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ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)は2月、新しいロイヤルティプログラム「VS&ピンク・コレクティブ(VS & Pink Collective)」の運用を開始した。ブランドが初めて提供するもので、支払い方法に関係なく支出に応じた報酬が得られるプログラムだ。
VS&ピンク・コレクティブは、買い物客がヴィクトリアズ・シークレットやピンク(Pink)で消費すると報奨ポイントを受け取れるようにする。これまで、このような報奨は同ブランドのクレジットカードを持つ顧客だけが利用できた。新しい階層プログラムでは、店舗内とオンラインのどちらでも、顧客が多く消費するほど多くの報奨がもらえる。
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ヴィクトリアズ・シークレットのマーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるサラ・シルベスター氏は、このプログラムが顧客からの要求に応じて、より現代的なポイント付与方法を導き出すために作られたと、米モダンリテールに語った。同氏は、このプログラムが顧客獲得および顧客維持のツールをめざしたものだという。
「これは、当社が、顧客にとって現代的で便利な体験を推し進めるために必要な部分だ」と、同氏は述べる。
若年層への訴求を強める
このプログラムは、パンデミックの発生以来、アパレルブランドが、顧客を呼び込むために無料で利用できるロイヤルティプログラムを立ち上げるという、より大きな流れの一部だ。たとえば、デビッズブライダル(David’s Bridal)は2020年後半にダイヤモンドロイヤルティプログラム(Diamond Loyalty Program)を開始し、ザ・ノース・フェイス(The North Face)は2021年に自社のプログラムを刷新してXPLRパス(XPLR Pass)という名称に変更した。さらに最近の例として、Jクルー(J.Crew)は8月に報奨プログラムをアップデートしたほか、女性向けのラグジュアリーアパレルブランドのエムエムラフルアー(M.M. LaFleur)は10月に限定版のロイヤルティプログラムを開始した。
ブランディングの観点から、ヴィクトリアズ・シークレットのプログラムは、ブランドのイメージを一新し、若年層への訴求をめざすマーケティング改革の一環として開始したものであり、イメージやメッセージングにおいて多様性と包括性を重視している。
VS&ピンク・コレクティブは、同ブランドがこれまで行ったなかで、もっとも十分な顧客情報に基づいて開始した取り組みでのひとつであり、プログラムの開発中には、何度も意識調査を行ったとシルベスター氏は述べている。
「この調査は、取り組みの名前からカスタマージャーニー全体に至るまで、我々のベネフィットを作り上げるため大きく役立った」と、同氏は述べている。
階層ごとに異なる特典
このプログラムは、ヴィクトリアズ・シークレットの顧客層の30%程度を対象に試験的に行われる。対象者は、同社がより幅広い顧客層を反映すると考える郵便番号に基づいて選択されている。試験後は、プログラムの全国展開を予定しているという。同ブランド専用の既存のポイントプログラムであるピンクネイション(Pink Nation)は廃止されるが、利用者はプログラムの一環として、ピンクネイションとヴィクトリアズ・シークレットの両方で共通のポイントを獲得できる。
多くのロイヤルティプログラムと同様、VS&ピンク・コレクティブもポイントベースの階層を使用する。買い物客は1ドル(約136円)の消費ごとに5ポイントを獲得し、2000ポイント獲得ごとに、つまり400ドル(約5万4400円)の消費ごとに、10ドル(約1360円)の報奨を受け取る。年間300ドル(約4万800円)以上消費するメンバーはオールアクセス(All-Access)階層に昇格し、750ドル(約10万2000円)でVIP階層になる。ヴィクトリアズ・シークレットのクレジットカードを使用すると、さらに多くのポイントを獲得できる。
また、すべてのメンバーは送料無料で、10ドル(約1360円)の誕生日クーポンもある。上の階層のメンバーにはポイントが2倍になる日や、記念日割引もある。
ロイヤルティプログラムが消費に与える影響
フォレスター(Forrester)でロイヤルティプログラムを調査しているメアリー・ピレッキー氏は、パンデミックがはじまってから新しいロイヤルティプログラムの開始が増えたと語る。
「顧客を失ったブランドは、失った顧客を取り戻そうとしている。それらの顧客を獲得したブランドは当然、その維持をめざしている」と、同氏は述べている。
成人の10人に9人近くは、少なくともひとつのブランドのロイヤルティプログラムに加入していると同氏は述べ、もっとも人気があるのは食料品ブランドだと語る。主な動機となっているのは資金を節約できる点で、74%はそれが理由で加入したと答えている。
「現在の経済の状況から、消費者は消費を抑える方法を探し求めている」と、同氏は語る。
ブランドの観点からは、顧客を維持できる利点がある。さらに63%は、どこで購入をするかにロイヤルティプログラムが影響していると語り、64%はロイヤルティプログラムがあるときの方が多くの金額を消費すると述べている。
ピレッキー氏は、階層があって、顧客が多く消費するほど特典が増えていくという点で、コレクティブは「平均的な」作りのプログラムだと述べている。もっとも優れているのは、ヴィクトリアズ・シークレットのクレジットカードに付随する特典だといい、手数料の一部を受け取れる小売業者にとって、これらの特典は付加価値をもたらすものであると、同氏は説明する。
「ブランドは、顧客をつなぎ止めておくあらゆる方法を探し求めている」と、同氏は述べる。
顧客がブランドとつながるための新しい方法
プログラムの作成において、ヴィクトリアズ・シークレットとピンクの両方のブランドで消費を合算するべきか、するならどのようにすべきかが話し合われたと、シルベスター氏は語る。最終的に、顧客の大多数は両方のブランドで消費しているため、両方を統合するのが妥当だったと、同氏は述べている。
「当社のもっとも熱心な顧客は、すべての分野にわたって買い物を行う。そして、そのような顧客が、当社のウェブサイトでも、ほとんどの店舗でも、両方での買い物を希望するのなら、バスケットの中身にかかわらず同じように取引をする」と、同氏は述べている。
シルベスター氏は、この階層システムは、厳格なクレジットカードに基づく報奨システムよりも現代的な報奨の方法だと語る。それは、その構造だけではなく、買い物客がブランドとつながるための新しい方法が生まれるためだ。
コレクティブのメンバーはアプリベースのコミュニティにアクセスでき、商品について質問し、ブランドやほかの顧客から回答を得ることができる。たとえば、服装に合うような特定のスタイルのブラを見つけるのを手伝ってもらったり、好きなフレグランスについて盛り上がったりできると、シルベスター氏は述べている。
「当社が誰でもアクセスしやすい場所だと示すことで顧客層を拡大し、同時に、当社ですでに買い物をしたことがある顧客には、何かを買うためであれ、単にコミュニティをチェックするためであれ、再度戻ってくるきっかけになることを期待している」と、同氏は述べている。
[原文:Why Victoria’s Secret is modernizing is loyalty program to reach more shoppers]
Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Victoria’s Secret