「長期的には売上増につながる」:オーバーストック・ドット・コムCEOジョンソン氏が語る、「家具以外」を取りやめた理由

DIGIDAY

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1年のあいだに300万人近くの顧客を失うとなると、それは改革を行うときだと思うかもしれない。しかし、eコマース小売業者のオーバーストック・ドット・コム(Overstock.com)の場合、これはすべて、家具の分野で大口顧客に対象を絞るという計画のうちなのだ。

同社は2022年6月に家具および装飾ビジネスへの移行を完了した。同社はそのために、23年間にわたってブランドを支えてきたアパレルや宝石類などのカテゴリーの商品をすべて撤去するのに1年半を要した。

第3四半期決算では、この新しい戦略により、収益と顧客の数がいずれも減少したことが明らかになった。特に家具の売上が、パンデミック中の最高値から大幅に減少したことと合わせると、その現象は顕著だ。オーバーストックの収益は2022年第3四半期に4億6000万ドル(約639億円)で、前年同時期の6億8900万ドル(約958億円)と比べて大きく減少している。同社のアクティブな顧客数は580万人で、これも前年の870万人の買い物客数から大きく減少している。

しかし、これらの顧客の平均注文数は1.62で、過去2年間にわたってこの数はほぼ変化しなかった。また、平均注文価格は243ドル(約3万3800円)で、昨年同時期より13%の増加、2020年の第3四半期との比較では43%増加している。

CEOを務めるジョナサン・ジョンソン氏は、家具に特化することでeコマース企業である同社がより有名なブランドを取り込み、結果として売上増を促進できると、米モダンリテールに語った。

「家庭に特化することで当社のブランドは成長する。オーバーストックはよく知られたブランドだ。ただ、当社が望むほど家庭のイメージと結びついていない」と、同氏は述べている。

同社は家庭への売り込みを固めるため、今秋、新しい全国コマーシャルキャンペーンを開始し、HGTVのホストであるタレク・エル・ムサ氏など6人の新しいブランドアンバサダーと提携する。これらのパートナーシップにより、自社の家庭用商品を合計2000万人のソーシャルメディアのフォロワーに売り込むことになる。

米モダンリテールはこの移行について、そして競合の激しい家庭用家具の業界においてオーバーストック・ドット・コムが自社をどのように位置づけることを計画しているのか、CEOのジョナサン・ジョンソン氏と対談した。以下の対談内容は簡素さと明瞭さを考慮し、編集を加えたものである。

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−−家具専業に移行することになった最初の動機は何か?

家具の売上が低迷している時期だったので、困難なことではあった。しかし、これは極めて戦略的で十分に考慮された行動だった。

我々がサイトから取り除いたのは、収益の20%近くに当たるアイテムだが、これには明確な理由があった。当社の家庭用品を購入する人々は、より頻繁に買い物をし、コンバージョン率が高く、1回の買い物における購入数も多い。彼らはより良い顧客なのだ。

したがって、一部の人々が買い求めていた商品を取りやめたことで、短期的には損失があるものの、長期的にはこの移行が売上の増加に役立ち、ブランドのためにはさらに良い結果になるだろう。

当社が発見したことのひとつは、当社が現在家庭専業になったことで、いくつかの有名なブランド、特にキッチン用家電のブランドが、当社のサイトでの販売を望むようになったことだ。これらのブランドは、アパレル、保健、美容品、宝石類、時計などと並べて表示されることを望んでいないためだ。ミスターコーヒー(Mr. Coffee)、クイジナート(Cuisinart)、キッチンエイド(KitchenAid)、ダイソン(Dyson)、カルファロン(Calphalon)などのブランドだ。非常に格の高いブランドだが、「御社が家庭専業になったので、御社のサプライヤーになりたい」と打診してきた。

家庭に特化することで当社のブランドは成長すると考えている。オーバーストックはよく知られたブランドだ。ただ、我々が望むほど家庭のイメージと結びついていないだけだ。

−−御社が将来的に提携を希望しているブランドや小売業者はあるか?

提携している企業はほかにもある。当社は常に、家庭分野における商品の幅と奥行きを広げるべく取り組んでいる。2021年1月以降、家庭用品のSKUの数を2倍以上に増やした。数万や数十万程度の追加ではない。数百万のSKUを追加した。つまり、商品の幅と奥行きが爆発的に増加したということだ。

オーバーストックは最近、新しい全国広告キャンペーンを開始し、ブランドアンバサダーとのパートナーシップを発表した。ブランドにとってこれらの関係はどの程度重要なものか?

非常に重要だと考えており、過去には、クリストファー・ナイト氏のようなすばらしい家具のラインを保有するアンバサダーたちと協力したことがある。現在の当社のレベルではその潮流にやや遅れているが、そのグループに追い付けると私は考えている。

何人かのインフルエンサーを長期的に追加し、また契約を終了するだろう。大切なのは、流行り続けること、今どきであり続けることだ。インフルエンサーは地理的、スタイル、好みについて非常に多岐にわたる。当社は多くの人々に語りかけることを望んでいるため、それも重要だと考えている。

−−eコマース分野における家具の競合他社を考えて、このカテゴリーにおけるオーバーストックの強みは何か?

我々のブランドの柱は、商品の実用性、スマートな価値、配送とサポートが簡単なことだ。そして、これらの柱は、2つの具体的な顧客タイプを中心に構築されている。競合他社のウェイフェア(Wayfair)、ウエストエルム(West Elm)、レストレーションハードウェア(Restoration Hardware)などは同じ顧客にフォーカスしていない。

まずは、「目の肥えた買い物客」に分類している顧客だ。この層はスマートな価値を求めている。この層にとっては価格と価値が極めて重要だ。ソファに300ドル(約4万1700円)を支出するなら、300ドルで買える最高のソファを希望する。もし同じソファに2000ドル(約27万8000円)を支出するなら、やはり2000ドルで買える最高のソファを希望することになる。

当社は、もうひとつの分類の顧客を「面倒くさがりなリフレッシャー」と呼んでいる。この層は買い物が特に好きではなく、買い物をするときは欲しいものを最初から決めている。当社はこのような顧客に対して、商品を見つけやすくすることに注力している。そして次に、配送とサポートの容易さに注力する。商品の到着日時を把握することができる。これはとても信頼性が高いものだ。また、もし商品が欲しくないものなら簡単に返品でき、商品に問題があればカスタマーサポートを簡単に受けられる。

−−価格設定や割引の戦略に関して、現在のマクロ経済状況による変更を加えたことがあるか?

今年、当社が目にしたことのひとつに、競合他社の多くが非常にプロモーションを強化していたことだ。ウォルマート(Walmart)とターゲット(Target)は、在庫が増えすぎたために、在庫の清算をすると語っていた。当社のビジネスモデルはアセットライト(資産軽量型)であるため、在庫を保有せず、他企業のために在庫を動かすだけだ。当社はそのようなプロモーショナル環境に対応しなければならなかった。これを果たす一方で、安定して一貫した粗利益率を維持することができた。これは良いことだったが、その分、販促費はかさむことになる。

もうひとつ、今年変わったことといえば、顧客が新たに入居する住宅ではなく、住宅改善に集中する傾向があることだ。そしてこれは、洗面化粧台が昨年よりよく売れるという形で表れている。マットレス、小型家電、さらには収納用品もだ。これらの商品は、現在の空間を少しだけ快適にするものだ。

−−今後数四半期に、オーバーストック・ドット・コムに何を期待できるか?

当社はカナダでのビジネスの成長に取り組んでいる。これは1年半にわたって進めてきた取り組みで、当初予定していたよりも少し遅いスタートとなった。しかし、これは当社にとってはじめての意義ある国際市場への進出だ。

我々は、ほかの国に進出する方法についてのテンプレートを作成しようと試みている。安易な方法を使用すれば、隣国でもなく英語圏でもない国に進出するとき、その手抜きが問題を引き起こすだろう。そこで、今後数年間で、カナダが当社の国内ビジネスの10%を占めるまでに成長すると考えている。そして、カナダでのビジネスがどのような滑り出しを見せるか楽しみにしている。

15年ほど前にもカナダへの進出を試みたが、カナダで商品を保有しているパートナーが存在しなかったため、うまくいかなかった。コスト削減は関税と輸送に食われてしまった。現在ではパートナーやサプライヤーの多くがカナダに商品を保有しているため、カナダからカナダに配送を行っている。また、当社はこれによりクリティカルマスを確保しており、カナダで新しいサプライヤーと契約するのが簡単になっている。以前は、誰も通ったことがない道をかきわけて進んでいたように思う。現在では十分に道が開拓され、安全に旅することができるようになった。

[原文:‘They’re better customers’: Overstock.com’s CEO Jonathan Johnson on the move to furniture-only]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Overstock.com

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