加工フィルター の「 ボールドグラマー 」に反応したココカインドの新たな取り組み

DIGIDAY

多くの人がそうだったように、創業8年のスキンケアブランド、ココカインド(Cocokind)の創業者プリシラ・ツァイ氏も今年の3月に「ボールドグラマー(Bold Glamour)」という加工フィルターを発見した。彼女はそれに対する反応として、自分のブランドのインスタグラムのアカウントで31万8000人のフォロワーに向けてリールを投稿している。その投稿でツァイ氏は、動画の半分でフィルターをオンにし、もう半分でオフにした。

「このような画像を目にしたり、このようなフィルターを使用している人を見たりすることは、特にソーシャルメディア上の若い世代に実際の結果をもたらす」とツァイ氏はその投稿で述べている。「ただ、どんなコンテンツを取り入れるのか、どんな画像を加工するのかは、主体的に選択できるということを思い出してほしい。日頃の自分に対する気持ちを、このような美の基準に惑わされる必要はない」。

この最初の投稿は、ブランドのフォロワーから肯定的な意見を多く得たとツァイ氏は言う。「間違いなく私たちのコミュニティの共感を呼ぶメッセージだった」。ココカインドのブランド責任者であるリン・コステルニー氏は、「ココカインドでは、顔を変化させる美容フィルターはまったく使用したことがなく、肌のレタッチも一切行っていない」と述べている。

投稿のコメント欄には、このメッセージを賞賛し、フィルターがメンタルヘルスに与える悪影響についてのツァイ氏の懸念に共感する声が寄せられた。たとえば、ある人はこんなコメントを残している。「ソーシャルメディアのフィルターは、気づかないものもあれば、無邪気な楽しみのように見えてしまうものもあるが、若い世代に本当に現実的な影響を及ぼしている! 私の姪たちはフィルターなしで写真を撮ることがほとんどない。こうした会話はとても重要だし、必要だ!」

SNSでのフィルター使用に対抗するキャンペーン

それから2カ月が経ち、いまココカインドは行動を起こしている。同ブランドは非営利団体ハーフザストーリー(Half The Story)と提携し、人気のあるドラマチックなこのフィルターへの直接的な反応として#BoldEnough(ボールドはもうたくさん)という誓約を5月1日にローンチした。5月1日はメンタルヘルス啓発月間がスタートするという意義のある日付だ。今回のキャンペーンの開始にあたり、ココカインドは100人以上のクリエイターに、ベストセラーのセラミドバリアセラム(Ceramide Barrier Serum)とキャンペーンについて説明するポストカードを発送している。

ボールドグラマーのフィルターに反応した美容ブランドは、ココカインドが初めてではない。ダヴ(Dove)は、ボールドグラマーに背を向けようと働きかける#TurnYourBackという反対キャンペーンをローンチしている。3月のGlossyポップニュースレターでも報告したように、トゥーラ(Tula)もフィルターへの反応をTikTokに投稿している。またアーバンスキンRx(Urban Skin Rx)は、キャンペーンを発表したココカインドのインスタグラムの投稿に「#BoldEnoughを支持する」とコメントしている。

今回のキャンペーンには慈善的な要素もある。ココカインドは、セラミド美容液の5月の収益の100%、最大2万ドル(約270万円)をハーフザストーリーに寄付する予定だ。

3月から5月にかけて、ツァイ氏と彼女のチームは今回の誓約を作るために、ソーシャルメディアが特に10代の若者のメンタルヘルスに与える影響についての統計を取った。その過程でツァイ氏は、人々がいたるところに存在するフィルターに対していかに無意識でいるかに気づいたという。「意識してスクロールしていたときに、これは大変だと思った。文字通り見ていた10本のストーリーのうち、8本にフィルターが使われていた」。

フィルターは若者のメンタルヘルスに多大な悪影響を及ぼしている

ハーフザストーリーはラリッサ・メイ氏が設立した非営利団体で、説明によれば「次世代とテックの関係をエンパワメントすることを使命とする」。2017年には、ココカインドの資金提供プログラム「インパクトファウンデーション」の一環であるヴァンダービルト(Vanderbilt)助成金の受領団体となった。ココカインドのサステナビリティ・アドバイザー、ソフィア・リー氏もこの取り組みにパートナーとして参加している。

ツァイ氏、メイ氏、リー氏の3人はそれぞれ、フィルターは見た目以上に影響を及ぼすと強調した。「フィルターを使う一人ひとりが、毎回使用するたびにエコシステム全体に影響を及ぼしている」とツァイ氏は述べている。ココカインドのオーディエンスにこの問題の重大さを認識してもらうには、統計情報を含めることが重要だったと彼女は言う。同ブランドは5月1日のインスタグラムのストーリーで、ペアレンツトゥギャザー(ParentsTogether)が2021年に行った調査による統計から「10代の61%が美容フィルターによって自分の容姿がよくないと感じると答えた」「美容フィルターを毎週使用している10代は、そうでない人にくらべて美容整形に2倍関心を抱いている」といった事実をいくつか共有している。

メイ氏は、フィルターは「ドミノ効果」への「窓」だと言う。「(一部の例では)ネット上のフィルターをきっかけに娘が摂食障害になり、今は施設に入っているという親と話をすることもある。それが私たちが生きている現実だ」。ココカインドは、約200人のアンバサダーに今回のキャンペーンを共有するよう依頼し、全員がこの誓いを立てたという。5月1日までに数人のアンバサダーがすでに自身のインスタグラムで、このキャンペーンが自分にとってどのような意味を持ち、なぜソーシャルメディア上でフィルターを使用しないことを誓うのかを投稿している。

顔を劇的に変化させ、メイクアップで覆うボールドグラマーが、なぜそこまで有害なのかについて、リー氏は次のように詳しく語った。「大きな目と白い肌という西洋の美の基準は、文化的かつ植民地的な色眼鏡をいつまでも永続させている。それが美の頂点であり、製品を買ったり、手術を受けたりしなければならないのだと、私たちはずっと思い込まされている。有色人種や社会から疎外されているコミュニティの人々を阻んでいる」。これが「スナップチャット醜形障害(Snapchat dysmorphia、加工した顔に慣れてしまい現実の自分を受け入れられなくなる精神疾患)」の台頭につながっており、また#BoldEnoughキャンペーンもこれに対抗したいと考えている。「整形外科医は、かつて患者はセレブリティの写真を持ってきて、こういう鼻になりたいと言っていたが、今はこうした加工フィルターをかけた自分の写真を持ってくるようになったと話している」と、 リー氏はメディアでの医師のコメントを引用した。

ミッションの認知度を高め、コミュニティに行動変容を促す

5月中は、ココカインドはブランドのインスタグラムのストーリーで投票を行うなど、フォロワーに行動を起こすよう促していく予定だ。ツァイ氏いわく、投票の結果はインスタグラムやブランドのニュースレターで共有する。これまでに同ブランドは「フィルタリングされたコンテンツに出会ったとき、意識的に認識しているか?」「ソーシャルメディアで見たものと自分を比較するか?」といった質問をコミュニティに投げかけている。

5月2日には、ブランドのミッションを認知してもらうため、インフルエンサーや俳優、ブランドの友人など、注目すべきゲストを招いたディナーをニューヨークで主催した。そのイベントでは、32名のゲストがその場で誓約にサインをした。ココカインドによると、同ブランドのコミュニティの数千人のメンバーがすでに誓約に署名している。

ココカインドの最初の目標は、できるだけ多くの人に誓約に署名をしてもらうことだ。メイ氏いわく、長期的には、ほかのブランドにも誓約への署名に関わるよう依頼するかもしれない。ブランドはフィルターには頼っていなくとも、Photoshopを使って非現実的な美の基準を永続させている。「夢のシナリオ」では、ほかの美容ブランドや創業者、ソーシャルメディアマネージャーが参加することになる、とメイ氏は述べている。

[原文:Glossy Pop Newsletter: The Bold Glamour filter inspired Cocokind’s new campaign]

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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