ストリーミング 広告、表示されすぎ? されなさすぎ?:異なるサービスでの表示制御は困難

DIGIDAY

数年前、視聴者への広告表示頻度の管理に対するストリーミング広告主の取り組みについて書かれた記事で、その問題の上限に達したかと感じたが、筆者が間違っていた。エージェンシー幹部によると問題は改善してきたが、ストリーミングのオーディエンスに対する広告の過剰な表示と過少な表示のあいだでバランスを取ることが、引き続き課題となっている。

「改善しつつあるが、まだ問題だ」と、UMワールドワイド(UM Worldwide)のエグゼクティブバイスプレジデントで統合投資担当マネージングパートナーを務めるマーシー・グリーンバーガー氏は言う。

要点:

  • ストリーミングの広告主は、広告の表示頻度が過剰な視聴者と過少な視聴者がいる問題に苦慮している。
  • 広告主が広告の表示頻度をより厳密に管理できる手段はあるが、出費をともなう。
  • Netflixとディズニープラス(Disney+)は、広告主のために表示頻度を管理しようというストリーマーの意欲の変化を証明しているのかもしれない。

上限管理の課題

多くの場合は、個々の視聴者が毎週、同じ広告を何度も表示されすぎることが問題だ。通常、広告主は、動画広告が同じ人物に表示されるのを週に2、3回に制限しようと努めるが、ブランドカテゴリーによっては4回まで増やすことができるとグリーンバーガー氏は説明する。しかし、一部の視聴者はその閾値を3回以上超過する状況が続いている。

「平均的なブランドを見ると、CTVの表示頻度曲線は、リニアTVの表示頻度曲線と同じか、それ以上に悪い」と、広告主とエージェンシーのブログラマティックバイイングの管理を専門とするマイキュー(MiQ)でアドバンスドTV担当グローバル責任者を務めるモハマド・チュグタイ氏は語る。

その点について、チュグタイ氏は、米国の4300万世帯に関するマイキューのデータを利用して、従来型TVおよびストリーミングで展開された、あるブランドのキャンペーンの週間広告表示頻度を示す下のグラフを共有してくれた。そのブランドのストリーミング広告は、視聴者の80%では標準的な表示頻度にとどまっていたが、上位20%の視聴者(ストリーミングに費やす時間が最も長い視聴者)に対しては週に12回以上表示されていた。

ある広告主の広告表示頻度の分布 出典:マイキュー

広告表示の制御が困難なストリーミング

だが、ストリーミングについては、過剰表示の問題に直面しているオーディエンスと広告主がいる一方で、逆の過少表示も問題であり、上のグラフを見れば明らかなように、広告主は一部の視聴者に十分な回数リーチするのに苦労している。

「主要なパブリッシャー全体で各視聴者1人当たり平均週3回の広告表示頻度を目標にキャンペーンを実施し、かろうじて3回に達することができた」と、あるエージェンシー幹部は述べている。

そうした経験は、アドテク企業イノヴィッド(Innovid)が2021年に公表した調査結果と一致する。この調査は、36のCTV広告キャンペーンを追跡し、85%の世帯が1、2回しか広告が提示されていなかったという結果が出ている。

ストリーミング広告の表示頻度の管理問題が生じるのは、広告主が異なるストリーミングサービスで広告掲示を制御するのが困難であることが主な理由だ。個々のストリーマーは、サービス内での広告表示に上限を設けられるが、ある人物が、複数の広告付きストリーミングサービスを毎週利用し、広告主が各サービスでキャンペーンを実施している場合は、広告が過剰に掲示される傾向がある。

予想されたペースで進まない規模拡大

広告をプログラマティックで購入している場合は、広告主はDSPでこうしたサービスを横断して広告表示を管理できるが、一般に、広告主はストリーミングキャンペーン向けに複数のDSPを確保する必要がある。また、プログラマティックでのストリーミング広告購入の管理により、広告主は妥協を迫られる可能性がある。

「有料サービスの一部は、プログラマティックプライベートマーケットプレイスか、オープン・アドエクスチェンジのどちらかで購入する場合、アクセス可能なサプライを制限することになる」とグリーンバーガー氏は言う。

また、厳しいフリークエンシーキャップを求める広告主に負担を強いるストリーミングサービスもある。「一部の企業では、より制限の多いフリークエンシーキャップに高い料金を課そうとするが、これによりパートナーからの支出を妨げたり、削減を促す動機になる可能性がある」と、2人目のエージェンシー幹部は話す。「だが、そうした料金の免除に前向きなところが増えてきている。こうした制限されたフリークエンシーキャップはもはや例外ではなく、期待されることだとして状況が進展することを願っている」。

だが、何が起きるかはわからない。表示頻度管理が例外ではなく期待される事柄であることを示すさらなる兆候かもしれないが、ストリーミング広告市場では、Netflixディズニープラスがそれぞれ、提供を開始したばかりの広告付きサービスで、広告の過剰な提示を抑えるための措置を取っている。

「ディズニープラスとNetflixはいずれも、営業への取り組みで非常に積極的な姿勢をとっていたが、規模拡大が予想されたほど速いペースで進んでいないことにすぐに気づいた。どちらも非常に積極的に、資金を引き揚げるか、あるいはすでに契約している広告主に対して、『貴社のプランが効果を上げて望ましいユーザー体験を確実に提供できるように、資金を引き揚げることを推奨、あるいは必要だ』と言っている」と、2人目のエージェンシー幹部は言う。「しかし、収益を最優先する確立されたプラットフォームの一部については、それが常に当てはまるわけではない」。

「過剰な表示頻度は無駄」

景気低迷は、表示頻度管理問題の2023年の展開における未知の要因かもしれない。

業界の幹部によると、一方では、ストリーミング広告販売業者が取引を確保するために過剰な約束をしたり、広告配信を確実にするためにフリークエンシーキャップを避けてきたという経緯がすでにあるという。

「(広告バイヤーとして)パブリッシャーに『ここに広告掲載用の5000万ドル(約67億円)がある』と言ったとしても、こうしたパブリッシャーに金を取られることを理解していない。『いや、当社は表示頻度の管理があまりできていないから』と言った話になることは決してない」と元ストリーミング幹部は語った。

その一方で、広告主は無駄な広告支出の削減を目指しており、ストリーミング広告の表示頻度の管理は、容易に達成できる目標になり得る。

「過剰な表示頻度は無駄であり、不十分な表示頻度は効果がない恐れがある。だから、広告主が適切にその計画を立て、パブリッシャーがそれを適切に管理することが、引き続き重要だと思う」とグリーンバーガー氏は語った。

[原文:Future of TV Briefing: Frequency management continues to be a challenge for streaming advertisers

Tim Peterson(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:分島翔平)

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