セレブの「共同創業者」、 米 D2C 企業で増えているワケ:より「実質的な関与」でブランド成長にも貢献

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セレブリティは、投資においてより実践的な手法を行うようになり、自らを事実上のブランドの共同創業者やクリエイティブディレクターと位置づけるようになっている。

セレブリティがブランドを創設するというトレンドは新しいものではなく、近年は、多くの有名人が独自のブランドを立ち上げている。代表的な例として、カサミゴステキーラ(Casamigos Tequila)、フェイブルティクス(Fabletics)、オネストカンパニー(Honest Company)があり、それぞれジョージ・クルーニー氏、ケイト・ハドソン氏、ジェシカ・アルバ氏を共同創業者として名を連ねている。最近では、ラッパーのエイサップ・ロッキー氏が、パックサン(PacSun)のゲストアーティスティックディレクターに就任した。

しかし最近になって、いくつかの新興企業のブランドは、投資家や共同創業者としてセレブリティを招き入れ、その著名なパートナーをマーケティング戦略に深く関与させるようになってきている。セクシャルウェルネスブランドのモード(Maude)、ノンアルコール飲料のキン・ユーフォリックス(Kin Euphorics)、缶入りカクテルブランドのオンダ(Onda)などがその例だ。より一般的な有償のセレブリティ・スポンサーシップとは異なり、このような種類のパートナーシップでは、セレブリティの投資家がより深く関与することになる。このようなAリストに載っている人物を招き入れた新興企業は、密接なパートナーシップによりマーケティングの機会が増え、顧客へのリーチが広がり、売上が増加すると語っている。

セレブリティ共同創業者のステータスの履歴

最近のセレブリティとブランドとのパートナーシップの潮流で目立っている点は、何年も前に設立された会社であっても、「共同創業者」の肩書きが後から与えられるケースがあるということだ。キン・ユーフォリックスのような新しいブランドは、関与を望むセレブリティのファンから熱烈な問い合わせを受けたため、この役割を設けて、セレブリティがブランドの関与に真剣だということを裏打ちするために共同創業者の役職を与えることにしたという。

強壮効果のあるハーブと植物成分から作られたノンアルコール飲料のブランドであるキン・ユーフォリックスの場合、もともとは2018年にジェン・バチュラー氏によって設立された。しかし昨年9月、モデルのベラ・ハディッド氏がブランドに参加し、共同創業者とパートナーの肩書きを与えられた。

ハディッド氏は、キンと接触する前からブランドのファンで、撮影が長く続く日によく飲んでいたと話している。「当社はお金を払ってキンに関する投稿をしてもらったことがないため、そのことを聞いたときに驚いた」とバチュラー氏は述べている。バチュラー氏は、それでもハディッド氏を共同創業者として迎え入れることを決断するまでにしばらく時間が必要だったと語っている。

その頃キン・ユーフォリックスは、ノンアルコール・スピリッツの台頭や、消費者がアルコール飲料の消費を控えることへの関心を背景に、すでに急速に成長中だった。

「ハディッドは、自分が何をもたらすかを資料にまとめ、当社の使用している原料についてすでに熟知していた」とバチュラー氏は説明する。「それによって、これは彼女にとって本気の投資なんだと理解した」。このとき同社は、金額非公開のつなぎ資金を調達し、ハディッド氏を迎え入れ、バチュラー氏が共同創業者とCEOの役割を果たすことにしたことを、バチュラー氏は認めている。

「これはある意味、ブランドのリセットであり、Z世代への浸透を把握するために役立っている」とバチュラー氏は語る。「ベラ(・ハディッド氏)は現在、私と一緒にフレーバーの配合を行っている」という。最近の例では、ラベンダーをベースとするライトウェーブ(Lightwave)という飲料がある。バチュラー氏によると、ハディッド氏は移動時間が多いことから、両者はマーチャンダイズからパートナーの要請まで、あらゆることを「常時メッセージでやり取りしている」。「また彼女は、週に6~8時間をZoomのミーティングに割いている」と同氏は述べている。さらに、ハディッド氏はインスタグラムに5000万人、TikTokに460万人のフォロワーを抱えており、飲酒を止めてキンの飲料に切り替えることについてよく投稿している。

キン・ユーフォリックスの商品は現在、20カ国の1200カ所の小売拠点で販売されている。同ブランドはさらに多くの小売業者への展開を進めているが、ノンアルコールメニューを拡大しようとしているバーやレストランが増えていることから、店舗以外の場所での販売も拡大しつつある。

信頼できるインフルエンサーの声

キン・ユーフォリックス以外でも、ニッチなカテゴリーにおけるデジタルネイティブのブランドは、立ち上げ後も起業精神を持つセレブリティから注目を受けるようになってきている。

女優のダコタ・ジョンソン氏は2020年11月に、D2Cのセクシャルウェルネスブランドのモード(Maude)に、投資家および共同クリエイティブディレクターとして参画した。モードが創設されたのは2017年だ。

「彼女の実質的な関与なしに、ただ株式を受けることは避けたかった」とモードの創業者でCEOを務めるエバ・ゴイコチャー氏は米モダンリテールに語っている。「特にセクシャルヘルスにおいては、単にセレブリティの名前をブランドに結び付けるだけでは、信頼できるものとはいえないからだ」。ゴイコチャー氏はまた、ジョンソン氏の経歴、特に映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(50 Shades of Gray)』シリーズのスターであることと、セクシャルヘルスに関するオープンさから、同氏がモードのクリエイティブディレクターとして信頼に値すると判断したと言及している。

「ダコタ(・ジョンソン氏)は普段から非常に忙しく、撮影時はさらに忙しくなるが、運営については常にコミュニケーションを取っている」とゴイコチャー氏は述べている。ジョンソン氏が2020年にモードに参加して以来、ゴイコチャー氏はジョンソン氏の役割を同社のパブリックイメージに「織り込もうとしてきた」と述べている。「彼女の名前によって、以前にはなかったような場所にアクセスできるようになった」とゴイコチャー氏は語り、新たに見つかったインフルエンサーやブランドとのパートナーシップについて言及している。

セレブリティの後援を受けたブランドであることで、特にプレスやソーシャルメディアでは、多くの恩恵が自然に得られると、ゴイコチャー氏は語る。「彼女がモードについて投稿したときは、当社の通常のマーケティングキャンペーンに比べて、販売トラフィックが大きく増加する」と同氏は説明する。ジョンソン氏は現在、インスタグラムで460万人のフォロワーを抱えており、モードの8万1000人のフォロワーをはるかに圧倒している。このフォロワーの多さは、モードが過去1年間に33カ国に展開するとき、海外の顧客を獲得するため役立ったと、ゴイコチャー氏は話す。

同氏は、「一方、我々はスケジュールの課題にも取り組む必要がある」と、ハリウッド出身のエグゼクティブを抱える問題点についても語っている。「ジョンソン氏の関与を戦略的に活用したいと考えている」と同氏は説明する。たとえば同社は昨年、モードの創設記念日前後にセクシャルウェルネスのキャンペーンを実施し、いくつかのメディアで取り上げられた。その結果、同ブランドの直販サイトのトラフィックが増加したが、同氏は、その増加量がどれだけだったのかは明かしていない。

マーケティングにも参加

このように、セレブリティを共同創業者、あるいはより実践的な投資家として引き入れようとしているデジタルネイティブの新興企業が増えている。

レディ・トゥ・ドリンク・カクテルのブランドのオンダ(Onda)は、2020年7月のブランド立ち上げ前という早期段階から、女優でインフルエンサーのシェイ・ミッチェル氏を迎え入れた。

ロサンゼルスを拠点とするオンダの共同創業者でCEOを務めるノア・グレイ氏は、オンダが全米で全国展開を行った最初の2年間、ミッチェル氏がブランドの認知度を高めるために「極めて重要な存在だった」と語っている。ミッチェル氏はインスタグラムに3200万人のフォロワーを抱えており、一貫してSNSでオンダについての投稿を続けている。

ミッチェル氏は、オンダが操業を開始する前の初期に、共通の友人を通して、グレイ氏やオンダのほかの共同創業者に紹介された。「彼女はテキーラの大ファンだったため、オンダのコンセプトに興味を持ち、ブランド戦略と我々の構想に惚れ込んでくれた」とグレイ氏は説明している。

ミッチェル氏は最初に非公式のアドバイザーとして、レシピへのクリエイティブな意見や洞察を提供してくれたとグレイ氏は語る。「ミッチェルはその後、正式に共同創業者兼最高ブランド責任者として、ブランド、コンテンツ、パートナーシップ戦略を主導するようになった」と同氏は述べている。ミッチェル氏の関与は操業開始のときから投資家の注目も集めており、昨年5月のシリーズAラウンドで同社は500万ドル(約6億2500万円)を調達した

シェイ・ミッチェル氏のインスタグラム

グレイ氏は、「シェイ(・ミッチェル氏)は、オンダにとって自然な存在で、当社のターゲットであるコミュニティに浸透できる」と述べている。オンダの商品はカリフォルニアのビーチをイメージした明るい色を基調にデザインされており、ミッチェル氏自身のライフスタイルやソーシャルメディアでのイメージともマッチしていると、グレイ氏は語る。

グレイ氏は今後について、オンダは自社をハードセルツァーの代替品と位置づけ、ミッチェル氏が同ブランドのデジタルへの展開拡大や、今後のマーケティングへの取り組みに引き続き貢献するだろうと語る。「彼女は人脈が広く、オリジナルコンテンツの制作に関して、次に何が来るかを常に把握している」。

[原文:‘This is a serious investment’: More DTC brands are bringing on celebrity co-founders]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Kin Euphorics

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