広告・マーケティング業界の2022年を占う、7つのトレンド : コムエクスポジアム・ジャパンの調査より

DIGIDAY

2020年から続く新型コロナウイルスの影響により、企業の広告・マーケティング活動が大きく影響を受けてきた。ただ、手探りだった2020年に比べ、緊急事態宣言の時期が長かったとはいえ、2021年は生活者も企業も、そのなかでいかに立ち振る舞うべきかを理解したうえで行動していた。

コムエクスポジアム・ジャパンでは、毎年ad:tech tokyoや各種サミットなどに参加した広告主に対して、翌年のマーケティング活動に関する「企業が注力するマーケティング」アンケートを行っている。ここでは、その集計結果や2021年のad:tech tokyoにおいて人気となったセッションなどから、2022年の業界について考えていきたい。

1. 新たな挑戦・変化への対応に向けて一定予算をしっかり確保

まず、2022年のマーケティング予算の増減について。これには増加予定の回答合計が40.5%と、前回(2021年)の38.3%を上回る結果となった(グラフ1)。今年と同程度も44.0%となり、マーケティング活動の予算については、コロナ禍であってもしっかりと確保し、新しいことへの挑戦や変化への対応に備えておきたい状況にありそうだ。

グラフ1:2022年度の広告マーケティング予算の増減予定について
Comexposium Japan Marketing Report 2022年 「企業が注力するマーケティング」 調査レポート より

2. 価値が向上するリアル施策

アンケートでリオープニング後に注力したい施策を聞いたところ「顧客を招待したリアルイベント」がトップ。同様に直接商品・サービスを体験・経験してもらえる「タッチ&トライ施策」が上位となった(グラフ2)。約2年間、マーケティング施策のみならず、あらゆるところでリアルな場が大きく制限されてきた。それにより顧客の声を直接聞く、商品・サービスに直接触れてもらうことの重要性を改めて実感することとなった。特に顧客を招いたイベントについては、以前に比べて希少性が増している分、1回あたりの重要性が増している印象。

グラフ2:新型コロナウイルスの影響が低下し、本格的にリオープニングとなった場合、注力したい施策は?(複数選択可)
Comexposium Japan Marketing Report 2022年 「企業が注力するマーケティング」 調査レポート より

商品・サービスのタッチ&トライにおいても、その後の購入や継続的なつながり構築につながるかなど、これまで以上に、シチュエーションや成果を重視することになるはず。それに向けて成果指標の在り方も変化していくのではないか。

3. 顧客とのつながりと金銭面ではないベネフィットをいかにつくるかが分かれ目

アンケートで「この先1年で重要度が増し、注力する・予算を振り向ける施策」を聞いたところ、オウンドメディアの充実・強化がトップとなった(グラフ3)。そのほか、コミュニケーション頻度向上、ソーシャルメディアによるつながり強化などは昨年に続いて上位項目となった。「2」にあるようにリアル施策の重要性を認識しつつも、これらは常に行えるわけではない。コロナ禍によって顧客との関係性が希薄化してしまいがちなだけに、オンラインで日常的につながるため、これらの施策は継続的に力を入れていくことになる。しかし、当然ながら企業が一方的に「つながりを強めたい」と思っていても、基本的に生活者は「あまりつながりたくない」と考えていることが多い。それだけに、金銭面だけではない、つながっておきたいメリットをいかに継続的に提供できるかも同時に考え・実践する必要がある。

グラフ3:この先1年で重要度が増し、注力する・予算を振り向ける施策は?(4つまで)
Comexposium Japan Marketing Report 2022年 「企業が注力するマーケティング」 調査レポート より

4.通販市場は初の10兆円超え&大手メーカーがEC強化に本腰

2020年度の通信販売の国内市場規模は20.1%増の10兆6300億円(日本通信販売協会発表)。調査開始以来、初めて伸び率が20%を超えた。新型コロナウイルスの影響で巣ごもり消費が伸びたという要因があるものの、この流れはさらに加速しそうだ。なかでも、大手メーカーがこの1〜2年でECに本腰を入れるようになっている。我々が2021年12月に行ったCommerce Summitにも、小売・流通を主な販路とする大手メーカーがこれまでになく多数参加するなど、その変化が顕著であることが分かる。「3」にあるように、小売・流通を介することで顧客と直接とつながれなかった大手メーカーが、これまであった彼らへの遠慮を振り払い、経営課題として本腰を入れて取り組もうとしている。

5. ゼロパーティーデータ取得と活用の本格化

2021年のad:tech tokyoで支持されたセッションが「Cookieless時代のコミュニケーション〜次に来るのは何か」。Cookielessはここ数年、業界において常に話題であり続けており、具体的な取り組みが2021年から本格的にスタートしたことで、いろいろな企業・担当者の事例が聞ける機会が増えた。特に、顧客の同意を得たうえで取得するゼロパーティーデータは、「3」にあるような、顧客が「つながっていてもいいかも」と感じるコミュニケーションを行ううえで欠かせない。先行企業を参考に、本格的に取り組む企業が増えることが予想される。これからは、データ取得後それを顧客のメリットに転換して戻すことができるかに注目ポイントが変化していきそうだ。

6. デジタル広告の課題に業界一丸となって取り組めるか?

2021年春にJICDAQ(デジタル広告品質認証機構)が発足。2022年1月5日現在、登録アドバタイザー97社、登録事業者が109社となるなど、成長著しいデジタル広告を健全に発展させるための業界を挙げた取り組みが本格化。今後は、発注する広告主側の理解と登録増加がさらに期待される。デジタル広告においては、現場の担当者は自身の評価となる数値達成ばかりに目が行きがちだ。マネージャークラスのみならず、これらの行動の結果はその企業にも悪い影響となって跳ね返ることを、経営陣も理解したうえで対策することが求められる。

通販業界においては、広告主の管理が行き届きにくいなどといったアフィリエイト広告の問題について、消費者庁が何度も検討会を重ねている状況。2021年度中に何らかの対応策を出すと言われている。日本通信販売協会も業界のガイドライン策定に動いているなど、アフィリエイト広告を取り巻く環境に大きな動きがありそうだ。

7.拡張するマーケティング部門の役割~マーケターの活躍範囲が広がる

アンケートで例年行っている「広告・マーケティング部門として改善したい課題」において、3番目となったのが、昨年5番目だった「マーケティング部門の役割の拡張(SDG’s、パーパスブランディングなど)」(グラフ4)。2021年のad:tech tokyoでもマーケターの役割がセッションテーマになっているように、マーケティング部門がカバーする範囲が広がっていることがアンケート結果にも反映されている。逆に「マネジメント層との連携・理解促進」は昨年の3番目から今年は5番目に後退。経営課題としての認識がひろまり、協力体制が築けるようになってきたからではないだろうか。

近年の企業監査において「広告・マーケティングに適切に投資されているか」が問われることが増えているという。なかには、株主総会の想定問答になる場合もあったようだ。日本においては経営ボードとしてマーケターが活躍する機会が海外に比べて少ないと言わることが多かった。しかしこれらのことを考えると、活躍の場が一気に広がり、企業のなかでマーケティング部門がより中心的な役割を担っていくこととなりそうだ。

グラフ4:広告・マーケティング部門として改善したい課題(複数選択可)
Comexposium Japan Marketing Report 2022年 「企業が注力するマーケティング」 調査レポート より

2022年は、新型コロナウイルスの変異株の広がりという、不安なニュースからスタートし、持ち直した経済活動への影響も懸念されている。しかしながら、この2年足らずで多くの企業が変化に柔軟に対応し、これまでのしがらみを排除してやるべきことに注力する、という姿勢を身に着けてきた。2022年もそうした姿勢を継続できるよう、マーケターとのつながりを築いて、リアル・デジタルの両面において情報に敏感となり、ディスカッションできるような環境を整えておく必要があるのではないだろうか。

Written by 中澤圭介
Illustration from Shutterstock

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