ブランドは、ユニークなコンテンツでオーディエンスを惹きつけるためにライブストリーミングプラットフォームのTwitch(トゥイッチ)を活用している。フランスの美容ブランド、クロラーヌ(Klorane)のTwitch戦略は「ボタニクエスト(BotaniQuest)」と呼ばれる教育的な内容とゲームストリームに注力したものだ。ボタニクエストには、インフルエンサー兼ストリーマーのバゲラ・ジョーンズ氏が登場して、ビデオゲーム『レッド・デッド・リデンプション2(Red Dead Redemption 2)』をプレイし、ゲーム内で植物を探した。クロラーヌは天然成分を使った製品が中心であり、その点がこのコラボで強調された。オーディエンスの75%が3時間のライブストリームを最後まで視聴した。
Twitchを利用して若いオーディエンスにリーチ
創業58年のクロラーヌは、この2年間、インスタグラムライブとTikTokを使って若いオーディエンスの関与に注力している。同社はローカライズされたソーシャルメディアアカウントを運営している。たとえば、クロラーヌフランスのインスタグラムには6.6万人以上、TikTokには3000人を超えるフォロワーがいる。クロラーヌは2021年にTikTokを開始したが、2023年に向けてオーディエンスとつながるもっと直接的な方法を模索していた。同社はインフルエンサーエージェンシーのウィー・アー・ソーシャル(We Are Social)と連携、今回のゲームを通して若いオーディエンスと関与することができた。デルモコスメティクス(皮膚科学に基づく研究により開発されたスキンケア)ブランドであるクロラーヌの主な購入客ベースは40歳以上である。
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クロラーヌのデジタルマーケティングマネージャー、アナイス・パラントエン氏は「これはデルモコスメティクスブランドによる最初のTwitchアクティベーションの1つだ」と語っている。同氏によると、クロラーヌは、Twitchライブストリームでインフルエンサーに自社製品について語ってもらうことで、定番の(インスタグラムライブやTitTokを活用した)戦略を単に繰り返さないようにしたという。2023年3月の時点で、Twitchの月間アクティブユーザー数は1億8000万人だ。
製品の成分と関連する植物テーマのクエスト
パラントエン氏は「『レッド・デッド・リデンプション 2』のライブストリームは、Z世代が気にかけている自然について語るのに最適な場所だった」と述べている。「ゲームプレイマップはどれも本当に素晴らしい。ゲーム制作者が美しくて現実的な環境を作り上げてくれたので、ゲーム環境と現実には類似点がある」。ライブストリームはジョーンズ氏のコミュニティのゲーマーを対象に、同氏のアカウントでのみ宣伝された。
ウィー・アー・ソーシャルのビジネスディレクターであるクロエ・ラーミュリエ氏によると、このキャンペーンの出発点は、人々が写真に写っている植物を認識できないという「植物失明(植物について何も知らない)」というアイデアだった。「このアイデアには、植物失明を解決しながら、クロラーヌにとって望ましい状況を生み出し、このブランドに対するZ世代の考えを一新させるという目的があった」。
キャンペーンの成功は入念な準備と実行にかかっていた。クロラーヌはゲームについて語るのにふさわしいインフルエンサーの選択を含め、キャンペーンの準備に6カ月を費やした。ジョーンズ氏には熱心なファンがおり、探検家スタイルのコンテンツをストリーミングしている。 クロラーヌはまた、自社製品のデトックスシャンプーのミントをはじめ、製品に使われている成分を反映してゲームに登場する植物を選んだ。さらに、チャットによるオーディエンスのためのQ&Aを用意した。ジョーンズ氏はハッシュタグ#Botaniquestを使ってTwitterでのエンゲージメントを促進し、デジタル植物標本集を作るためにオーディエンスにゲーム内の植物の写真を投稿するように依頼した。
ボタニクエストでは、ジョーンズ氏(Twitchフォロワーは34.4万人)がゲームに植物が登場するたびにその植物について語った。また、植物学者のアレクサンダー・パネル氏がストリームに加わり、実際の植物の特徴についてコメントしながら、ジョーンズ氏とオーディエンスの会話を誘導した。
このライブストリームは3.9万人を超えるTwitch視聴者にリーチした。
「我々の主なKPIはゲーム内で植物を見つけてもらいゲーマーの行動を変えることだった」とパラントエン氏は述べている。販売目標はなく、またサイトへのリンクやブランディングもストリームには含まれていなかった。
Twitterではゲームからの何百もの花々のスクリーンショットにハッシュタグ#Botaniquestがリンクされており、ゲームコミュニティからの関心の高さが示されている。#BotanyもTikTokで人気のハッシュタグとなっており、3億2200万回以上再生されている。
女性に人気の高いゲームの選択と活用
『レッド・デッド・リデンプション2』は2018年に発表されたが、その「オープンワールド」コンセプトによりストリーマーからの人気を保ち続けている。ゲーマーはゲームを完了するために直線的な筋道をたどる必要はなく、好きなようにゲームの世界を探索できるのである。主に馬と探索の要素が人気で『レッド・デッド・リデンプション2』プレイヤーの女性コミュニティはDiscordで大発展している。「オープンゲーム」のほかの人気ゲームには、2015年発表のシューティングゲーム『グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)』、やはり同年にリリースされた中世が舞台のファンタジーゲーム『エルダー・スクロールズ(Elder Scrolls)』などがある。
『グランド・セフト・オート』のような暴力的なゲームとの連携は、性差別や女性蔑視との関連ゆえに、特に女性のオーディエンスが多いブランドにとっては依然論争の的となっている。ポーランドのファッションブランド、ミスビヘイブ(MISBHV)はほかのブランドとともに、2020年、グランド・セフト・オート・オンラインで取り上げられたが、主流ブランドの多くはこのゲームへの関与を避けている。自然にあふれた仮想空間を探索する『レッド・デッド・リデンプション2』のようなオープンワールドのゲームは女性から共感されやすく、ファッション・美容ブランドに機会を提供するものとなっている。
[原文:Beauty brand Klorane invests in a Twitch campaign with niche content]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)