DIGIDAYリサーチ: サブスクリプション 事業に積極的な大手パブリッシャー、中小パブリッシャーは?

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サブスクリプションは、パブリッシング業界に古くからある収入モデルだ。しかし、デジタル時代においては、容易なビジネスでは決してない。業界大手が依然としてサブスクリプションに大きく依存している一方、中小のパブリッシャーはそれほど熱心ではないようだ。

この傾向は、DIGIDAYリサーチが112人の業界当事者を対象に実施した最新の調査の結果にも如実に表れている。

米DIGIDAYの調査によると、過去2年間の傾向を見る限り、パブリッシャーのサブスクリプション収入は全体として概ね安定しているようだ。「少なくとも、なにがしかのサブスクリプション収入がある」と回答したパブリッシャー関係者は、2021年第1四半期は60%、2022年第1四半期は58%、直近の2023年第1四半期は62%だった。

売上全体に占めるサブスクリプション収入の割合について「大きい」と回答した人の比率がやや減少している一方、「小さい」という回答は着実に増えている。2023年第1四半期に、売上全体に占めるサブスクリプション収入の割合が「大きいまたは非常に大きい」と回答したパブリッシャー関係者は21%で、2021年第1四半期の27%よりも若干減少。また、今年の第1四半期に「小さいまたは非常に小さい」と回答した人の割合は29%で、2年前の20%から増加した。

もっとも大きな割合は「サブスク収益がまったくない」

ここで注目したいのは、「サブスクリプション収入がまったくない」という回答が一貫してもっとも大きな割合を占めていることだ。たとえば今年の第1四半期も、サブスクリプション収入の割合を「なし」と回答したパブリッシャーが38%でもっとも多い。

しかし、経済の好悪にかかわらず、サブスクリプション事業を有望視するパブリッシャーは少なくないようだ。前述の通り、売上全体に占めるサブスクリプション収入の割合に関しては、「なし」という回答が最大の比率を占めてきた。一方、今後、サブスクリプション事業にどの程度注力するかという問いに対しては、今後数ヶ月に「大きくまたは非常に大きく」注力するという回答が歴史的に最大を占めてきた。ただし、この割合は徐々にではあるが着実に減少している。

今年の第1四半期に、今後6ヶ月間にサブスクリプション事業の拡大に「大きくまたは非常に大きく」注力すると回答したパブリッシャー関係者は39%だった。昨年第3四半期の43%から若干減少している。そしてこの数字も、2021年第1四半期の44%からわずかながら減少しており、ここ数年、減少傾向が続いていることが分かる。

さらに、サブスクリプション事業に「非常に大きく」注力するという回答だけに限れば、2021年第1四半期は33%、2023年第1四半期は23%となっており、その減少幅は注目に値する。

また、今後6ヶ月間にサブスクリプション事業に注力する度合いを「中くらい」と答えたパブリッシャー関係者の割合は、過去2年のあいだに着実に増加している。この「中くらい」という回答は2021年には9%にすぎなかったが、2022年には12%、2023年には17%に伸びている。

大手のパブリッシャー(昨年の売上が5000万ドルを上回る事業者)に目を向けると、サブスクリプションが売上の重要な柱であることが分かる。そしてその重要性はこの1年で大幅に増加した。

2022年第1四半期、大手パブリッシャーに勤務する回答者のうち、「少なくともなにがしかのサブスクリプション収入がある」と答えた人は3分の2だった。2023年第1四半期には、この割合が78%に急伸している。

サブスク事業で収入を得るパブリッシャー自体は大小問わず増えている

サブスクリプション事業で収入を得るパブリッシャーの数は、サブスクリプション収入の大小にかかわらず、どのカテゴリーでもほぼ均等に増えている。逆に言えば、大手パブリッシャーに関する限り、売上全体に占めるサブスクリプション収入の割合ごとに見た場合、突出して増えているカテゴリーは見当たらない。

大手パブリッシャーに関する限り、もっとも大きく伸びたのは、サブスクリプション収入の割合が「非常に小さい」パブリッシャーと、「中くらい」のパブリッシャーだ。いずれのカテゴリーも、2022年第1四半期の15%から、2023年第1四半期には20%に増えている。一方、サブスクリプション収入の割合が「非常に大きい」という回答は、2022年第1四半期が15%、2023年第1四半期が10%で、若干減少している。

また、「サブスクリプション収入の割合」と「サブスクリプション事業への注力」を示すグラフは、ちょっとした鏡像を描いている。大手パブリッシャーに勤務する回答者のうち、今後6ヶ月間にサブスクリプション事業の拡大に向けて「なにがしかの努力をするつもりだ」と答えた人は、昨年と今年でほとんど変化していない。2022年第1四半期は77%で、2023年第1四半期は78%だった。一方で、同期間に大きく変動している項目もいくつかある。

たとえば、サブスクリプション事業に「大きく」注力すると回答した大手パブリッシャーは、2022年第1四半期には21%だったが、2023年第1四半期にはわずか10%に急減した。ところが、「非常に大きく」注力するという回答は、2022年第1四半期の25%から、2023年第1四半期の37%へと大幅に増えている。

同様に、サブスクリプション事業に対する注力の度合いを「非常に小さい」と答えた大手パブリッシャーは、昨年の第1四半期は15%だったが、今年の第1四半期は5%にまで落ち込んでいる。また、サブスクリプション事業に対する注力の度合いを「小さい」と答えた大手パブリッシャーは、2022年第1四半期は10%だったが、2023年第1四半期には20%に急増した。

一方、中小のパブリッシャー(昨年の売上が1000万ドル未満の事業者)は、1年前よりもサブスクリプション収入への依存度が低くなっている。

2022年第1四半期、中小のパブリッシャーに勤務する回答者のうち、「少なくともなにがしかのサブスクリプション収入がある」と答えた人は45%だった。2023年第1四半期には、この割合が39%に下落している。今年「少なくともなにがしかのサブスクリプション収入がある」と答えた大手パブリッシャーが4分の3以上(78%)に上ることを考えれば、この39%(3分の1程度)はいかにもささやかな数字に見える(しかも減少傾向を示している)。

サブスクリプション収入のある中小のパブリッシャーのうち、売上全体に占めるサブスクリプション収入の割合が「小さい」と回答した人は、この1年で有意な増加を遂げている。2022年第1四半期にはわずか4%にとどまった「小さい」という回答が、今年の第1四半期には11%に増加した。

一方、売上全体に占めるサブスクリプション収入の割合が「大きい」または「非常に大きい」と回答した中小のパブリッシャーは、昨年1年でわずかに減少した。2023年第1四半期に、サブスクリプション収入の占める割合を「大きい」と回答した中小のパブリッシャーは8%で、1年前の12%から減少した。また、「非常に大きい」という回答も、2022年第1四半期の8%から、2023年には3%にまで落ち込んだ。

中小のパブリッシャーでは、この1年でサブスクリプション収入への依存度が低下した一方、サブスクリプション事業に注力するという回答はほとんど変動していない。具体的には、中小のパブリッシャーに勤務する回答者のうち、程度の差こそあれ、サブスクリプション事業に注力すると答えた人は、今年の第1四半期は69%で、昨年の第1四半期は67%だった。ごくわずかな差はあるが、大きな割合を占めていることに変わりはない。

サブスクリプション事業に「大きく」注力すると回答した中小のパブリッシャーは注目に値する。2023年第1四半期は17%で、前年同期の12%からわずかながら増えている。また、「非常に大きく」注力するという回答は、昨年第1四半期の26%から、今年第1四半期の19%へと減少した。

[原文:Digiday+ Research deep dive: Large publishers hedge their bets on subscriptions while small publishers back away

Julia Tabisz(翻訳:英じゅんこ、編集:島田涼平)

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