TikTok のダイレクトレスポンス機能、パフォーマンスマーケターの心には響かず

DIGIDAY

メタ(Meta)のさまざまな問題(その多くは、Appleによる致命的ともいえるアンチトラッキングに関するアップデートに端を発している)に対する答えが見つかることを願っているダイレクトレスポンスマーケターたちだが、TikTokが、少なくとも今は、その答えを持っているわけではないと、パフォーマンスマーケターたちはいう。

パフォーマンスマーケティングエージェンシー、テイク・サム・リスク(Take Some Risk)の創業者で、同社戦略部門の代表を務めるドゥエイン・ブラウン氏は、「もうひとつのペイドソーシャルであるという理由で、多くのマーケターがTikTokに向かっている」と語る。「そこが最高の場所になることはないかもしれないが、予算を投じることはできる」。

TikTokはこの2年間で、ソーシャルメディア界の申し子となり、そのマーケティングファネルが成長するにしたがって、獲得できる広告費のシェアも大きくなってきている。ブランド認知広告費でのシェアはかなりのものであり、そんな同社が、10月上旬に開催された毎年恒例のプロダクトサミットで、パフォーマンスプロダクトのフルスイートを発表し、ダイレクトレスポンス広告費の獲得に乗り出した。自動化ツールやショッピング広告からなるこのスイートは、パフォーマンスマーケターたちに言わせれば、正しい方向への第一歩なのだという。

彼らによれば、TikTokのダイレクトレスポンス機能はまだ合格レベルには達していない。つまり、売上を生み出すことを目的とする広告費は、いまもメタやGoogle、Amazonに偏っているのだ。「広告売上の観点から見れば、この3社が広告プラットフォームのビッグ3であるのは当然だろう。ユーザーがそこを訪れ、広告をクリックして物を買うのだから。TikTokではそうはいかない」と、ブラウン氏は語る。

無意味な比較

パフォーマンスマーケティング企業、ディジショップ・メディア(DigiShop Media)のCEO、カティア・コンスタンティン氏は、ダイレクトレスポンス機能に関してメタとTikTokを比べることは、いわゆる「リンゴとリンゴの比較」ではないと話す。「TikTokがこれまで、ペイツープレイタイプの環境でオーガニックとペイドの2つを結び付けてきたことからわかるのは、おそらくそこにはもっとチャンスがあるということだ。しかし、それは従来のペイドプラットフォームのありようとは少し違っている」。

成長に関するTikTokの現状が比較されるべきは、初期のSnapchat(スナップチャット)やPinterest(ピンタレスト)であり、広告主が容易にダイレクトレスポンスマーケティングを行えるようになるまでには、当時の両社には、さまざまな試行錯誤があったとコンスタンティン氏は話す。もしそうなら、TikTokがその足場を見つけるまでには、いくらか時間がかかることになるだろう。

エージェンシーのグプタ・メディア(Gupta Media)にとって、ダイレクトレスポンスチャネルとしてのTikTokはまだ実験段階にある。同エージェンシーのチームは毎週、TikTokと電話会談を行い、広告プロダクトに関する最新情報を入手している。しかし、その広告費はというと、あるeコマースクライアントの広告費のうち、TikTokに割り当てられる予算が30%だとすれば、メタのプロダクトはそれを大きく上回る平均50%であると、グプタ・メディアのエージェンシーアカウントディレクター、サラ・ノエル氏は話す。

TikTokのトラッキング機能について、ノエル氏は「ピクセルが新しくなっている」と語る。「TikTokは現在も、購入の見込みのあるユーザーへの最適化を目指して、マッチレートを高める方法、最適化アルゴリズムの性能を高める方法の発見に取り組んでいる」

パフォーマンスマーケティングエージェンシー、ホームステッド・スタジオ(Homestead Studio)の創業者、ザック・スタック氏によれば、同エージェンシーは現在も、クライアントの広告予算の80%をFacebookとインスタグラムに回しているという。メタ以外に関しては、TikTokよりもGoogleとYouTubeへの支出を増やしているが、その理由は「大多数のブランドにとって、TikTok広告は過大評価されている」と、スタック氏は述べる。

DIGIDAY+リサーチによれば、51%のエージェンシーが、TikTokにはクライアントのマーケティング予算のごく一部しか割り当てていないと回答した。TikTokには一切支出していないと回答したエージェンシーは25%だった。

昨年、データプライバシーに対する取り締まりが開始されてからというもの、広告主は藁をもすがる思いでデータを探し出し、メタのオーディエンスターゲティング機能を再現しようと必死になっている。「Facebookとその広告マネージャーにいら立ちをぶつけている広告主もいるが、Facebookに非はない。彼らのフラストレーションの原因は、手に入るはずのデータを提供しないAppleのアップデートだ」と、ブラウン氏は語る。

パフォーマンス広告費をめぐる争い

TikTokもただ手をこまねいているわけではない。10月に開かれたグローバルプロダクトサミット「TikTokワールド(TikTok World)」では、パフォーマンスマーケティングのための最新ツールがいくつも発表された。ショッピング広告や、クリエイターマーケットプレイスのアップデート、自動化ツールに加えて、「フォーカスド・ビュー(Focused View)」も披露された。これは、ユーザーが広告を実際に見たときだけ、ブランドに料金の支払い義務が生じる新機能だ。また、実際にはTikTokのサービスではないが、TikTokアプリでバイラル化すれば、商品の売上が急増するという「TikTok・メイド・ミー・バイ・イット(TikTok Made Me Buy It)」現象を経由して、同プラットフォームにおけるダイレクトレスポンスの道を見いだしたブランドも数社ある。

TikTokの収益化製品戦略およびオペレーション部門でグローバルヘッドを務めるジャイー(レイ)・ツァオ氏によれば、同プラットフォームの目標は、ブランドが「発見と行動の距離を縮める」のを支援することだという。この一手は、呼び込めるパフォーマンス広告費の増加が十分に見込める一手だ。昨年、営業損失が3倍以上に膨らんで70億ドル(約1兆400億円)を超えたTikTokにとっては、非常に大きな意味を持つ戦略であると、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は報じている。

TikTokを、あらゆるメディアミックスにおけるラインアイテムとして推し進めるのは、広告主のFOMO(チャンスを逃すことへの恐れ)かもしれないと、ブラウン氏は話す。「とりわけ景気が後退しつつあるときには、ブランドにとって必要なのは、時間とエネルギーの集中に本腰を入れることだ。必ずしも、どこにでも顔を出す必要はない」と、同氏は語る。「TikTokを機能させるには、広告という意味において、コンテンツを数多く世に送り出さなければならない。もしそれなりの頻度でそれができないなら、おそらくTikTokにはまだ進出すべきではないということだろう」。

[原文:TikTok’s direct response capabilities don’t resonate with performance marketers — yet

Kimeko McCoy(翻訳:ガリレオ、編集:黒田千聖)

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