまたがるひとつの統一されたプラットフォームだ。プーマ(が成功する)には伝統あるブランドのストーリーを語ることが不可欠で、(NFTで競合する)多くのブランドが自社の価値を保持するのは、まさにそこにある」。
プーマの動物のロゴを再解釈した「マスコット」が、スーパープーマNFTコレクションのコレクタブルNFTとなっている。ペトリック氏によると、マスコットのイメージはブランドのアーカイブから取り出したもので、75年という伝統を讃えるものだ。
また、プーマのニトロコレクション(Nitro Collection)のNFTホルダーには4000個の無料NFTがエアドロップされる予定だ。2022年8月にローンチされたニトロコレクションには、物理的なスニーカーであるNfrnoとFastroidのデジタルツインとして機能するNFTが含まれている。製品に焦点を当てたニトロコレクションとは異なり、スーパープーマコレクションはストーリーテリングとコミュニティとのエンゲージメントを優先する。たとえば、ローンチではプーマのキャラクターが登場するコミックストリップなどを紹介する予定だ。
マーケターにとって最良のシナリオ
プーマは、2022年9月にDiscordコミュニティを立ち上げた。「本当に強力なコミュニティとコミュニティ管理チームに恵まれており、おかげで消費者から直接フィードバックを聞き、非常に直接的かつ積極的な方法で消費者と関わることが可能となっている」とペトリック氏は述べた。
「オーディエンスのフィードバックに従って、オーディエンスが提案することに基づき当社が行っていることを調整できるようになった。自分たちが学ぼうとしているカルチャーやコミュニティと直接つながる。これこそあらゆるマーケターにとって最良のシナリオだ」。
同ブランドは、コラボレーションの重要性を熟知しているため、社内のWeb3エキスパートが孤立した状態にならないように注意している。現在、Web3のエキスパートの一部はサッカーのマーケティング部門と協力し、Robloxを活用してサッカーの若いオーディエンスにリーチするための戦略を練っている。
ペトリック氏は、現在はDiscordとTwitterが最良のゲートウェイであると指摘し、グローバルブランドのマーケティンググループのシニアリーダーなら、Web3で消費者と接する方法を理解することは有益だと述べている。
[原文:Puma is pushing further into web3 and fashion]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)