Yoox が挑戦する「シークレットルーム」の狙いとは?:サンプルセールからの脱却

DIGIDAY

ファッション企業が在庫の増加や消費者支出の減少に直面するなか、ブランドにとって魅力的な解決策であり続けているのがディスカウントだ。ユークス(Yoox)は、そのチャンスに戦略的に取り組んでいる。

10月18日から30日まで、ユークスはニューヨークで「シークレットルーム(Secret Room)」というコンセプトのシークレットセールを開催した。同社は、5月にイタリアで初めて「シークレットルーム」をローンチしている。34番街にある「シークレットルーム」では、ホリデーシーズンを前にした戦略的なタイミングで、ユークスのアイテムを最大90%オフで販売する。ラグジュアリー分野ではシークレットセールは一般的に行われているが、ブランドや小売業者は、割引をしながらもブランドエクイティを強化する質の高いサービスを特徴とするハイエンドなショッピング体験になるよう、より配慮している。ユークスの店の場合、ショッピングの予約、各予約時間帯に安定して商品を提供するための事前割り当て、経験豊富なラグジュアリースタッフ、迅速なチェックアウトが特徴である。

ヨーロッパで成功しているシークレットセール

「デジタルだけでなく物理的にも、消費者に当社の世界をより身近に感じてもらえるような、異なる提案をしたいと強く思っている」と話すのは、ユークスのマネージングディレクターであるヴァレンティーナ・ヴィスコンティ・プラスカ氏だ。「すでにイタリアでこのフォーマットをテストして売上と顧客の反応を高めることに成功しており、これを米国にもたらすことができて喜ばしく思う」。

ヨーロッパでシークレットセールを主催した経験のあるイタリアのシークレットセールサービス、セイワオ(Say Wow)との提携により、両社は米国への展開を果たす。セイワオはケリング(Kering)とも提携しており、イタリアで社員限定のシークレットセールを開催したほか、過去にはケリング、バリー(Bally)、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)、ザ・ロウ(The Row)のセールも主催している。現在、ケリングや他の過去のブランドを含む2023年のシークレットセールの可能性に向けての話し合いが行われている。

「当社のモデルは、ブランドを保護することだ。当社では自分たちのイベントを、サンプルセールよりも、ポップアップストアと呼ぶことを選んでいる。サンプルセールにありがちなディスカウントを行ったとしても、顧客にとっての感覚や体験は同じだからだ」と、セイワオの創業者ルカ・ベンサイア氏は述べた。ブランドのシークレットセールの平均的な売れ行きは40〜50%だが、イベントによっては80%にもなるという。

低価格で販売するだけのサンプルセールからの脱却

「私たちは、顧客にプライベートルームでの体験を提供したい」とヴィスコンティ・プラスカ氏は述べた。「入手困難なアイテムを探しているバイヤーや、競争力のある価格設定によって異なるショッピング体験を求めているファッションのファンにアプローチしたいという願いがある」。

ユークスとセイワオは、ユークスの主要な30歳から50歳の層をターゲットに、専用のソーシャルメディアキャンペーンを通じて、このポップアップのマーケティングを行っている。ソーシャルメディア広告や、クリエイティブディレクターのサラ・ジョンソン氏(@sayjayjohnson)のような主要インフルエンサーとのパートナーシップを通じて、プライベートセールを宣伝している。

ユークスは、シークレットルームで購入した際に追加でアプリ経由で利用できる割引を提供している。同社は「シークレット」という位置づけを考慮し、セールに含まれるブランドについては言及を避けた。

「パートナーシップの活性化、関わっている人材、そして強力で認知度の高いブランドアイデンティティのおかげで、低価格で購入する機会を提供するだけのサンプルセール体験から脱却している」とヴィスコンティ・プラスカ氏は語った。

より多くの消費者とのタッチポイントとなるために

ファーフェッチ(Farfetch)は今年8月、ユークス・ネッタポルテ(Yoox Net-a-Porter)の株式45%を取得した。ユークス・ネッタポルテは先週、暫定CEOの任命や、世界各地でのゼネラルマネージャーの配置など、多くの発表を行っている。また、イタリアとフランスにリセールサービスを拡大している。

ヴィスコンティ・プラスカ氏によると、ユークスがシークレットルームをローンチするきっかけとなったのは、顧客にeコマース小売業者との新たな接点を提供することだった。「いくつかの似たような活動の成功を目にして、購入する前に商品に触れたいと思う顧客に対し、ユークスの世界に触れてもらい、エンゲージする新たな機会を提供しようと考えた。これは新しい市場セグメントを開くための方法であり、またショッピング体験を継続するために私たちのサイトに戻ることができる顧客層と交流するための方法なのだ」。

ヴィスコンティ・プラスカ氏は、プライベートセールはユークスが引き続き探求したい機会だと述べている。「ユークスが提供するものには、世界中のすべての場所で、より多くの消費者とのタッチポイントを持つことが必要だ。プライベートセールは、その延長線上にあるものとなるだろう」。

[原文:Yoox takes a ‘secret’ approach to holiday discounting]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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