感謝祭のEC は記録的な売上も、5件に1件はボットか:「不正が行われるところには常に、動機、手段、機会がそろっている」

DIGIDAY

年末商戦が本格的にスタートし、景気の不透明感にもかかわらず、感謝祭の週末のセールは記録的な売上高となった。

一方でeコマースの成長は、招かれざる客も引き寄せている。収益を吸い上げ、マーケターにとって重要な分析データを歪めるボットトラフィックだ。

景気は不透明だが、買い物客は増えている

全米小売業協会(The National Retail Federation:以下、NRF)の買い物客調査によると、感謝祭からサイバーマンデーの5日間で過去最高の1億9670万人がオンラインとオフラインで買い物を行ったという。2021年から1700万人増加しており、そのうち、NRFの推計では約1億2300万人が店舗で買い物をした(昨年から17%増加)。

アドビ(Adobe)によると、サイバーマンデーの売上高は過去最高となり、前年比5.8%増、総額110億ドル(約1兆5000億円)を超えた(なお、2022年のブラックフライデーの売上高は91億ドル[約1兆2450億円]、感謝祭は53億ドル[約7250億円]だった)。ホリデーシーズン全体では、消費支出は2100億ドル(約28兆7300億円)に上り、2021年シーズンの2050億ドル(約28兆円)、2020年の1880億ドル(約25兆7200億円)を上回ると、アドビ・デジタル・インサイツ(Adobe Digital Insights)は予想している。

フタを開けてみれば人々が大いに消費する週末となったが、今年はeコマースの減速が懸念されていた。WARCがこのほどマーケターに実施した調査では、30%がデジタル広告とeコマースへの投資を減らす予定だと答え、支出を増やすとしたのはわずか23%だった。

景気の不透明感にもかかわらず、消費額が予想を上回ったのは、消費者に依然として買い物への意欲があることを示唆していると、アドビ・デジタル・インサイツのディレクター、テイラー・シュライナー氏は話す。6~7年前にもキッチンテーブルの下でスマートフォンから買い物をする人はいたが、今や感謝祭のオンラインでの売上高は、半分以上がモバイル端末によるものだという。「消費者の購買意欲は、確かに存在しているようだ」と同氏。一方で、「人々は買い物に出かけ、贈り物を購入している。しかしこのホリデーシーズンが、これほどよい結果にならなかった可能性も十分にある」とも述べた。

5件に1件がボットトラフィックの可能性

この成長は、収益にとっては明るい材料だが、一部の研究者は、すべてのホリデーショッピングのトラフィックが、本物の人間によるものではない可能性があると指摘している。サイバーセキュリティ企業のCHEQが、小売業者のウェブサイトへの訪問160万件を分析した結果、ブラックフライデーの買い物客の約4分の1は偽物の可能性が高いことが判明した。一方、サイバーマンデーの訪問76万5千件をCHEQが分析したところ、5件に1件がボットトラフィックである可能性が高いとの結果が出た。ただし、これは前年より改善している。CHEQの推定では、2021年のブラックフライデーの買い物客の訪問は3件に1件が偽物だった。

CHEQの最高戦略責任者ダニエル・アビタル氏は「不正が行われるところには常に、動機、手段、機会がそろっている」と話す。「とくにeコマースは、この3つの要素が非常に顕著だと思う(中略)。大きなお金が動いていて、それはネット上の悪者たちにとって常に魅力的だ」

マーケターのボット問題に気づいているのは、CHEQだけではない。オクタ(Okta)の9月のレポートによると、プロモーションへのサインアップ試行の23%が不正なものだったという。前年の15%から増加しており、リワードプログラムが主な標的となっている。また、同社の調査では、感謝祭の週にボットトラフィックが増加し、とくに小売、飲食、金融サービスのカテゴリーで増えたことがわかった。

ボットトラフィックは実際の収益を減らすだけでなく、クリック率(CTR)、在庫、サイト滞在時間、広告費用対効果(ROAS)、人々が本当に買いたいものは何かなど、あらゆる分析データを歪める。また、顧客獲得コストや翌年の計画にも影響を及ぼしかねない。

「おまけに面倒な仕事が増える」と、オクタの製品開発ディレクターを務めるイアン・ハサード氏はいう。「偽物のジョン・スミスではない本物のジョン・スミスをどうやって見つけ出せばいいのか? そのアカウントに登録したのは誰なのか? それを確かめるには、膨大な調査が必要だ」

新規登録は堅調。ファーストパーティデータが引き続き頼りに

従来のオンラインeコマース広告を超えて、SMSマーケティングは引き続きファーストパーティデータに頼るマーケターに役立つチャネルとなっている。SMSマーケティングプラットフォームのアテンティブ(Attentive)によると、過去1週間にブランドからのメッセージを受け取るために新規登録した消費者は1270万人を超え、2021年の同時期から49%増加している。

11月21~28日の期間に、アテンティブのプラットフォームでは、マーケターから登録者に送信されたメッセージが世界で16億件を記録し、初めて10億ドル(約1370億円)を超える売上高を生み出した。好調だったカテゴリーは、アパレル、美容、ホームオフィス製品などだ。

アテンティブのプレジデント、アミタブ・ジャワー氏は、企業はテキストメッセージをミッドファネルのキャンペーンに利用し、新規顧客の獲得に力を入れすぎず、既存顧客からより多くの収益を得るようになっていると話す。ただし、電子メールやソーシャルメディア広告と同じく、スパムとみなされる危険があるため、テキストメッセージを送りすぎないことが重要だという。メッセージを増やせば短期的には収益を増やせるかもしれないが、忠実な顧客基盤を築く機会を失う可能性がある。

ジャワー氏は「日に何度も、毎日メールを送っていたら、ブランドの最新情報を届けるという趣旨を維持することは非常に難しい」と話し、「結果としてオプトアウトが増え、そうなると、せっかく築いた登録者リストの生涯価値が損なわれてしまう」と述べた。

[原文:Amid record-breaking Thanksgiving weekend e-commerce growth, there was an uninvited guest – bot traffic

Marty Swant(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)

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