SMS をライブチャットとして活用するブランドたち:顧客体験向上のチャネルとして活用

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

SMS(ショートメッセージサービス)のマーケティングサービスが普及するにつれ、、一部のブランドではプロモーション用テキストの枠を超えて、ライブの顧客サービスに同サービスを利用するまでに進んでいる。

D2Cの家具ブランドのホームスレッズ(Homethreads)にとって、それは、色や、スタイル、商品の在庫についての質問に回答するために、実際の担当者が電話で対応することを意味する。そして、もちろん注文も受け付ける。

CMOを務めるブラッド・ブルックナー氏は次のように述べている。「これは、当社が顧客サービスに関して信条としていることを拡張したもので、顧客が実際の人間の担当者とつながっている状況で、すぐに満足が得られるようにしている。これがボットや、単なるプログラムからの回答であれば、嫌だと思うだろう」。

収益拡大に貢献

コンシェルジュ(Concierge)と呼ばれるライブチャットサービスを2022年から使いはじめたブランドは増え続けており、ホームスレッズもそのひとつだ。これはテキストマーケティング会社であるアテンティブ(Attentive)が2022年6月に公式リリースした新しいサービスだ。で、。

ブランドは多くの場合、カートの放棄や、ページからの退出など、特定の行動によって引き起こされる会話に、このサービスを使用する。SMSでのコミュニケーションにサインアップする顧客は、テキストでブランドに質問し、そのブランドのダッシュボードに接続しているアテンティブのチームのメンバーである担当者から回答を得ることもできる。

このサービスは、スタッフの人件費をまかなうため、基本料金と毎月のテキスト送信予算が含まれる標準的なアテンティブSMSプランよりもコストが高くなっている。しかしブルックナー氏は、これによって顧客サービスがより優れたものとなり、ホームスレッズが2021年に3600万ドル(約49億3000万円)を超える収益をあげるのに役立ったと語る。SMSは、メタ(Meta)、ピンタレスト(Pinterest)、Googleを超え、サイトからのトラフィック・リターゲティングをけん引する最大の要素となっている。

「小さなアラートが通知され、テキストを見逃すことはない。だからこそ、人々の働き方、暮らし方に適していると感じている」と同氏は述べている。

顧客体験向上のためのチャネルとして定着

SMS戦略、特にライブチャットで成功を収めているのはホームスレッズだけではない。サイバーウィーク(Cyber Week)には、アテンティブを使用する5000以上のブランドで、SMSキャンペーンから生み出された売上額は11億ドル(約1510億円)だった。しかし、ライブの担当者を使った会話は自動応答を使った会話よりも平均注文価格が69%多かったことが、アテンティブのデータから示されている。

eコマースエンゲージメントプラットフォームのブルームリーチ(Bloomreach)では、今年のサイバーウィークに送信されたSMSメッセージが昨年よりも50%増加し、合計メッセージ数が38億に達した。そのうちのどれだけが双方向の対話だったのかのデータは公開されていないが、CMOを務めるアマンダ・イーラム氏は、SMS全体が顧客体験のためのチャネルとして定着しつつあると語る。

「ブランドがあらゆるチャネルで顧客とコミュニケーションを行えることは、もはや差別化要因にはならず、当然のこととして期待される状況が急速に近づいている」と、イーラム氏は述べる。

アテンティブのCMOを務めるサラ・バルニ氏は、双方向の会話により顧客の特定の状況に合わせた対応をし、店員が顧客を目的のフロアに案内するのと似たような対応が可能になると語る。

バルニ氏は次のように述べている。「顧客は、同じメッセージを大勢に一括送信されることを望んでいない。また、返信がないことも望まない。このためSMSのマーケテイング担当者にとって、その顧客に合わせたメッセージがを送ることは非常に重要なことなのだ」。

「顧客はただ話を聞いてもらっていると感じたい」

旅行かばんとアクセサリーのブランドのカルパック(Calpak)は、2020年の中頃にSMSを開始し、アテンティブのコンシェルジュサービスのアーリーアダプターとなった。これにより顧客はテキストメッセージに回答し、ライブで担当者と会話できるようになった。

ショッピング途中でよく行われる会話は、色やサイズの選択に関するものだと、カルパックの販売およびマーケティングディレクターを務めるジーニー・シン氏は語る。

同氏は次のように述べる。「これらの会話の大部分は、『品物を探すのを手伝って欲しい』『この商品を別の色で欲しい』といったものだ。顧客はただ話を聞いてもらうことを望んでおり、ただ向こう側で耳を傾けてくれている人がいることを感じたいのだと思う」。

ブランドと顧客間のテキストメッセージ

アテンティブが同社のコンシェルジュ双方向会話テキストサービスを開始したのは2022年6月のことだ。

保証や商品の在庫についての会話もある。顧客が、コンシェルジュの接客係が回答できないような質問をした場合、その会話はブランドの担当者に転送される。

このライブチャットの交換により、たとえば商品ページに情報を追加するなど、顧客からのフィードバックをリアルタイムで受け取れるという利点もある。

「このような情報は、どこか別の場所で決定を行うためにも全面的に有用だ」と、シン氏は述べている。

リソース集約型の戦略

しかし、ライブチャットのSMSはすべてのブランドに適しているとは限らない。SMS全般において、SMS経由で顧客の連絡先を入手するためのコストはメールを上回る。サブスクリプション解約もはるかに多いため、ブランドは顧客が迷惑と感じないように、いつテキストを送信するかのタイミングを十分に考慮する必要があると、シン氏は述べている。

連絡先リストを増やすのにもそれなりのハードルがある。シン氏によると、カルパックは9月と10月に感謝祭の週末セールの準備をはじめ、SMSに登録してもらうためのプロモーションを行うとともに、インフルエンサーと提携した。

「我々はこのシーズンに向け、健全なリストを確実に用意したいと考えた。そして、当社のリストが大きくなるほど、より多くのリターンが得られると、私は考えている」と、同氏は述べている。

女優のリース・ウィザースプーン氏が設立したアパレルとライフスタイルのブランドであるドレイパージェームス(Draper James)は現在、SMS戦略でいかなるライブ担当者を配置していないと、CEOを務めるエリン・メーニッヒ氏は語る。ナッシュビルにある同社の旗艦店の店頭スタッフが、テキストメッセージに対応するという実験が行われたが、すぐに廃止されたと、同氏は語る。このテストは、ホリデーシーズンの直前に顧客がギフトを買い求めるのを支援するために行われた。しかし、店頭スタッフがフロアでの対応に忙しいとき、テキストが届いてから、返信するまでのあいだにタイムラグが発生することがあった。

「緊急性がなければ、ある意味その効果を失うことになる」と、同氏は述べる。

エンゲージメントの度合いが大きい

しかしそれは、同ブランドが将来的にこの対応を再度試みないということではない。

同氏は次のように述べる。「当社にとって、これは人手の問題に帰着する。しかし、これを活用して実現できることや実現したいことは数多くある。将来的には非常に個別化された要素を提供したいと考えている」。

たとえば、最近のキャンペーンでは、ある特定のアパレル商品の色について、2つの色のオプションでどちらを好むかをサブスクリプション会員に問いかけた。SMSのリストはeメールのリストと比べて4分の1程度しかないが、オープン率とエンゲージメント率は高かった。

「当社はVIPや、早期アクセスなどの限定サービスを開始することが多い。これは、非常にエンゲージメントの度合いが大きい顧客に対して、サブスクリプションを続ける理由を与えるのが重要だと、私が考えているからだ。このグループは小さいがエンゲージメントの度合いは大きい」と、メーニッヒ氏は語る。

アテンティブのバルニ氏は、SMS戦略にライブチャットの要素を持つことは、購入に関わる高いレベルの問い合わせや検討があるようなブランドにとって、特に有用だとしている。

たとえば、オンラインチャットにおいて担当者を順番待ちしている人は、質問への回答を得る前にログオフするかもしれない。

同氏は次のように述べる。「ラグジュアリーのハンドバッグを購入しようとし、それが特定の価格を超えるなら、その商品をショッピングカートに追加して購入する前に、商品についてもう少し知りたいと思うだろう。そのような場合にテキストを使用すれば、はるかにシームレスな方法でブランドに接することができるのだ」。

[原文:Why brands like Calpak and Homethreads use SMS for live customer service]

MELISSA DANIELS(ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

Source

タイトルとURLをコピーしました