Snapchat(スナップチャット)がクリエイターの最優先事項になったことはない。そして、この状況がすぐに変わることはなさそうだ。
Snapchatはほぼ間違いなく、クリエイターが集める注目とそれについてくる収益を必要としているが、それでも、クリエイターを取り込むための努力が不足しているようだ。
Snapchatも努力はしているが
公正を期すために言っておくと、Snapchatは一部のクリエイターに取り入ろうと努力してきたが、クリエイターが何よりも優先する目的地になるには不十分かもしれない。
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Snapchatは2022年に入ってから、新しい収益プログラム、クリエイターの体験を充実させるための機能、マスタークラスなど、クリエイターへのサポートを強化したようだ。Snapスターのパブリックストーリーのミッドロール広告、レンズスタジオ(Lens Studio)のカスタムランドマーカー(Custom Landmarkers)、ディレクターモードと呼ばれる新しいカメラと編集ツール、スウェーデンのストックホルムで開催される初めてのクリエイターマスタークラス(Creator Masterclass)などが含まれる。
また、2022年には2つの大きなプロジェクトも始動した。1つ目は初めてのアクセラレータープログラムである「$120Kブラック・クリエイター・アクセラレーター・プログラム($120K Black Creator Accelerator Program)」で、その名の通り、未発掘の黒人クリエイター25人に毎月1万ドルが12カ月にわたって提供される。2つ目は初めてのスナップチャット・サウンド・クリエイター・ファンド(Snapchat Sounds Creator Fund)。米国の独立系アーティストを支援するため、トップサウンドクリエイターに月額最大10万ポンド(約1680万円)の助成金を支給する新プログラムだ。
2021年10月に始まったクリエイターハブは言うまでもない。
Snapchatはクリエイターを愛していると言ってもよいだろう。ただ、それだけでは、クリエイターが求められていると感じることはできない。クリエイターはまだ、Snapchatがコミュニティーを構築して育む場所であるだけでなく、主な収入源のひとつとして利用できる場所だとは確信していない。そのため、クリエイターの戦略上、Snapchatはまだ優先事項ではないのだ。
報われないクリエイターの努力
インフルエンサー・マーケティング・ファクトリー(Influencer Marketing Factory)が代理人を務めるクリエイターのタイ・プライス氏(@blobrosss)は、Snapchatは決して優先事項ではないが、初期には一日100万ドル(約1億3900万円)のスポットライト・クリエイター(Spotlight Creator)ポットを高く評価していたと説明する。「今はTikTok(ティックトック) とYouTubeに注力している」とプライス氏は話す。「以前は現金を提供してくれることがうれしかったが、典型的なコンテンツではもううまくいかないようだ」。
Snapchatそのものの性質と同様、一日100万ドルの太っ腹な現金支給は短命に終わった。
開始からわずか9カ月後の2021年8月、現金が底を突き、一日100万ドルが一週100万ドルに減少したため、クリエイターがSnapchatから去っているとCNBCが報じた。
そして、テッククランチ(TechCrunch)は2021年10月、Snapchatが再びポットの見直しを行い、年間数百万ドルへの変更を決定したと伝えている。クリエイターにとっては、さらなる大打撃だ。
クリエイターのジェームズ・トーマス・ケイシー氏(@JTCasey)は、Snapchatがかつてクリエイターの努力に十分報いていたことを認めたうえで、今はケイシー氏も仲間たちも、Snapchatがほかのプラットフォームのように、マネタイズに役立つかどうかを見極めようとしていると語った。
双方の関係は改善の余地あり
マネタイズのことはさておき、一部のクリエイターはいまだに、Snapchatファミリーの一員であることを実感できずにいる。
たとえば、インフルエンサー・マーケティング・ファクトリーが代理人を務めるインフルエンサーのカーター・ケンチ氏(@cringecarter)は、Snapchatはクリエイターと担当者の関係をまだ改善できると考えている。
「クリエイターが多すぎて、そのなかに紛れてしまい、1対1の関係を構築できないケースがある」とケンチ氏は説明する。
最近プラットフォーム全体で行われたレイオフの結果、以前より関係の構築が難しくなったかどうかは定かではない。スナップ(Snap)では8月、CEOのエバン・シュピーゲル氏が従業員宛てに、事業の再編と集中について詳述したメモを送っている。
タレントチームが解雇の対象になっているという直接的な言及はないが、シュピーゲル氏は次のように述べている。「変化の規模はチームによって異なる。戦略的優先事項の実行に必要な優先順位と投資のレベルによって決定される」。
プライス氏はクリエイターのモチベーションを維持する方法として、ほかのクリエイターと会う機会やイベント、マイルストーン達成時のボーナスを増やしてほしいと考えている。
ケンチ氏も、Snapchatはチームビルディングのイベントをうまく開催していると認めながら、もっと多くのクリエイターを参加させるべきだと提言している。
Snapchatとクリエイターの関係がいかに気まぐれなものであったかを考えると、これらはすべて驚くようなことではない。
クリエイターとのトラブルも
DIGIDAYは2017年、Snapchatでクリエイターとしてのキャリアをスタートさせたインフルエンサーのサラ・ペレツ氏がSnapchatのプロダクトマネジメント担当幹部に、プラットフォームから離れることを考えていると伝えたところ、かなり冷たい言葉を浴びせられたと報じている。「Snapchatは友達同士で使うアプリであり、クリエイターのためのアプリではない」というものだ。
これはクリエイターの立場を明確にする言葉だ。
しかし、ビリオン・ダラー・ボーイ(Billion Dollar Boy)の創業者、エド・イースト氏は、SnapchatはフィルターやAR(拡張現実)の分野でトップの座に君臨する一方で、クリエイターにとっては以前から、見つけやすさが障害になっていると指摘する。「ほとんどの場合、ユーザーが斬新なクリエイターコンテンツを見つけるのは、ほかのプラットフォームで紹介されたか、友人から送られてきたかのどちらかだ」
SnapchatのライバルであるTikTokは常に、コンテンツを見つけやすいアルゴリズムを絶賛されているが、Snapchatの場合、どのような動画がうまくいくかを見極めるのが難しい。
アレックス・グリスウォルド氏(@alexgriswold)は、ほかのプラットフォームでは、それぞれの動画のパフォーマンスを予想できるため、スポンサードコンテンツを制作しやすいと述べている。一方、Snapchatでは、通常の動画再生回数が数十万単位であるにもかかわらず、再生回数が1000程度で終わることも珍しくない。
返り咲きを狙うには?
全体として、クリエイターのイノベーションに関しては、Snapchatはまだほかのプラットフォームを追い掛けているように見える。ダニエル・ギルバート氏は機能の幅広さと定期的な更新を理由に、仕事では主にTikTokとインスタグラム(Instagram)を使用している。そして、Snapchatはストーリー以外の更新が不十分で、個人的な使用しか考えられないと感じている。
「インフルエンサーとして使用するには、単純に突出したところがない」とギルバート氏は話す。「ほかのクリエイターがこのチャネルに集まり、彼らが受けている恩恵がはっきり見えない限り、仕事の手段にすることはないだろう」。
このようなテクノロジービジネスにセカンドチャンスが訪れることはあまりなく、返り咲きを狙う場合も、最初の挑戦で成功させる必要がある。ルーム・アンロックト(Room Unlocked)のCEO兼創業者アレックス・ペイン氏によれば、クリエイターやユーザーにとっての(突出した)地位を取り戻すのは至難の業だという。「Snapchatはそれに苦労しているのだと思う。しかし、一度失ったら、もう元には戻らない」。
現状では、ほかのプラットフォームの方がクリエイターのコンテンツ制作をはるかに後押ししているとイースト氏は考えている。具体的には、クリエイターマーケットプレイスのインセンティブと機能の進歩が優れているという。「これからの数年間、新しい層が入ってくるときに、スナップがここに焦点を合わせることができれば、本当の意味で、そこから大手との競争が始まる」。
このようなクリエイターのトラブルについてSnapchatに問い合わせたところ、EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)タレントパートナーシップ責任者のジュリー・ボガート氏から次のような回答があった。「自己表現やオーディエンスの拡大、そして何より長期的、持続的なビジネス構築のため、世界中からSnapchatにやって来るクリエイターのコミュニティーは拡大を続けている。クリエイターマーケット、スポットライトの報酬、Snapスターのパブリックストーリーのミッドロール広告など、私たちはさまざまなコンテンツや収益機会で彼らを支援している」。
「また、コンテンツクリエイターたちと緊密に連携し、マスタークラスや交流会を通じてクラス最高の知識を共有している。私たちは常に、何が効果的かについての声に耳を傾け、それを製品やプログラムの開発に反映させている」。
[原文:Despite Snapchat’s efforts, creators still don’t see it as a priority]
Krystal Scanlon(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:黒田千聖)