パブリッシャーの1Q 広告売上 、予測を上回るも改善には至らず:「存亡の危機ではないが、余裕はまったくない」

DIGIDAY

2023年の1月の大半を通じて、多くのパブリッシャーは広告売上が四半期予測を10~25%下回るという暗澹たる経験をしてきた。3月が終わった今、パブリッシャーは傷の深さを確かめているところだ。そして、広告売上は確かに減少したが、予想されたほど悪い数字ではないことがわかってきた。

あるパブリッシャーが匿名を条件に語ったところによると、四半期売上は1桁中盤から後半の下落にとどまったという(同氏は具体的な数字は明かさなかった)。米DIGIDAYが取材した別のパブリッシャーも、同じく匿名を条件に、具体的な数字には言及しなかったものの、広告売上は前年比で減少したと語る一方で、「過去3カ月はその前の3カ月よりも好調だった。そのため総合的に見ると、我々はスローペースながら、良い方向に進んでいる」とも述べた。

「3月に急加速が起きた」

第1四半期はおおむね予測通りの結果で、「あらゆる想像を超えた悲惨なもの」にはならなかったと、インダストリーダイブ(Industry Dive)の共同創業者でCEOを務めるショーン・グリフィー氏は語る。グリフィー氏も売上の数字や当初の予測について具体的な言及を避けたが、同氏によれば、過去数週間でいくつかの「重要な」契約が成立に至ったという(なお、これらの契約の金銭面への言及はなかった)。

3月に入って状況の改善を実感したのはグリフィー氏だけではない。インサイダー(Insider)のグローバル売上担当責任者、オーランド・リース氏は、3月30日に行われた米DIGIDAYの動画インタビューのなかで、理由は何であれ、この週に契約が爆発的に増加し、広告主とのミーティングを次々に飛び回っている状態だと語った。

「3月に急加速が起こったことは喜ばしい兆候だ。何しろ過去9カ月は前年比で非常に厳しい状況だった」と、3月末に開催されたDIGIDAY PUBLISHING SUMMIT(以下DPS)で、タウンホールイベントに参加したあるパブリッシャーは述べた。同イベントでは発言者の匿名性を保証するチャタムハウスルールが採用された。

土壇場の契約

一方で、2022年の第4四半期にパブリッシャーが売上の回復を期待して採用した四半期内販売戦略は、今年第1四半期に効果を発揮することはなかった。

グリフィー氏の説明によれば、四半期後半に成立した契約は、第1四半期売上として計上されず、実際にキャンペーンが展開される第2または第3四半期の売上とみなされるという。昨年第4四半期のように、広告主が広告費の残額を短期的キャンペーンで使い切ろうとするのではなく、第1四半期に入ると、数週間、あるいは数カ月にわたって予算承認を待っている状態だったため、RFP(提案依頼書)と契約は一旦棚上げされたのだ。

グリフィー氏はこうした状況について、家を売りに出してオープンハウスを開催したところ、詮索好きな隣人たちが大勢やってきて見て回ったが、見学が実際の売買成立には至らなかったようなものだと語った。

「これほど契約が集中する奇妙な四半期は初めてだ。『すごい契約の話が来たぞ、ぜひ進めていこう』と思った矢先、次々に問い合わせが殺到して、気づいたら第2四半期になっていた」と、リース氏は述べる。

行きつ戻りつのプログラマティック

四半期の大半を通じてパブリッシャーの売上が伸び悩んだのは、直接販売のカスタムキャンペーンだけではない。

むしろ、リース氏によれば、インサイダーの第1四半期の直接広告売上は前年比で増加した。「だが、プログラマティックは第1四半期に大幅に減少した。大規模プログラマティックセラーの多くは(年明けの時点では)まだ様子見の状態だった、ただし、今は積極的だ」。

過去3年間にわたり、直接売買からプログラマティックへの「大転換」は、パンデミックの発生に始まって、現在の景気後退でさらに拍車がかかっていると、本記事のために取材した別のパブリッシャー幹部は匿名を条件に語った。

プログラマティック広告予算が、オープンマーケットプレイスを通じた売上ではなく、営業チームを通じてパブリッシャーに直接流れ込む状況をつくり、バランスシートの改善につなげることが主要な目標であると、同幹部は語る。そのために、同社はメディアバイヤーやマーケターに付加価値のある広告商品を売り込んでいるという。たとえば、プログラマティックダイレクトキャンペーンへの拠出額に応じて、カスタムコンテンツやインフルエンサー広告を提供するといったものだ。

回復途上にはあるが

パブリッシャーがプログラマティックギャランティード(PG)やプライベートマーケットプレイス(PMP)でのプログラマティック広告販売を優先するのは、これらのCPMが格段に高いことを考えれば理にかなっている。オペラティブSTAQのベンチマークデータによれば、3月26日の週において、PGの平均CPMが8.23ドル(約1100円)だったのに対し、PMPは2.98ドル(約400円)、オープンマーケットプレイスは1.57ドル(約210円)だった。

「(PG、PMPは)売上を獲得しつづける戦略的手段であり、またプログラマティックを通じてそれを実現できる」と、あるパブリッシャー幹部は述べ、さらに今四半期について、「99%のケースで(広告主は)パフォーマンス(主導キャンペーン)に力を入れざるを得ない状態だが、だからといってイノベーションの余地がないわけではない」と語った。

第1四半期は広告市場の冷え込みが続いたが、パブリッシャーは慎重ながら楽観的に、夏までには氷漬けだった広告費が再び舞い込んでくると予想している。

「我々は回復途上にあるが、まだ多大な努力が必要だ」と、DDPSのタウンホールの場で、あるパブリッシャーは語った。「全体的に見て、この3、4四半期は過酷だった。あまりに変動が大きかった。状況が良くなったかと思えば、今度は相次ぐ銀行破綻だ。こうした多数のマクロ経済的要因に振り回されつづけた。存亡の危機というほどではないが、困難には違いないし、まったく余裕がない状態だ」。

[原文:Publishers’ Q1 ad revenue was better than forecasts, but not by much

Kayleigh Barber(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:分島翔平)

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