TikTok でバイラルになった「L.A.クールガール」から見えたのは多様性の問題

DIGIDAY

#LAtok とタグ付けされているロサンゼルス関連のTikTokを見たことがある人は、おそらく「L.A.クールガール」コンテンツに遭遇したことがあるだろう。本記事の公開時点(8月8日時点)でこのハッシュタグは910万回視聴されている。カリフォルニア州ベニスを自分の「聖地」と呼び、ムーンジュース(Moon Juice)を愛飲し(高級スーパーの)エレホン(Erewhon)で買い物をするスリムな白人女性はそのようなTikTokの動画に心当たりがあるだろう。

視聴者の意見を二分する「L.A.クールガール」

「LAにはクールな地区が多いが、L.A.クールガールはほとんどの時間をベニスで過ごしている」。このコンセプトのクリエイターであるTikTokユーザー、リサ・ローゼン氏(@lisarosentv、フォロワー数9400人)が投稿したオリジナル動画の1本ではそう述べられている。この動画に対する反応は二分化している。「(L.A.クールガールの)感性はビーチっぽくてどこかモダン、そしてファーマーズマーケットからの新鮮な花をいつも抱えている」。以来、ローゼン氏は「L.A.クールガールウェディング」や「L.A.クールガイ」などの20本を超える関連動画から成るシリーズを制作している。各動画は2022年のロサンゼルスに住む人を描写したもので、ローゼン氏のプロフィールには「彼女が何をしているのか誰も知らない」というキャッチフレーズがある。

ローゼン氏には、動画のコンテンツ、建設的なコメントを無視していること、また時にはコメントをすべてオフにしていることに対しての批判がある。「自分を『L.A.ジェントリファイド(都市の富裕化)ガール』と呼ぶべきだ」イーストサイドの動画を削除して。そんなふうにイーストL.A.を侮辱しないで」などのネガティブなコメントが寄せられている

L.A.の文化や歴史を軽視したコンテンツ

ピコリベラからヴァンナイズまでの全地区に住むロサンゼルスネイティブの大部分にとって、「L.A.クールガール」のコンテンツはロサンゼルスの豊かで文化的な歴史を軽視し、マイノリティが主導するこの大都市における「クール」の意味を歪曲するものである。実際、米国国勢調査局の2019年の推定によるとロサンゼルス郡の人口は48.6%がヒスパニック系(複数の人種の人を含む)、25.9%が非ヒスパニック系の白人、14.5%がアジア系、7.7%が黒人だった。

「『L.A.クールガール』はテレビプロデューサーとしての自分の経験に大まかに基づいている」とローゼン氏。「ルールは『自分らしくあれ』というものだけの反抗的な感性だ。L.A.クールガールはセレブリティのスタイルとエンタテイメント業界での自分の経歴からインスピレーションを受けたロサンゼルスのクリエイティブカルチャーの一解釈にすぎない。ロサンゼルスでの経験はそれぞれ異なっている。それがこのシリーズのポイントなのだ。シリーズは誇張されていて、過度で、私の投稿にいたるまですべてがキャラクターで表現されている。どの投稿もすべて自己表現に制限はないというメッセージを体現するため」。

セントラルL.A.で生まれ育った韓国・ラテン系TikTokクリエイターのアマンダ・プルマ氏(@imamandapluma、フォロワー数6.32万人)は、ロサンゼルスでの生い立ちや地元のお気に入りの場所、そして「L.A.クールガール」カルチャーについての意見を定期的に投稿している。「L.A.クールガール」カルチャーについては50万回以上再生されたTikTok動画があるが、それにはローゼン氏に対して「どこか別の場所を植民地化してくれ」というキャプションが付いている。

しかし、ローゼン氏は「L.A.クールガール・イーストサイドエディション」というタイトルの自分のオリジナル動画に対しては「誤解」があると述べている。同氏は次のように説明している。「エンタテインメント業界で働きイーストハリウッドの近くに住む人のライフスタイルを描写している。…(だが、ほかのクリエイターに)それがイーストL.A.のジェントリフィケーション(高級化)を賛美しているかのように思われたようだ。私が描写したことはまったくそうではないのだが」。

ヴァネッサ・アコスタ氏(@fromabolivian、フォロワー数5900人)はあるTikTok動画でローゼン氏の「イーストサイド」コンテンツ(再生回数約7万回)を取り上げて次のように述べている。「ロサンゼルスを実際に築いた文化や有色人種の人々がソーシャルメディア上で無視されているのを目の当たりにしている…あのL.A.クールガールの感性のように煩わしく、過多で、やり過ぎで、押し付けがましい場合は特に」。

ロサンゼルスで生まれで育ったローゼン氏は質問に対して次のように答えている。「いろいろな視点からのフィードバックや意見が届くのはすばらしいことだ。だが、誤まった情報に基づいた反感を大量に受け取っていた。私のコメントセクションは憎悪に満ちた意見や暴力的な脅しばかりだったのでコメントをオフにした。相手は自分たちの意見が無視されているように感じたようだったが、生産的な会話ができる環境ではなかった」。

文化の盗用を非難された「クリーンガール」スタイル

しかし、その感性はTikTokの「クリーンガール」と重なるところが多い。クリーンガールはヘイリー・ビーバー氏と関連付けられることが多い。このトレンドは、髪を中央で分けて後ろに撫でつけ低い位置でまとめた団子ヘアにゴールドのフープイヤリングという外見を描写するために生み出されたものだ。「クリーンガール」スタイルも文化の盗用だと非難されている。ロサンゼルスや他地域のマイノリティコミュニティはTikTokを利用して、クリーンガールの由来についてユーザーを啓蒙している。

LA を拠点とするラテン系クリエイター、アシュリー・ナット氏(@lipstickittty、フォロワー数9.45万人)は、「フープ(イヤリング)が大きすぎた」ために学生時代にトラブルになったことについての動画を投稿した。この少なくとも37.6万回再生されたこの動画のなかで、ナット氏は「我々が長いあいだやってきたことを(白人のクリエーターたちが)『クリーンガールの感性』としてブランドし直したというのが事実だ」と述べている。

ナット氏によると、同じように「ホワイトウォッシュ」されたものにはフルーツと水、砂糖とライムジュースから作るメキシコのアグアフレスカがあるという。アグアスフレスカは先月TikTokで「スパウォーター」としてブランドし直された。元のウェルネスクリエイター、グレーシー・ノートン氏(フォロワー数54.9万人)は大反発を受けてその動画を削除している。

ソーシャルメディア上の文化的盗用のトレンドの台頭のせいで、平均的な人からはおそらく「(クリーンガールのスタイルは)かわいい、トレンディだ」と思われるだろうとプルマ氏は述べている。

「しかし、私が属するメキシコ系コミュニティと黒人コミュニティの女性たちがゴールドフープを着け、髪を後ろになでつけたヘアスタイルに、ゴールドのチェーンやネームプレート、アクリルネイルをしていたときは『ゲットー』だった。都市部以外で我々の文化は希薄になっていると思う。イーストL.A.での自分の経験からいうと、2000年代に女子がかわいく見せるにはそのスタイルだったが、(当時)メディアからは怠惰でゲットーで安っぽいスタイルだと呼ばれた」。

プルマ氏が「クリーンガール」の感性についてもっとも問題だと考えているのはゴールドジュエリーの悪用だという。

「ジュエリーに隠された意味は変化して薄められてしまった」と同氏。「少なくともメキシコ系コミュニティではジュエリーは赤ん坊のときに最初にもらうものだ。ゴールドのイヤリングやブレスレット、ネームプレートなどをもらうのはほとんど通過儀礼。誰でも好きなものを身に着ければいいと思う。でも、それがスタイルとして受け入れられる以前に先んじてその外見を取り入れて、ネガティブな批判に対応した女性たちがいた事実を忘れないことは重要だ」。

有色人種の視点を知る努力の必要性

世界的に有名なビューティブランドやファションブランドのなかには最近になってもインクルーシビティに苦戦しているところがあるのは知られているところである。グロシエ(Glossier)は2020年に元従業員から人種差別について発言されて非難を受け、当時の創業者であるエミリー・ワイス氏が改善を約束した。同社は今年初めに80人以上の従業員を解雇している。また、リボルブ(Revolve)は、2018年にふっくら体型の女性や有色人種女性を表現しなかったとして批判された。その後、リボルブはブラックライブスマター(Black Lives Matter)に迅速に対応しなかったため、2020年に社会的正義活動に100万ドル(約13億円)を寄付するよう求められた。リボルブはインクルーシビティの認識が欠けていたことで批判されたとき、「失敗」を認め「今後改善する」と述べた。

プルマ氏は大規模なプラットフォームを持つコンテンツクリエイターとしての自分の役割に関して次のように述べている。「マイノリティに害を及ぼすトレンドを説明したり分析する動画を共有している。有色人種の視点を知りたいと思っている人たちにその機会を提供しているので、視聴者たちは変化をもたらしてくれると信じている」。

[原文:TikTok’s ‘LA Cool Girl’ has a diversity problem

DAHVI SHIRA(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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