メタバース 空間上で、ブランドがもたらす革新的なリテール戦略とは?

DIGIDAY

3月24日〜27日に開催されたディセントラランド(Decentraland)のメタバースファッションウィークにおいて、ブランドはさまざまな小売戦略を明らかにした。それらには、NFTの購入、展示会、インタラクティブ体験、インスタグラム映えするディスプレイなどが見られた。

デジタル通貨投資会社のグレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)は、メタバースを1兆ドル(約123兆円)の収益機会と推定している。マーケティング面では、メタバースは仮想商品から没入型体験までブランドにとって新しいチャネル全体を開放するものだ。すべての消費者がメタバースを受け入れているわけではないが、ゲーム環境では深く関与している。また、ガートナー社(Gartner)の2022年1月のレポートでは、2026年までに25%の人が仕事やショッピング、通学、社交や娯楽などのために1日に1時間以上をメタバースに費やすようになるだろうと予測されている。

メタバース内の小売店舗

ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)やエトロ(Etro)などのブランドは、ファッションショーに注力した。ほかのデザイナーは、デジタルネイティブと従来の小売両方において、デジタルブティックで購入する人々の小売体験を最適化することにフォーカスしてきた。デジタル愛好家の多くは物理的な小売体験とは異なる仮想小売体験を求めている。デジタル体験は特定のデザインや空間に制限されるものではないからだ。そのような需要にもかかわらず、ディセントラランドのエリアやブティック、店舗は実際のものと非常に似寄っていた。3D衣服のNFTが展示されていたり、店内で商品を見たりと、特化したブランドプレゼンスを優先することが一般的な戦略だった。

ファッションウィーク前、ディセントラランドの仮想ショッピング地区にはトミー ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、エリーサーブ(Elie Saab)、フランク ミュラー(Franck Muller)などの有名ブランドによる小売店やアクティベーションがすでに設定されていた。また、ドレスX(DressX)とメルツ・オッツァモ氏のコラボレーションやニコラスカークウッド(Nicholas Kirkwood)のホワイトラビット(White Rabbit)NFTラインなど、デジタルのみのブランドを専門にする店舗もあった。

メタバースファッションウィーク中にローンチしたイミテーション・オブ・クライスト(Imitation of Christ)は、同社初のデジタルコレクションであるIOCジェネシス(IOC GENESIS)を発表。アーティストのリンジー・アダリオ氏、ニコール・バフェット氏とのコラボレーションやボアード・エイプ・ヨット・クラブ(BAYC)のNFT2点のコラボレーションなど、ユニークなデザインとウェアラブルが披露された。NFTの服にはユーザー向けの限定特典が追加されており、将来のコレクションにアクセスしたり、コレクションのプレビューを見たり、限定ショーやイベントへの招待を受けたりすることができるようになる。ファッションウィークの間に入手可能だったNFTの多くはこれと同じような独占的アクセスを提供するものだった。

ブロックチェーンプラットフォーム、ボソン・プロトコール(Boson Protocol)の創設者、ジャスティン・バノン氏は次のように述べている。「これらの世界はゲーム化されていないと退屈だ。フラットな世界に入って歩き回るだけのPlayStationゲームをプレイしたい人はそれほどいないだろうが、魅力的なタスク満載のゲームをプレイする人は何十億人もいる。メタバースファッションウィークの後、ディセントラランドの当社のスペースであるポータル(Portal)でゲーミングの要素を拡大している。障害物競争に参加して、アイテムを購入したり、特別なグループへのアクセスがあるNFTを獲得できるようになる」。

メタバースを利用してエクスペリエンスを提供

メタバースファッションウィークは、メタバースにゲーム要素を取り入れようとしているブランドにとっての最初の実験となったが、もっと幅広い異なるゲーム体験も登場しつつある。たとえば、英国のデパート、セルフリッジズ(Selfridges)は、実店舗とデジタルプレゼンスにメタバースの側面をもっと多く組み込むことに尽力している。10月、デザイナーのチャーリー・コーエン氏と提携してポケモン・エレクトリック・シティ(Pokemon Electric City)ゲームをデビュー、そして1月にはNFTを販売した(仮想通貨ではなかったが)を販売した初めての店舗になった。

以来、ほかの小売業者もこれに追従している。3月には、米国のデパートであるニーマン・マーカス(Neiman Marcus)は、女性主導のイニシアチブとNFTプロジェクトのボスビューティーズ(Boss Beauties)と提携して、同社の共同創業者であるキャリー・マーカス・ニーマン氏のイメージの同社初のNFTを競売にかけた。これに関連して、2017年に閉店したフランスの高級ブティック、コレット(Colette)が、最近、NFTコレクションでひとつ目キャラクターのドゥー・ダーセル(Dour Darcel)とコラボレーションしたことが挙げられる。

また、セルフリッジズは、ディセントラランドに設けた展示専用スペースでパコラバンヌ(Paco Rabanne)とヴァザルリ財団美術館(Fondation Vasarely)によるNFTコレクションを披露した。これらはメタバースファッションウィーク中には販売されなかったが、関心のあるコレクターに対するプレビューの役割を果たしており、後日購入できるようになるという。

セルフリッジズは3月21日の週に、LinkedInの投稿で「初めて、パコラバンヌとヴァザルリ財団美術館による独占的なユニバースNFT(UNIVERSE NFT)を当社のフラッグシップメタバースストアで見ることができるようになる」と述べた。「これはWeb3の歴史における初のメタデパートであり、誰でも来店できる。ゲストとしてインターアクションすることもでき、また、メタバース内での進歩を進めながらデジタル資産の安全を保ちつつ、暗号通貨ウォレットを全機能に接続することもできる」。

メタバースファッションウィークに参加した従来のマルチブランドブティックのプレゼンスは、デジタルファッションハウス、リパブリック(Republique)やフランスのアクセサリーのeテイラーのモニエール・パリス(Monnier Paris)のようなデジタルファーストのマルチブランドブティックのプレゼンスとは異なっていた。セルフリッジズは流れるような展示スペースと曲がりくねった廊下にアートワークとパコラバンヌの作品を展示して、ディセントラランドのユーザー向け体験の構築にフォーカスしていたが、リパブリックのブティックはもっと実店舗に似ていた。同社の仮想ショップはeコマースショップと同じように機能し、壁に商品の3Dモデルを展示した。ファッションウィークの間は24時間営業されて、訪問客はデザイナーアパレルを見たり購入することができた。

イタリアのシューズブランド、ホーガン(Hogan)は、メタバースポップアップストアを開店して、ブランド初のNFTドロップを披露した。これは「ホーガン・アントラディショナル(Hogan Untraditional)」コレクションと呼ばれ、同ブランドの象徴的なスニーカーを刷新したものである。このドロップを祝うために、ブランドは3月26日にディセントラランドでNFTプラットフォームのエクスクルーシブル(Exclusible)と共同でアフターパーティイベントを開催。司会はDJのボブ・シンクレア氏が務め、仮想世界初のダンスコンペティションも行われた。ホーガンのメタバースポップアップは、顧客が購入しなくてもかまわないデジタル世界においてブランドが顧客と関与する方法を示したといえる。

メタバースでローンチするメリット

ホーガンのようにディセントラランドに一時的に存在することを選んだ場合でも、セルフリッジズのように永続的に存在することにした場合でも、ディセントラランドでのプレゼンスを確立することによりブランドはセットアップを迅速に行うことができるようになる。ボゾン・ポータルと提携した複数のブランドによると数週間以内でできるということだ。費用はプロジェクトの規模によって異なる。

「(多くの場合)ブランドや組織は永続的なスペースを制作して、そのスペースでほかのイベントやマーケティングと接続した独自のキャンペーンを行っている」とバノン氏は述べている。「永続的なスペースは長期的なゲーム環境になれる可能性がある。出来事が起きるPlayStationゲームのように。ブランドはストアを常設して、異なるコレクションを発表しては、それらのコレクションに関連するゲーム化されたさまざまなアクティベーションやアイテムを持つことができる」。

実行に時間がかかるマーケティング戦略もあるが、メタバース内の店舗に基づいて構築する機会により、イベントやローンチで客足を獲得しながら最小限の時間で構築することが可能になる。Z世代のファッションブランド、サイダー(Cider)の創設者であるユー・オッペル氏は次のように述べている。「ディセントラランドのメタバースファッションウィークに参加する機会は2月下旬にあったのだが、すでにそこに進出している。2カ月もかからなかった」。サイダーは、インスタグラム映えするレインボーウォールをディセントラランドのストアに設けた最初のブランドのひとつである。ユーザーは写真を撮ってソーシャルメディアプラットフォームで共有できるようになった。ディセントラランドに進出する方法を柔軟に選択できるのは、ブランドがエンターテイメントや小売にもっとフォーカスした戦略を掘り下げることができることを意味する。

「メタバースなら、世界中の首都の高級な通りに建設する店舗に制限されない。ワイルドなものを作ることができる」とバノン氏。

リスト(Lyst)のコミュニケーション担当バイスプレジデントであるケイティ・ルビン氏は次のように述べている。「(メタバース戦略が)すでに(IRLショッピング検索に基づく)実際の購入客の共感を呼んでいるという初期の兆候を目にしている。ファッション製品のデジタルと物理的な世界が将来どのように連携できるのか、そしてそれが発見から配達までの購入体験としてどのようになるのかを探求するのが楽しみだ。また、当社の顧客やブランドパートナーにとってもっと多くの価値を引き出せる新しい方法があるかどうかを見届けていきたいと思う」。

[原文:Metaverse Retail: The innovations brands are leveraging in the space

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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