生鮮・冷凍 ペットフード の台頭、小売業者の大きな商機に:最大の鍵はペットの「ヒト化」

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2019年には長期保存可能なペットフードが一般的だったが、今や時代遅れだ。消費者が冷蔵庫で保管する生鮮食品のペットフードが増え続けており、これはペット用品ブランドにとって、成長を模索する大きな機会となってきている。

ペトコ(Petco)は、犬用の冷凍食品を販売しているペットフードブランドのジャスト・フード・フォー・ドッグス(JustFoodForDogs)と共同開発し、ホールハーテッド・フレッシュ・レシピ(WholeHearted Fresh Recipes)という商品ラインを販売することを8月24日に発表した。冷凍ペットフードブランドのフレッシュペット(Freshpet)は、セイフウェイ(Safeway)やウォルマート(Walmart)などの小売業者と提携しており、第2四半期の売上が前年比34.4%増の1億4600万ドル(約203億円)に達したと語った。一方でペットスマート(PetSmart)は、D2Cの生鮮および冷凍ペットフードブランドのノムノム(Nom Nom)と4月に独占パートナーシップを結んだ。これは同社がこのカテゴリーに進出をめざしていることを示すものだと、同社は説明した。

小売業者は、このカテゴリーにおいてイノベーションを引き起こしてきたブランドと独占的なパートナーシップを締結することで、生鮮および冷凍ペットフードの台頭に関わろうとしている。専門家たちによれば、これらの小売業者がペットフードに投資しているのは、インフレが激しい期間でも消費者はペットへの経費を切り詰めないと考えられるからだ。市場調査企業のフューチャーマーケットインサイト(Future Market Insights)によると、冷凍ペットフード市場の評価額は、今年の約140億ドル(約1兆9500億円)から、2032年には約230億ドル(約3兆2000億円)に達すると予測されている。

最大の推進要素は「ペットのヒト化」

フレッシュペットの共同創設者で最高執行責任者を務めるスコット・モーリス氏は次のように語る。「私がこの業界で仕事をはじめたころは、『私は、この子のペットの親だ』と表現すると、バカにされるような時代だった。今日では、これはごく一般的な言い方だ」。

フレッシュペットの商品への需要は常に存在したわけではないと、同氏は述べている。同社が2006年に創設されたとき、商品を店舗の棚に置く価値があると小売業者を説得するために苦労したと、同氏は述べている。同社の商品は冷凍が必要だったことが、さらに説得を難しくした。同社は、最初は25店舗の小売店で販売を開始し、それ以来2万4000店舗まで増加した。

同氏は次のように述べている。「2006年から2015年くらいまでは、苦しい戦いの連続だった。流れが完全に変わったのは、ここ2年か3年だ」。

ベンチャーキャピタル企業のレフトレーンキャピタル(Left Lane Capital)でマネージングパートナーを務めるジェイソン・フィードラー氏は、このカテゴリーで最大の推進要素のひとつになったのが、ペットのヒト化だったと語る。人間の食のトレンド、たとえば冷凍食品の台頭などの多くが、ペットカテゴリーに反映されたとしている。フレッシュペットは、環境保護に配慮した植物ベースのペットフードとしてスプリング・アンド・スプラウト(Spring & Sprout)を11月に発売した。

このギャップを埋めるため、このカテゴリーにペットフードの新興企業が現れはじめた。パウフーズ(PawFoods)などのD2Cペットフードブランドは、生鮮および冷凍のグルテンフリー商品を専門小売店で販売することをめざしていると語る。一方で、サブスクリプションベースの作りたてペットフード企業であるペットプレート(PetPlate)は、12月にシリーズB資金調達を1900万ドル(約26億4000万円)で終了した。

フィードラー氏は次のように述べている。「社会でのペットフードの普及は新たな段階に到達しつつある。これは本当のマスマーケットカテゴリーだ。そして、市場への浸透が深まるにつれ、人々はより高級で人間らしい食品を求めるようになるだろう」。

需要に応じ提携を進める小売業者

一部の小売業者は、生鮮および冷凍のペットフードブランドと提携して、需要に応じてきた。ペトコとの最近のタイアップに加えて、ジャスト・フード・フォー・ドッグスはより多くの「ペットの親」に商品を届けるため、D2Cペット用品企業のチューイ(Chewy)と提携することを発表した。一方でペットスマートは、このカテゴリーの急速な成長を考慮して、同社の生鮮および冷凍商品の品揃えを拡充することを決定したと語った。

「生鮮および冷凍カテゴリーは急激に成長がはじまったもので、数年前には見られなかったカテゴリーだ」と、ペットスマートのエグゼクティブバイスプレジデントで最高顧客責任者を務めるスターシャ・アンダーソン氏は、米モダンリテールとの以前のインタビューで語っている。

ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるブラッド・ジャシンスキー氏は、経済が下向きのときでも消費者はペットへの支出を望んでいるため、このカテゴリーは多少景気後退の影響を受けにくいと述べている。米国ペット用品組合(American Pet Products Association)によれば、ペット業界は2021年に売上額が過去最高の1236億ドル(約17兆2000憶円)に達した。そのレポートには、この業界が2年連続で過去最高の成長を見せたこと、2022年も成長が続くと予測されることも示されている。

ジャシンスキー氏は次のように述べている。「ペトコやペットスマートを見れば、これを行うことは十分に有意義だとわかる。これらの商品のほとんどは明らかに生鮮食品で、開けてから7日間以内に使う必要があるため、頻繁に店に行って購入することになる。何度も店舗を訪問するとき、ペトコやペットスマートは買い物客にアップセルを行う、または玩具、おやつなど追加商品をクロスセルする機会がある」。

教育と受容の段階

それでも、これらのブランドは、より多くのペット所有者と結びつくために課題に直面している。2020年に設立されたパウフーズは最近、インフレを理由に値上げを余儀なくされたと、CEOを務めるテリー・ガードナー氏は述べている。しかし同氏は、パウフーズのサブスクリプションを一時中断または停止した顧客は「非常に少ない」と述べている。ペットの親たちにとって、ペットの食事を変えるのは困難なためだ。現在のところ、同社のサブスクリプションの成長率は前月比で10%だ。

ジャシンスキー氏は、一部の新興企業にとって、棚面積の制限や、貯蔵寿命が限られていることによる配送関連の複雑性の関係で、物理的な店舗を拡大することは依然として困難だと語る。これらの大手ブランドがこのカテゴリーに参入することで、小規模のブランドは大手小売業者に妨げられることなく競合を続けるのが困難になるかもしれない。たとえば、消費者向け商品大手のマースインコーポレーテッド(Mars Inc.)は1月にノムノムを買収した。

そして、このカテゴリーにおける機会にかかわらず、一部の消費者に対しては依然として生鮮および冷凍ペットフードというコンセプトを説明することが必要になると、ガートナーは語る。

同氏は次のように述べている。「生鮮と冷凍の概念が生まれてかなりの期間が経過したが、この概念は依然として教育と受容の段階にある。今はまだ、生鮮とはどのようなものなのかを人々に教育していくことが必要だ」。

[原文:Retailers are banking on the rise of fresh and frozen pet food]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image Via PawFoods

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