厳しい予算のなか、ブランドは マーケティング の焦点を「LTVとロイヤルティ」にシフト

DIGIDAY

ファッション業界全体でマーケティング予算が縮小していることは周知の通りだ。景気後退が迫っており、ブランドができるかぎり経費削減を試みるなか、広告主の30%以上が2023年に広告費の削減を計画している。

パフォーマンスマーケティングとLTVに注力

しかしブランドのマーケティング戦略の変更は支出の削減だけではない。ブランドはマーケティングミックスを変更しつつある。トップ・オブ・ファネルの広範なブランド構築と顧客獲得にそれほど依存せず、その代わりに測定可能なパフォーマンスマーケティングとLTV(顧客生涯価値)の向上にフォーカスするようになっている。

ソーシャルメディアやコネクテッドTVなどのチャネルを通じたパフォーマンスマーケティングの主な魅力は、支出額をその場で容易に調整できる点である。

楽天リワード(Rakuten Rewards)の社長、クリスティン・ガル氏は次のように語っている。「パフォーマンスマーケティングは自分の判断で使えるので、状況に基づいて増やしたり減らしたりできる。今年の下半期に不況になるとしたら、年の前半に大規模なブランドマーケティングキャンペーンに(支出を)投入し過ぎて、撤退できないようなことにはなりたくない」。

ガル氏は、楽天が提携しているブランドと小売業者の両方にこの考えが当てはまると述べている。また、今年、楽天はパフォーマンスマーケティングに注力しているため、自社マーケティング戦略を変更する方法にも当てはまるとも語っている。

既存顧客から価値を引き出すことにシフト

フランチェスカズ(Francesca’s)J.クルー(J. Crew)チコズ(Chico’s)をはじめとするブランドは、最近、特典やロイヤルティプログラムを刷新したり再開している。この動きには、新規顧客の獲得のために支出し続けるのではなく、費用対効果の高い既存顧客からさらに多くの価値を引き出す狙いがある。J.クルーのCMO、デレク・ヤーボロー氏は、J.クルーはトップ・オブ・ファネルのブランドマーケティングをまだ行っているが、データ駆動型のパフォーマンスマーケティングが同社のLTVの向上に役立っていると、Glossyに語っている。

ヤーボロー氏は「長いあいだマーケティングに携わっているので、バランスは常に変動している(のを知っている)」と述べている。J. クルーはパンデミックに苦しんだ企業の1社であるが、2022年の収益はパンデミック前のレベルよりも30%アップして回復している。「現在、純粋な量よりも獲得の質にフォーカスしており、生涯価値の高い顧客の育成に注力している。これまで以上に多くのデータにアクセスできるようになったが、ブランド主導のマーケティングとのバランスも取らなければならない」。

ドレスXの戦略変更

再販サイト、ストックX(StockX)のCMO、ディーナ・バーリ氏は同社のマーケティング戦略もここ数カ月で変化したと語っている。しかし、パンデミック中にも継続的に成功(2022年には4000万回の生涯取引を記録)を収めていることもあり、ストックXは多くの他社ブランドとは正反対のことを行っている。

バーリ氏は次のように述べている。「実のところ、今年はトップ・オブ・ファネルにさらに多くの投資を行っている。これは直感に反しているように見えるかもしれないし、他社が行っていることではない。だが、今年の大きな目標のひとつはコミュニティとの信頼関係を築くことであり、大規模な文化的瞬間やインフルエンサー関連イベントに投資するのはその実現に役立つ。今年の後半には従来型のマーケティングの実施も考えている」。

バーリ氏は、予算が限られている場合には測定可能なボトム・オブ・ファネルのマーケティングに注力するのは当然だが、厳しい経済状況でもトップ・オブ・ファネルのブランドマーケティングを機能させる方法はあると述べている。同氏によると、ストックXは広告費の一部を予備として確保し、大幅な変更が必要な場合に投入できるようにしているという。バーリ氏のチームはトップ・オブ・ファネルのキャンペーンに効果があるかどうかを早期に把握するために、ストックXに対する検索などの指標に注目している。

バーリ氏は次のように述べている。「以前は、マーケティングの成功を測定するために12カ月の収益を調べていたが、今ではもっと短期間に対応している。コネクテッドTVやGoogleショッピングなどのチャネルは当社にはうまく機能している。実際にはSMSが抜きん出てもっとも生産的なチャネルであり、また、オウンドチャネルなので、時間の経過とともに顧客からさらに多くの価値を引き出すのに役立つ可能性がある」。

[原文:As budgets tighten, brands are shifting their marketing focus to LTV and loyalty

DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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