カニエ・ウェスト 氏がGAPとアディダスに不信感。イージーの店舗をオープンする可能性は低い

DIGIDAY

カニエ・ウェスト氏とアディダス(Adidas)との長年のパートナーシップによるイージー(Yeezy)のスニーカーは、セレブリティとブランドのクロスオーバーとしてはもっとも成功している。そしてウェスト氏がGAP(ギャップ)と新たに結んだ10年契約も、その規模としては前代未聞だ。

だが最近、デザイナーであるウェスト氏はこの2件の契約を批判している。現在は削除されているが、9月1日に彼はアディダスのCEOカスパー・ローステッド氏が「60歳で死んだ」というフェイクの新聞の見出しをインスタグラムに投稿した。同じ日、ウェスト氏はGAPを批判する長い動画もインスタグラムに投稿している。彼は同ブランドが、イージー・ギャップ・エンジニアード・バイ・バレンシアガ(Yeezy Gap Engineered by Balenciaga)のラインから自分のデザインのひとつをGAPの別製品に盗用したと主張、自分抜きでイージー x GAPラインに関する会議が開かれ、子どもたちとの写真撮影も中止されたと訴えている。

ウェスト氏は、アディダスとGAPの両社がイージーの単独店舗をオープンすると約束したにもかかわらず、「自分は両社を同時に救ったのに、どちらの会社も実現してくれない」と述べ、両ブランドを辞めると脅している。アディダスのラインは2015年に、GAPのラインは昨年にデビューした。

単なるブランドアンバサダー以上の存在

最後の発言は大げさかもしれないが、イージーのスニーカーおよびイージーxGAPはどちらも人気があるのというのは事実だ。ストックX(StockX)では、イージーは一番人気のスニーカーブランドである。そして2021年6月8日に行われたイージー x GAPのラインの最初のドロップは、GAP史上最高のeコマースの売上をもたらした日となった。

どちらのブランドも、ウェスト氏によって厳しい立場に立たされている。ウェスト氏の悪評は絶えないようで、最近は何よりも論争の的になっている。しかし彼は、両ブランドのラインに不可欠な存在でもある。イージーxGAPのクリエイティブを完全にコントロールしているのはウェスト氏だ。「これはセレブリティマーケティングではない。コラボレーションではない」とウェスト氏は自分の立場について語っている。彼は単に外せば済むようなブランドアンバサダーではないのである。

「カニエは強い人物で、思ったことを口にするという評判が常につきまとっている」と話すのは、イギリスのスニーカー小売業者ザ・ソール・サプライヤー(The Sole Supplier)のCEOジョージ・サリバン氏だ。サリバン氏は、ブランドはウェスト氏と提携する前から、それを承知していると指摘している。「心配なのは、カニエが発言すればするほど、彼は自分自身だけじゃなく一緒に働いているブランドをも危険にさらすことになるという点だ」。

新たな店舗のオープンは困難

店舗の性質が体験型やドロップ中心であるなら、GAPがウェスト氏に独立した店舗を与えるのは賢明かもしれない。GAPの店舗での初のイージーxGAPの販売は、Glossyを含む多くが、GAPの店舗の美学とは異様なほどマッチしていないと指摘していた。イージーxGAPの店舗を別途オープンすれば、このラインが抱えているアンバランスな問題はある程度解決するだろう。だが現実には、それはGAPの既存の店舗戦略に反することになる。GAPの実店舗での売上は昨年以降10%減少しており、同社は2023年末までに350店舗を閉鎖している最中なのだ。

GAPのエグゼクティブバイスプレジデントでCFOのカトリーナ・オコネル氏は、5月の決算説明会で「2022年度には当社は約50店舗を閉鎖する見込みであり、目標の約85%に達する」と述べている。

アディダスも同じような状況にある。8月上旬の決算説明会でのローステッド氏の発言によれば、小売のトラフィックが21%減少しており、ウェスト氏の要求を満たすことができたとしても、新たに店舗を増やすことは同社にとって魅力的な展望ではない。

「自社店舗への来店者数はいまだに通常のレベルをはるかに下回っている」とローステッド氏は述べた。「全体として、課題は依然として厳しいとみているが、強力な現場チームと力を合わせ、コントロールできることに引き続き懸命に注力していく」。

アディダスやGAPは、金を稼いでくれるデザイナーの機嫌を損ねるようなことはなるべくならしたくないのかもしれない。しかしパートナーに対するウェスト氏の公でのコメントは以前にもまして非友好的になっており、このパートナーシップがいつまで続くのかという疑問を投げかけている。
(9月15日、Bloombergなどでカニエ・ウエスト氏がGAPとの契約を終了する意向と報じている。)

[原文:Gap, Adidas unlikely to open Yeezy stores despite Kanye West’s demands]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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