Yahoo! Data Xross が実現する「マーケティングチェーン構想」の全貌:Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE レポート

DIGIDAY

ヤフーは、ファーストパーティーデータを活用したマーケティングソリューションビジネスに乗り出す。

セキュアかつ高精度なデータマーケティングが求められるポストCookie時代を見据え、ヤフーが2023年春にローンチするのが、Yahoo! Data Xross(ヤフー・データ・クロス)。ヤフーが保持するデータと、広告主の保有するファーストパーティーデータを掛け合わせる「マーケティングチェーン構想」に基づいた、共創型のソリューション・プラットフォームだ。

ヤフーは、マーケティングにおける市場分析・ターゲット選定・効果検証のPDCAを運用するためのデータマーケティングソリューション(DMS)を提供、2021年度には6000社が利用するまでに拡大した。今回発表された新サービスのYahoo! Data Xrossは、ヤフーのデータと、広告主の顧客IDベースを基盤としたデータを掛け合わせることで、より精度の高いマーケティングソリューションを生み出すというもの。

Yahoo! Data Xrossは、広告主自身がヤフーのデータと広告主のファーストパーティーデータを活用でき、さらにソリューションを開発できるオープンなプラットフォームである。ユーザー保護の観点から、Cookie規制やATT/IDFA制限、改正個人情報保護法などさまざまな制約があるなか、ファーストパーティーデータを管理するカスタマーデータプラットフォームにおいて国内シェアNo.1(※1)のトレジャーデータと提携することで、プライバシーセーフな環境でのオープンなデータ利活用を実現する。

データをチェーンのように紡ぐ

「ヤフーのデータと広告主のデータを、チェーンのように紡ぎ合わせながら、広告主の課題を解決していく。一方でプライバシーはしっかり守らなければならない。我々のマーケティングチェーン構想は、この2つの課題を一緒に解決していこうとするものだ」と話すのは、ヤフーのマーケティングソリューションズ統括本部でデータマーケティング本部長を務める鍵山仁氏だ。「マーケティングオートメーションやCRMといったアクションに精緻な活動をもたらすという点で、企業にとって今後も重要な位置づけとなるCDP(顧客データプラットフォーム)。そのCDPの活用先であるYahoo! Data Xrossは、広告も含めたマーケティングDXを進化させる、非常に重要なプロダクトになる」。

鍵山氏は、ヤフーが6月10日に開催した「Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE 2022」に登壇。「ヤフーが描くZホールディングスグループとしてのデータ利活用の未来 ーMarketing Chain構想ー」と題したセッションの冒頭で、Yahoo! Data Xrossの概要と、同サービスを用いたマーケティングチェーン構想について明かした。同氏は、広告主側が自社のデータを自社で計測し、分析レポートを開発できるYahoo! Data Xrossのコンセプトを「BYOD(Bring Your Own Data Solution)」と表現するとともに、「プライバシーに配慮しつつ、オープンでスケーラビリティの高いサービスにしていく」と強調した。


Yahoo! Data Xrossによるマーケティングチェーン構想について説明する鍵山氏
※1 出典:「ITR Market View:メール/Webマーケティング市場2022」国内CDP分野におけるベンダー別売上金額シェア

鍵山氏に続いて登壇したヤフー マーケティングソリューションズグループ 事業開発室長の森岡康一氏は、マーケティングチェーン構想の未来像として、「ヤフーのデータにとどまらず、Zホールディングス全体のデータをクロスさせた「Z Data Xross(※2)」の世界も構築したい。グループのチャネルをフル活用することで、顧客のライフイベントとしっかり繋がっていくようなビジネスを描いていきたい」と言及。その実現に向け、「媒体としてのヤフーではなく、皆様のビジネスの成長を加速させる共創型ビジネスのパートナーとなる。皆様の知見とデータを組み合わせ、データマーケティングの新しい時代を作っていきたい」と呼びかけた。


Yahoo! Data Xrossの進化について話す森岡氏
※2「Z Data Xross」は仮称であり、今後変更する可能性があります。また、Z Data Xrossにて利用可能なデータ項目については、今後変更する可能性があります。

セッション後半のパネルディスカッションでは、トレジャーデータ創業者兼CEOの太田一樹氏、LINE上席執行役員広告・法人事業統括マーケティングソリューションカンパニーCEOの池端由基氏、ヤフー 常務執行役員 メディアグループ長 マーケティングソリューションズグループ長の片岡裕氏が登壇。森岡氏進行のもと、ユーザーや広告主が安心・安全なデータ利活用を実現するためには何が求められているのか? ヤフーやLINEは今後どのようなデータマーケティングチェーン構想を描いていくのか? といったテーマについて議論を行った。

以下は、パネルディカッションの模様を要約したものである。

◆ ◆ ◆

――これからの企業のデータ利活用の未来とは?

太田一樹氏(以下、太田) 大きく分けて3つのトレンドがあると考えている。1つ目は、どんなビジネスの顧客ジャーニーも、およそ60%がデジタルの世界で起こっているということ。この数字はパンデミック前のおよそ3倍になっている。なおかつZ世代を中心に若い世代のデジタル比率も上がってきている。そのため、どのようなビジネスであれ、顧客理解のためにデータを活用し、より良いユーザー体験を提供することが重要になる。

2つ目は法規制。全世界で約200カ国中150カ国が消費者のプライバシー保護に関する法案を確立している。これに対応するため、企業側は顧客データを1カ所で正しく管理する必要がある。

3つ目はクッキー規制。サードパーティーCookie、IDFAが廃止されるなかで、企業側はファーストパーティーデータを持たざるを得なくなっている。そこで、CDPの存在が非常に重要となる。現在、多くの広告主がそのCDPを使って顧客データを管理し、規制に対応している。今後はマーケティング、営業、カスタマーサポートなどさまざまな部門でデータ利活用をしていくというのが、共創型ビジネスの根源になると思っている。


(左から)森岡氏、池端氏、太田氏、片岡氏

――ヤフーやLINEのデータマーケティングの今後は?

池端由基氏(以下、池端) 世の中の顧客や消費者の変化を捉える必要が出てくる。そのため、太田氏が指摘したように、データを利活用したマーケティングが非常に重要になってくる。我々LINEのようなプラットフォームは、データを正しく管理するだけでなく、その先となる、データをどのように利活用して、顧客とのコミュニケーションをどう変えていけるのか? ユーザーの体験を豊かにするためには何ができるか? を考えなければならない。多くのタッチポイントを保有しているLINE、Zホールディングスだからこそ、そこを目指すべきだと考える。

片岡裕氏(以下、片岡) 我々のポータルやプラットフォームにおいて取得したデータと、クライアントの持つファーストパーティーデータを重ね合わせていくことで、初めてビジネスが成り立つと考えている。データは、あらゆる意思決定の根幹になりつつあり、ユーザー体験を向上させるうえでも必要不可欠だからだ。そのためにはまず、顧客が安心・安全にデータを預けることができる環境づくりをしたい。

――GAFAなどのメガITが日本においても収益を上げている。それに対してどのように戦っていくのか?

太田 コマースの世界で、Amazonエフェクトという言葉があるように、Amazonが広告主を集中管理するようなプラットフォームを形成してきたが、そこにAmazonキラーと呼ばれるShopifyのようなプレーヤーが台頭し、広告主がそれぞれのプラットフォームで消費者との直接的な関係を構築しはじめている。

それと同じような動きを、デジタルマーケティングや広告の世界においても起こせるのではないか。GoogleやFacebookは大量のオーディエンスデータを保持しているが、同時に広告主側も非常に深いデータを持っている。Yahoo! Data Xrossを使うことによって、広告主がデータの持つ「重み」を自分たちの方に引き寄せ、自らプラットフォームの外に出て行くような世界観を作れたらいいのではと考えている。

池端 Zホールディングスのなかには、各事業領域で非常に優秀なサービスを展開している企業が多く存在している。そのため、どのようなコラボレーションで価値を提供していけるのかというのを、大前提として考える必要がある。

今後、データそのものが付加価値ではなく前提条件になっていくなか、他社やほかのプラットフォームにはない我々独自の強みは、「オフライン」であると考える。LINEが提供し、広告主が活用するLINE公式アカウントは、オフラインの集客にも非常に効果的だ。誰がどこで何を頼んだのか、買ったのかなどの購買データ、これまで可視化することのできなかったデータに、商機や可能性を感じている。それは、Zホールディングスのなかにおいても、我々ならではの価値として皆さんと共有できるものになるのではないか。

片岡 グローバルなメガIT企業と戦える相手として、ヤフーやLINEを選んでいただけるポイントは何かというと、我々にはメディアや検索、金融、決裁、LINE公式アカウントなどの各種自社サービスがあり、それに関連するオンライン・オフラインそれぞれのデータがあるということだ。それらをきちんと繋げて価値にしていくことが重要だ。

――データビジネスの可能性とは?

片岡 データはさまざまな事業の意思決定につながる存在だ。データを利活用するビジネスという意味では、マーケティングにおけるプロモーションだけでなく、さらに広い領域でもパートナーとなれるような環境を作っていきたい。

太田 トレジャーデータはいま、「コネクテッドカスタマーエクスペリエンス」という概念を提唱している。これは、顧客に対面するすべてのシステムや人は、CDPのような顧客データにアクセスできるようにすべきだというもの。私が使っているインターネットプロバイダサービスで不具合があり、コールセンターに電話をかけたとき、本人認証のための電話番号や利用プランについて聞かれたり、担当部門に転送され、再び電話番号を聞かれる、といったことがあった。このときの体験が生かされた概念である。Zホールディングスと我々のサービスであれば、たとえばLINE経由でコールセンターに電話すれば、本人認証は必要ない、といった世界観も実現できるだろう。

CDPについては、顧客データを使った需要予測によるサプライチェーンの最適化や、店舗スタッフの人員の調整など、さまざまな活用事例が出てきている。今後はマーケティングだけに捉われず、さまざまなビジネスラインにおいて我々のソリューションをすべてクロスすることで、より便利な社会の実現を目指したいと思う。

「ヤフーが描くZホールディングスグループとしてのデータ利活用の未来 ーMarketing Chain構想ー」セッション全編はこちらからご覧ください。
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Written by DIGIDAY Brand STUDIO
Image courtesy of ヤフー

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