【時系列まとめ】 Amazon 、偽造品対策を強化:2022年は600万点を処分、高級メゾンとの共同訴訟も

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Amazonは今年に入り、自社のマーケットプレイスでの偽造品販売を取り締まる取り組みを強化している。

直近では、カメラのバッテリーと充電器をAmazonで宣伝、マーケティング、販売しようとした29の企業に対し、テック企業である同社は、カメラメーカーのキヤノン(Canon)と共同で訴訟を起こした

同社は4月、3回目の年次「ブランドプロテクションレポート(Brand Protection Report)」をリリースし、2022年に600万点以上の偽造品を処分したと報じた。それとは別に、同社はこの1年間に自社の偽造品犯罪対策チーム(Counterfeit Crimes Unit、CCU)が米国、英国、欧州連合全体、中国において、1300人以上の犯罪者の告訴、または調査を照会したと語った。

長年にわたって、Amazonの偽造品に対処する戦略は、法執行機関へのデータ提供や、偽造品の販売業者に対する積極的な強制措置に重点を置いてきた。また、この問題に対する技術主導のアプローチをとり、機械学習への投資や予防的制御の改善により、知的所有権保護と偽造品検出システムの自動化・拡大にも取り組んできた。しかし、問題点に対してAmazonの注目を集めるためのリソースを持ち合わせているとは限らない中小企業には、未だギャップが存在する。

専門家によると、Amazonが2016年にブランドレジストリ(Brand Registry)プログラムのテストを開始し、2017年にそのプログラムを販売業者に拡大したことで、偽造品対策への戦略の基礎を築いたという。2019年にはプロジェクトゼロ(Project Zero)やIPアクセラレーター(IP Accelerator)など、基本的に偽造品の実際の報告に直結する取り組みを開始した。2020年には、ブランドと連携して訴訟を起こすCCUチームを設立した。

「このような取り組みに関していえば、Amazonは、特にほかのマーケットプレイスと比較して、おそらく今でも一番だろう」と、ソフトウェア企業マークビジョン(MarqVision)の共同創業者兼CEOのマーク・リー氏は語る。「同社が成功した点はおそらく3つだ。ひとつは、偽造品を阻止するうえでプラスの影響を与えたこと。法的な責任のリスクを考えて、販売業者は偽造品をAmazonに掲載することを避けるようになった」。同氏は、Amazonが偽造品の問題についての認知を広めることにも成功したと付け加えている。

Amazonに存在する膨大な商品と販売業者

これらの取り組みにもかかわらず、いくつかの課題と制限は存続していると、同氏は語る。Amazonに存在する商品と販売業者の数が膨大なものであるため、すべてのリストを効果的に監視して制御するのは困難だ。「Amazonは偽造品を見つけるために自動システムを使用しているが、このシステムは間違いがないわけではなく、どうしても多くの偽造品が見逃されてしまう」と、同氏は述べる。

また、リー氏は、Amazonは多くの訴訟を行っているとはいえ、それらはマーケットプレイスで販売されている「すべてのブランドのごく一部にすぎない」ことにも言及している。さらに、「偽造品は多くの場合、世界のさまざまな場所で作りだされているため、取り締まりや規制、法の適用を一律に行うことが難しい」とも述べている。

調査会社のガートナー(Gartner)でディレクターアナリストを務めるブラッド・ジャシンスキー氏は、Amazonの戦略の重要な部分は、ブランドやそのほかの第三者機関、および各種の連合とともに行っている作業を、4月に発表した偽造防止取引所(Anti-Counterfeiting Exchange)のような取り組みを通じて拡大することだと、米モダンリテールに語った。

「ほかの小売業者とのあいだで法執行を拡大し、ベストプラクティスを共有し、さらにデータも共有できるようにすることには、大きな意義がある。そしてここ数年、実際にそのような拡大が行われてきた」と、同氏は付け加えている。

テック大手である同社が、自社プラットフォームで販売されている偽造品を取り締まるために行ってきた、いくつかのもっとも重要な事項を以下に時系列で示す。

2016年11月

Amazonがはじめて、偽造品を販売していたサードパーティーの販売業者を相手に2件の訴訟を起こす

ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)の報道によると、Amazonは、フォワアームフォークリフト(Forearm Forklift)とTRXサスペンショントレーナー(TRX Suspension Trainer)のワークアウトバンドや商品の偽造品を販売していた販売業者に対して、ワシントン州裁判所に2件の訴訟を起こした。当時、これは、偽造品のサードパーティ販売業者に対する同社初の法的挑戦となった。

2017年3月

偽造品販売を取り締まるため、Amazonはパイロット実験の後、ブランドレジストリプログラムを米国の販売業者に拡大

このブランドレジストリ(Brand Registry)プログラムにより、ブランドは、自社の商標や知的所有権をeコマース大手であるAmazonに登録し、偽造品が報告された際には、出品や販売業者のアカウントを削除できるようになった。

リー氏によれば、ブランドレジストリはAmazonのもっとも特筆すべき取り組みで、その後に登場したほかのすべての取り組みの基礎になったという。

2019年2月

Amazon、プロジェクトゼロを立ち上げる

Amazonが発表したプロジェクトゼロは、テクノロジーと機械学習ツールを使って、サイトの偽造品の量を減らす試みだった。同社のセルフサービスの偽造品取り締まりツールにより、ブランドは商品の偽造品をリストから削除できるようになった。

2019年10月

Amazon、偽造品出品に対処するためIPアクセラレータを開始

AmazonのIPアクセラレータ(Intellectual Property Accelerator)は、加盟小売店がIP専門家や法律事務所のサービスを割引価格で利用できるようするもの。このプログラムは、Amazonで販売を行っている中小企業が、推奨されている法律事務所と繋がることで、中小企業が自社の知的所有権の商標を取得し、ブランドを保護し、偽造品の販売に対処できるよう支援することが目的だった。同社はそれ以後、このプログラムを欧州、カナダ、インドに拡大した。

2020年6月

Amazon、偽造品犯罪対策チームを設立

Amazonは、偽造品の販売を追跡し、法執行機関による偽造品への刑事訴訟を支援するため、新しいチームを設立した。このCCUは元連邦検察官、刑事、およびデータアナリストで構成され、Amazonのウェブサイトを調査して、決済サービスプロバイダーなど外部ソースからのデータを収集する。ブランドと共同で訴訟を起こすのも、このチームの役割だ。

Amazonの顧客信頼およびパートナーサポート担当バイスプレジデントを務めるダーメッシュ・メータ氏は当時、「偽造品を扱っているすべての業者は、法律によって許される限りの最大の責任を追うという警告を受ける」と語った。

2020年6月

Amazonとラグジュアリーブランドのバレンティノ、共同で訴訟を起こす

Amazonとイタリアの靴デザイナーのバレンティノ(Valentino)は、同社のガラバーニロックスタッズ(Garavani Rockstud)シューズの偽造品販売をめぐり、ケイトリンパングループ(Kaitlyn Pan Group)に対して、シアトルの米連邦地裁のワシントン州西部管区に共同で訴訟を起こした

この訴訟の重要な点は、Amazonが当時自社のラグジュアリーストア(Luxury Stores)事業に多くのファッションブランドを引き入れようと準備していた時期に、はじめてラグジュアリーブランドと共同で起こした訴訟だったということだ。この訴訟により、同社が偽造品に立ち向かう戦略を重視していることが示された。同社は、成長を望むカテゴリーにおいて、多くの場合、大手のパートナーや有名ブランドと共同で訴訟を行う。

2020年11月

Amazon、米国税関・国境警備局と提携し、偽造品の発送を識別するためのデータ実験を試験運用

Amazonは、偽造品が米国に持ち込まれるのを阻止するため、米国税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection、CBP)と提携した。同社は、この米国政府との連携により、Amazonの偽造品犯罪対策チーム、物流プロバイダのDHL、およびCBPが得た情報をもとに、偽造品の販売を取り締まると発表した

2023年4月

Amazon、偽造防止取引所を立ち上げる

Amazonは4月、新しい第三者データベースを発表した。加盟小売店はこのデータベースを利用して偽造品を特定し、匿名で報告できるほか、データベースを使って前科のある業者を除外し、そのような業者との取引を停止することも可能だ。

同社の新しい取り組みは、クレジットカード業界が詐欺犯を見つけだして、その手口を特定するために使用しているデータ共有スキームと似ている。このプログラムはまだ早期段階だが、将来的に良い影響をもたらすだろうと、リー氏は述べる。「まだこのプログラムとその意味するものについて学んでいるところだが、時間が経つにつれて何らかの影響を及ぼすだろうと考えられる」。

2023年5月

Amazonとキヤノンが共同で訴訟を起こす

Amazonは、Amazonストアでカメラのバッテリーや充電器の広告、マーケティング、販売を試みた29の販売業者に対して、キヤノンと共同で訴訟を起こした。これは、Amazonがブランドと共同で起こした訴訟のもっとも新しい例だが、同社は過去にサルバトーレフェラガモ(Salvatore Ferragamo)、カルティエ(Cartier)ヘインズブランズ(Hanes Brands)などのブランドと共同で、同様の訴訟を起こしたことがある。

[原文:A timeline of Amazon’s efforts to curb counterfeit selling]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

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