ショッピングアプリ「 マダ 」が目指すのは、閉鎖したザ・イエスの顧客獲得

DIGIDAY

ピンタレスト(Pinterest)は今年6月、創業から4年になるショッピングプラットフォーム「ザ・イエス(The Yes)」を買収したと発表し(買収額は非公開)、アプリを停止することも明らかにした。当時、ジ・イエスの創業者ジュリー・ボーンスティーン氏はGlossyの取材に対し、顧客の大部分がピンタレストに移行することを望んでいると語っていた。買収から1カ月が経ち、ファッションの発見やショッピングに特化したアプリ「マダ(Mada)」が、ザ・イエスの顧客をすくい上げる戦略を立てている。

マダの訴求ポイントとは?

立ち上げから2年のマダは、ユーザーの好みのスタイルをアルゴリズムが学習して、ラグジュアリー系からマス向けファッションまで3,600を超えるブランドの中からおすすめの商品を表示する、ザ・イエスと類似したアプリだ。ユーザーは好みの商品を保存し購入することが可能で、コーディネートとして表示された商品を一括購入できることがこのアプリの訴求ポイントだ。またホームページに表示されるコーディネートは、アルゴリズムではなくプロのスタイリストが厳選したもので、数日ごとに更新される。ザ・イエスでは、アルゴリズムがコーディネートを生成することはなかったが、ストリートスタイルのスターでショッピングサイト「モーダ・オペランディ(Moda Operandi)」にも携わったクリエイティブディレクター、テイラー・トマシ・ヒル氏によるコーディネートを提供している。

「コンテンツとショッピングのコンビネーションに需要があることが、ザ・イエスの買収によって明らかになった」と語るのは、マダの創設者兼CEOであるマディソン・セマルジャン氏だ。「私たちはピンタレストのような買い物のしやすさと、発見やインスピレーションを組み合わせている。違いは、個々のアイテムではなくコーディネート全体に焦点を当てている点だ」。

ザ・イエスの高い年齢層を獲得し、利用者拡大へ

セマルジャン氏によると、マダの現在の利用者のうち70%以上がZ世代だという。25~70歳とユーザー層が幅広いザ・イエスが閉鎖したことに伴い、同アプリの年齢の高いユーザーを獲得して、マダをZ世代以外にも拡大していきたいと考えている。

そのためにマダはTikTokやインスタグラムなどのプラットフォームで、さまざまな年齢グループのマイクロインフルエンサー(商品提供のみ/有料の両方)に大きく依存しており、彼らの多くには2,000名ほどのフォロワーがいる。ザ・イエスの買収以来、マダでは30歳以上の年齢グループのマイクロインフルエンサーや、おすすめのフルコーディネートを強調したコンテンツを活用し始めている。厳選されたコーディネートを提案していたザ・イエスの機能(そしてピンタレストでは得られない機能)を欲している顧客が、似たような体験を求めてマダに引き寄せられてくることを狙ったものだ。

クチコミも、マダにとって重要なマーケティングツールだ。セマルジャン氏によると、マダの新規顧客の9割はオーガニック検索からのアクセスで、その多くはアプリに関する投稿をユーザーがTikTokにした後に発生したものだ。セマルジャン氏がマダの動画を制作してTikTokに投稿し、それが拡散した際には新規登録数が毎日300%増加したという。

小売業者とソーシャルメディアプラットフォームの中間

ショッピングとコンテンツを組み合わせたザ・イエスやマダなどのプラットフォームは、購入のアクションをユーザーにすぐ起こしてもらえる小売りの場でありながら、購入しない人も閲覧して楽しむことができる場でもあり、小売業者とソーシャルメディアプラットフォームの中間に位置するとセマルジャン氏は述べる。特にインスタグラムを介したソーシャルショッピングは、マダやピンタレストのようなアイデア発見系のプラットフォームと競合するが、eマーケター(eMarketer)のデータが示すところによると、インスタグラムのショッピング機能の採用はやや遅れており、コンテンツとeコマースを組み合わせたプラットフォームには参入の余地が残されている。

マダは商品の売上以外に、ブランドから支払われるプラットフォームへの出店費用からも収益を得ている。また、コーディネート生成アルゴリズムのライセンスを、他の企業に供与している。マダのユーザー数についてセマルジャン氏は公表を控えたが、同社はブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)やアーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)といった有名な小売業や、ガニー(Ganni)やグッチ(Gucci)など個々のブランドとも協業している。

ピンタレストとマダの各々の狙い

ボーンスティーン氏はアイデア発見系のプラットフォームが持つ価値について同じような気持ちでいることを、7月下旬にGlossyの姉妹メディア「モダンリテール(Modern Retail)」のインタビューで語った。

「人々は購買の意図を持って、ピンタレストを訪れている」と、現在ピンタレストの最高ショッピング責任者を務めるボーンスティーン氏は語る。「そしてこれは、人々がインスタグラムを訪れる理由とは異なる。インスタグラムを訪れるのは、友人やインフルエンサーが何をしているかを確認するため。衝動買いをするには最適な場かもしれないが、具体的なニーズや欲求を満たしたいときに訪れる場はインスタグラムではなく、ピンタレストこそがふさわしい」。

しかしマダとは異なり、ピンタレストは高年齢層に偏っている。ユーザーの72%は30歳以上で、もっともも多いのは50~64歳の年齢層だ。若い顧客層を維持しつつ、ザ・イエスからピンタレストへの移行の混乱で失われる年配ユーザーの一部を獲得することが、マダの目標なのだ。

「私たちが目指しているのは『ルルレモン効果』だ」とセマルジャン氏。「ルルレモン(Lululemon)は若い人へのマーケティングから始め、そこからあらゆる年齢層が着用するブランドへと拡大していった。私たちにはZ世代のオーディエンスがおり、いまはそこから拡大したいと考えている」。

[原文:Shopping app Mada aims to pick up customers left behind when The Yes shut down

DANNY PARISI(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)

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