NATOが露の要求を拒否した理由 – 非国民通信

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安保理がロシア非難決議を否決(共同通信)

 【ニューヨーク共同】国連安全保障理事会(15カ国)は25日、ロシアのウクライナ侵攻を非難する米国などが提出した決議案を採決し、ロシアが常任理事国の持つ拒否権を行使、否決した。11カ国が賛成、常任理事国の中国に加えインド、アラブ首長国連邦(UAE)の計3カ国が棄権した。

 ロシアの拒否権行使は当然視されていたが、米国などは多くの賛成票を得ることで国際社会でのロシアの孤立を印象付けたい考えだった。ロシアの友好国・中国が反対ではなく棄権にとどまったことを評価する見方がある一方、理事国間の温度差もにじむ結果となった。

 先週はついにロシア軍がウクライナへの侵攻を開始しました。まぁアメリカやイスラエルが軍事侵攻を始めたとき以上の感想を私は持ちませんが、特定の陣営に属している人にとっては全く別の話のようです。「(アメリカの承諾のない)力による現状変更は認められない」と日本政府もメッセージを発信していますけれど、日本がどの陣営に属しているか旗色を明らかにする以上の意味は有さないでしょう。

 当然ながらロシアはNATO陣営と決定的に対立することになった次第ですが、そのマイナスを差し引いてもなおウクライナのNATO加盟を許すよりは得策と判断したものと思われます。アメリカがキューバへのミサイル基地建設を断固として認めなかったように、他国の政治判断とは言え許容できないものは当然ながらロシアにもあるわけです。

 今起こってしまったことから我々が学ぶべきは、軍事侵攻に至るまでの外交上の失敗にあると言えます。ロシア側の要求は日本ですらも歪曲なく伝えられている通り、NATOの不拡大でした。NATOという軍事同盟の東方進出に歯止めをかけることさえ出来れば、戦争を回避できたことは明白です。ではなぜ外交上の解決が選ばれなかったのか、未来に向けて問われるべきものがあります。

 NATOの拡張を諦めることは、客観的には至って平和的な解決策です。ただNATO陣営から見れば、それはロシアの要求を受け入れることであり、外交上の敗北でしかなかったのでしょう。ロシアの要求に「屈する」ぐらいならばウクライナが戦場になることも辞さない、そこでロシアを悪者に出来れば外交上はNATOの勝利と言えますし、交戦していない以上は軍事的な敗北でもない、NATOは何も傷つかないわけです。

 60年前にはソ連がキューバからミサイル基地を撤去することで、決定的な衝突へと発展する前に外交的な解決が図られました。これと同じことが、現代において不可能であったはずはありません。外交的解決は可能でしたが──それが選ばれなかった結果として今に至ります。キューバ危機においてボールを持っていたのはソ連でした。ではNATO拡大において決定権を持っていたのは誰だったのでしょうかね。

トランプ氏、プーチン氏を「天才」 ウクライナ東部の独立承認めぐり(朝日新聞)

 「天才だ」「抜け目のない男だ」。ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部地域の「独立」を承認したことについて、トランプ前米大統領が22日に出演した保守系のラジオ番組で、こんな発言を連発した。

 トランプ氏は「私はテレビで見て、『天才だ』と言ったんだ」と発言。さらに「プーチンはウクライナの広い地域を『独立した』と言っている。私は『なんて賢いんだ』と言ったんだ。彼は(軍を送って)地域の平和を維持すると言っている。最強の平和維持軍だ。我々もメキシコ国境で同じことをできる」と話した。

 さてトランプ大統領時代には国際的な軍事衝突が少なかったと賞賛する人もいるわけですが、いかがなものでしょう。トランプがロシアに好意的であったのは明らかで、ロシアによるサイバー攻撃が疑われていたときもトランプは「中国の仕業ではないか」と根拠なく主張していました。至って個人的な「好き嫌い」こそトランプ外交の根幹でしたが、それが衝突回避に影響していたのでしょうか?

 もしアメリカが日本や韓国に米軍基地を次々と新設し、極東方面を攻略できるような体制を構築するようなことがあれば、当然ながらロシア(ついでに中国)の強い反発を買うことになります。しかるにトランプが行ったのは真逆に近く、米軍基地の受け入れ国に対して負担増を求めるものでした。これが平和的な意図であったかはさておき、結果的にロシアや中国から見れば自国への脅威を増すものではないと見なされていたと言えます。

 一方でバイデンは伝統的なアメリカ外交を継承し、トランプ時代に道化となりつつあったアメリカを再び偉大な国へとばかりに、アメリカの同盟国や衛星国を巻き込んで中国やロシアとの対決姿勢を深めています。自らの嫌う国を罵るばかりであったトランプと違い、バイデンの外交姿勢はより実効性の強い覇権主義と理解されるものですが、それを可能にしてきた国政政治におけるアメリカの絶対的な優越が揺らいでいるのが現代ではないでしょうか。

 国際的な対立をアメリカの望む形で解決する、その過程では軍事力の行使も辞さない、パクス・アメリカーナはソ連崩壊から四半世紀余り続いてきました。しかし時代は移り変わるものです。アメリカの意のままにならない国も力を付けてきました。NATO側も今後は外交的な譲渡を選択肢として持つ必要がある、それが出来なければロシアと同じような判断を下す国が続いても驚くには値しません。

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