Q&A:「 マーケティングミックスモデリング 」とは? – 施策の収益貢献を可視化できる仕組み

DIGIDAY

CMOの仕事は、ますます大変なものになっています

マーケティングの成果が、決算結果のような具体的な指標と結びつけられる傾向は強まるばかりです。CMOは、さまざまな広告戦術やマーケティング戦術がどれほど自社製品の購入に結びついたのか説明するよう迫られ、ブランド認知度の向上といった曖昧な指標を改善するだけでは済まなくなっているのです。たとえ最善の努力を尽くしていたとしても、こうした証拠を示さなければ、いまだにマーケティング部門を「コストセンター」扱いするCFOを説得してマーケティング予算を維持することはできません。

そのためのアプローチのひとつが、マーケティングミックスモデリング(Marketing Mix Modeling:以下、MMM)です。MMMを利用すれば、CMOは自分たちの取り組みがどれほど収益に貢献しているのかを幹部に説明できます。メディアハブ(Mediahub)でグローバルチーフアナリティクス責任者を務めるジョン・ターナー氏は、「多くの分析がサイロごとに行われているため、MMMはCFOに好まれている」と述べ、サイロごとの分析では報告内容に矛盾が生じる可能性があると指摘しました。「MMMでは、分析を包括的に行うことになるため、実際の売上以上のことは説明できない。MMMはすべての売上について説明し、さまざまなマーケティング施策にその要因を見出す」。

いつもの、Q&Aシリーズで、解説していきます。

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――そもそもMMMとは何でしょうか?

MMMとは、統計分析をツールとして利用し、一定期間の売上を振り返って、その実際の要因を突き止めるための手法です。基本的にこれが役立つのは、マーケターやエージェンシー幹部が、何がうまくいっていて何がうまくいっていないのかを文脈化しようとする場合です。たとえば、普段は広告費の大半をテレビに注ぎ込んでいるマーケターが、その広告費をデジタルチャネルに振り替えて、商品を割引価格で提供したとしましょう。この施策によって売上が伸びたことがわかれば、マーケターはその分析結果に基づいて調整を加え、うまくいっている施策への支出を増やし、そうでない施策への支出を減らすといった最適化ができるようになります。

――それは当たり前の話のようにも思えますが、どのような仕組みなのですか?

マーケターとエージェンシー幹部は、データを入力して分析する際に、採用しているマーケティング戦術を考慮するだけでなく、ブランドが展開している個々の活動や直面している個々の状況も考慮します。そのため、デジタル広告、テレビ広告、屋外広告、ラジオ広告、ポッドキャスト広告、ソーシャルメディア広告に加え、商品の価格や実施中のさまざまなキャンペーンを考慮します。もちろん、それだけではありません。そんな簡単な話ではなく、在庫レベルや季節性から、場合によっては天候の変化まで、売上に影響を及ぼす可能性があるものなら、基本的に何でも分析対象に含めるのです。そして、そのデータを過去の販売データ(通常は少なくとも3年分)と比較し、売れ行きの変化とその要因を明らかにします。因果関係よりも相関関係を重視するというわけです。

やや漠然としているように聞こえるかもしれませんが、MMMとはそういうものなのです。このモデルはブランドごとに異なる形を取り、売上の増減の要因となりうるすべての要素を考慮することが必要になります。

――ということは、新手のアトリビューション分析というわけですね。

そうであるとも、そうでないともいえます。MMMは、マーケターが売上の要因を説明するための手段であると同時に、数カ月先の計画を決定するために使える予測モデルでもあります。たいていのマーケターは、四半期ごとにこの分析を活用して、今起こっている変化を見極め、ポジティブなトレンドが続きそうな施策に予算を振り分けるでしょう。特定のチャネルで効果が高くなっていることが確認されれば、おそらくそのチャネルへの支出を増やすはずです。たとえば屋外広告は、ロックダウンが解除されて旅行や通勤が復活したことで、再び有効なチャネルとなり、マーケターによる支出が増えています。

――しかし、まさにそのパンデミックによって、すべてが台無しになったのでは?

ある程度はそうですが、完全にそうとはいい切れません。だからこそ、マーケターは数年分のデータをMMMで利用しています。スパーク・ファウンドリー(Spark Foundry)でアドバンストアナリティクス担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるラリー・デイビス-スウィング氏はこの点について、「システムが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなショックに襲われているときは、数年分のデータを持つことが極めて重要になる」と説明しています。「新型コロナウイルス感染症が流行する前のデータを大量に保有しておくことで、流行中に起こったあらゆることを理解し、切り分けができるようになるのだ」。

さらにデイビス-スウィング氏は、次のように続けました。「市場が閉鎖されると、消費者の行動に変化が見られた。レストランに向かっていた人々が、テイクアウトやデリバリーを利用するようになったのだ。デリバリーは爆発的に普及した。したがって、この最初の爆発的な普及の要因は、広告やマーケティングではなく、消費者が行動を変えざるを得なかった状況にあったということができる」。

確かに、2020年の3月中旬から年末までのデータ、あるいは2021年夏までのデータは、役に立たなくなった印象があるかもしれません。消費者行動の劇的な変化によって、予測に耐えうるものとはいい難くなったからです。しかし、人々が再び家から出てパンデミック前の活動に戻るようになるにつれて、マーケターは2019年以降のデータを重視し、平常時の行動も考慮しながら、将来予測をより正確なものにすることができるでしょう。

――だからこそ、正しいデータを入力しなければならないのですね。

おっしゃる通りです。マーケターとエージェンシー幹部は、売上の変動の要因となりうるすべての要素を考慮することで、MMMを正しく適用し、マーケティングミックスの適切な組み合わせを予測することができるようになるのです。ザ・メニー(The Many)でアナリティクスグループディレクターを務めるトリシャ・パスケール氏がいうように、シャンパンの売上の変動を説明しようとするモデルであれば、新年とバレンタインデーのピーク時のデータを入力しなければなりません。ピーク時のデータを考慮しなければ、モデルが不正確になり、予測の要素が役に立たないものになる可能性があります。

また、マーケティング戦略や広告戦略の変化を考慮することも重要です。CMOが1年半ほどで交代し、そのたびに戦略が変わるケースは珍しくないでしょう。デジタル広告の増加や、MMMの変化を考慮しなければ、その変化がどのような影響を及ぼしているのか説明できなくなります。

――なるほど。しかし、たくさんのデータを使っているのですね。また、Cookieの終焉についはどうでしょう。問題になりそうですか?

マルチタッチアトリビューションと違い、MMMは消費者レベルで利用するものではありません。そのため、サードパーティCookieの廃止によって失われる可能性があるパーソナライズデータは、MMMにとってそれほど重要なものではありません。

「我々が話をしているのは、極めて大きなトレンドについてであり、消費者レベルでこのようなモデルを構築しているのではない」と、ゼニス・メディア(Zenith Media)でアナリティクス担当シニアバイスプレジデントを務めるマイケル・サレンメ氏は述べています。「(マーケティング)ミックスモデリングを継続的に利用するためにデータを集約する方法はいくつかある。我々が説明しようとしているのは、国や地域レベルでの売上の変化なので、おおよそのデータの傾向がわかれば十分なのだ」。

[原文:WTF is marketing mix modeling?

KRISTINA MONLLOS(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:長田真)

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