競争が激化する SSP 、「過去と決別」し新たな収益モデルを模索か?:「よりコントロールされた環境へと市場とともに変化する」

DIGIDAY

アドテクノロジーの競争は、とくにサプライサイドのプラットフォーム間で激化しており、この分野の有力企業が差別化、あるいは「粘り強さ」を求めてしのぎを削っている。場合によっては、それが市場への新たなルートや新たな収益モデルの検討を生み出している。

昨年には、ザ・トレードデスク(The Trade Desk)の「オープンパス(OpenPath)」と、グループエム(GroupM)の「プレミアムマーケットプレイス(Premium Marketplace)」が発表された。プレミアムマーケットプレイスについては、業界のメディアエージェンシーの長年に渡るサプライパス最適化(SPO)の取り組みにおける集大成と見なされている。

仲介者排除2.0?

これらの動きは互いを反映しており、いずれも従来の取引相手を「飛び越える」ことを目的としている。

また、ザ・トレードデスクとグループエムはそれぞれ、こうした介入は従来の市場力学を補完するものだと(公に)主張しており、ザ・トレードデスクは、実用的な市場力学を維持するためにはオープンパスは必要な進化だと断言している。

一方で他社は、この2社が昨年の仲介者排除をめぐる論争を反映して混乱をもたらしていると考えている。

マーケテクチャー・ポッドキャスト(Marketecture Podcast)で米DIGIDAYと最近対談したアドテク専門家のアリ・パパロ氏は、「オープンパスのような動きは、従来のSSPにとって仲介者排除の潜在的な原因となる可能性がある」とし、「これは必ずしも悪いことではない、業界の企業は進化する必要があり、進化しなければ脱落する」と主張した。

結局のところ、Yahoo SSPの停止は、EMXデジタル(EMX Digital)の消滅とともに、アドテク分野のセルサイドにおける現在のダーウィン主義的様相を示唆している。

メディアエージェンシーの願望

インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)やマグナイト(Magnite)、パブマティック(PubMatic)のようなこの分野の他社は、同様の運命を避けようと戦略を改めつつある。近年、マグナイトとパブマティックは、市場のバイサイドとセルサイドに対する自社の提案を強化するために、最近の買収を活用することを模索している。

4月に入り、複数の情報筋がDIGIDAYに語ったところでは、マグナイトは、メディアエージェンシーと直接的な関係を構築し、DSPを迂回する選択肢を探っているという。

そうした進展について直接知るある情報筋は匿名で、「これは、メディアエージェンシーがより少数の戦略的パートナーとさらに深く、より動的な関係を築きたいという願望を公然と表明したことに起因する」と述べている。

一部の者によれば、マグナイトは2021年のCTVアドサーバー企業スプリングサーブ(SpringServe)買収を考慮すると、こうした動きを取る独特な立場にあると考えられている。

この買収により、メディアエージェンシーは、サーバーサイドの広告挿入でマグナイトと直接接続できるからだ。

インデックス・エクスチェンジで北南米およびグローバルパブリッシング担当シニアバイスプレジデントを務めるマット・バラシュ氏はDIGIDAYに対し、「SSPは何年も前からメディアエージェンシーと直接的な関係を結んでいたが、自身のチームは『ブローカー・ディーラー』モデルからの脱却を模索しつつも、二股をかけるようなことは考えていない」と述べている。

また、「我々は、パブリッシャーにフォーカスすることが重要だと主張し、バイヤー向けにサービスを生み出す一方で、セルサイドに注力し続けるつもりだ」と付け加えた。「大手エージェンシーは進化し、オープンマーケットプレイスから離れる。我々はさまざまなフォーマットでのメディア投資に目を向けるなかで、よりコントロールされた環境へと
市場とともに変化し続けるだろう」。

パブマティックは「アクセス・メンバーシップ」の手数料を議題に

一方、セルサイドの情報筋がDIGIDAYに語ったところでは、パブマティックの次段階の進化には、パブリッシャーが月額料金を支払う「アクセス・メンバーシップ・プログラム」構想が浮上しているという。このような進展を、ソブロン(Sovrn)が最近バンドルした広告管理とエクスチェンジの提案に似たSaaSの提案と比較する人もいる。

話題に上っているアクセス・メンバーシップ・プログラムに関する報道についてDIGIDAYがコメントを求めたところ、パブマティックはコメント避けた。だが情報筋は、このプログラムによってオープンエクスチェンジ以外でのバイヤーのデマンドに対する会員のアクセスが強化されることを示唆した。

たとえば、このプログラムに参加するパブリッシャーは、パブマティックが促進するプライベートマーケットプレイス(PMP)に組み込まれる。SSPが入札総額の何パーセントかを取り、パブリッシャーが純益を受け取る従来の収益分配提案とは、対照的な動きだ。

PMPはオープンエクスチェンジより大幅に多くのサービス提供を必要とするため、これは市場の自然な進化だと考える人もいるだろう。別の情報筋は、パブマティックによるマーティン(Martin)買収が実現したため、会員プログラムが開始される可能性があると考えていた。

4500万ドル(約60億円)規模と報じられている2022年のこの取引は、SSPのバイサイドの顧客がさらなるSPO機能を必要としていることに対応したものだった。

パブマティックのCEOであるラジーヴ・ゴエル氏は、プレスリリースでこの取引について、「買収によってバイヤーの選択肢であるプラットフォームとしての地位が強固になり、ひいては世界的なパブリッシャー基盤により多くの広告収入がもたらされる」と述べている。

コモディティ化の対極

コンサルティング会社アドプロフス(AdProfs)の創業者であるラッコ・ヴィダコヴィッチ氏が語ったところでは、業界大手の独立系SSPの大半は、必ずしも差別化ではなく粘り強さを求めるやり方で自社を位置付けているという。

「コモディティ化の対極にあり、SSP市場では何より重要なことのようだ。SSPは、バイサイド、それもとくにエージェンシーに対しては、仲介者排除からある程度距離を置いているため、魅力的なサービスを提供しようと努めている」と同氏は付け加えた。

一方で、セルサイドでの幅広い経験があるアドテクコンサルティング会社ルル・フォンマニー(Lulu Phongmany)は、「SSPが固有のインベントリー(在庫)の供給という従来の役割から脱却するためには、こうした進展は重要だ」と述べた。

「キュレーションは容易だ。プラットフォームでできるはずだからだ」とヴィダコヴィッチ氏は述べ、「ファーストパーティデータでインベントリーのキュレートを手助けすることがプラットフォーム(レガシーDSPまたはレガシーSSP)にとって重要であり、これはこうした企業がこれまで奮闘してきた課題だ」と言い添える。

「それがないのであれば、本当に何をもたらすのだろうか? インベントリーをキュレートしているだけなら、ただのSSPであり、大手ブランドのために何かを行いたいのであれば、オーディエンスをキュレートする必要がある」。

[原文:SSPs break with the past as push comes to shove in ad tech

Ronan Shields(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:島田涼平)

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