2022年に 投資 と買収を促進した5つの美容トレンド【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

2022年の美容業界の投資とM&Aの動きは2021年ほど活発ではなかったかもしれないが、さまざまなカテゴリーにわたってディスラプターが多額のVCファンドを惹きつけ、また大手コングロマリットへの移行が見られた。

ピッチブック(PitchBook)によると2022年上半期の美容業界の取引数は「100件弱」で、記録的だった2021年を下回っている。ビューティマター(BeautyMatter)のデータでは2022年第3四半期の取引数は前年比で約27%減少ということである。投資家が不安定な経済に対する懸念を表明したため、第3四半期に後期段階の取引が62%減少したことによるこの鈍化は2022年のVC資金調達全体に及んだ停滞の一部だった。

しかし活動は行われており、投資家やコングロマリットは幅広いトレンドを代表するすべての美容カテゴリーに依然として投資を続けている。
だが、ブランドは注目を集めるためにトレンドを追うだけではだめだと投資家たちは述べている。

今年、カヴコンシューマーパートナーズ(Cavu Consumer Partners)はスキンケアブランドのトピカルズ(Topicals)とボディケアブランドのネセセール (Nécessaire)に投資した。カヴの成長担当プリンシパル、ジェナ・ジャクソン氏は次のように語っている。「我々はクリーン(ビューティ)であっても持続可能性であっても、または新規カテゴリーのいずれであってもその分野を開拓している先駆者に注目している。誰が古い型を破っているのか、つまり違うことを行って顧客の購入方法やカテゴリーについての考え方を変革しているのかを当社は考えている」。

2022年のビューティ関連の大規模な取引をすべて網羅するものではないが、複数のブランドの投資活動における際立ったトレンドを以下に挙げる。投資家や創業者によるとこれらの分野は短期的な流行ではなく業界の重要な転換点を反映しているものだという。資金調達とM&A活動が低迷期に入るなか、彼らは以下のようなコンセプトが長期的に安定した成長をもたらすことを期待している。

環境への意識:詰め替え可能、プラスチック代替品、海に優しい製品

美容に関しては投資家は環境に配慮しており、持続可能なパッケージングと原料調達にフォーカスしている企業に賭けている。

詰め替え可能な美容製品は今年投資家のあいだで特に人気が高かった。詰め替えできる家庭用洗剤製品のブランド、ブルーランド(Blueland)は、パーソナルケア製品ラインアップの拡大のために、2月にプライベートエクイティ企業のプレリュードグロースパートナーズ(Prelude Growth Partners)から2000万ドル(約26億円)を調達した。そのラインアップには現時点ではスキンケア、ボディウォッシュ、ハンドウォッシュがある。

また、2月には別の詰め替え可能ブランド数社が投資家の注目を集めた。詰め替え可能なボディケアブランドのユニ(Uni)はガイ・オセアリー氏やアシュトン・カッチャー氏をはじめとする投資家たちから400万ドル(約5.3億円)を調達してローンチした。詰め替え可能でプラスチックを使用しない口紅ケースで知られるメイクアップブランド、ラブーシュルージュ(La Bouche Rouge)は、プライベートエクイティ企業のミラボーライフスタイルインパクト&イノベーション(Mirabaud Lifestyle Impact & Innovation)、シャルーブグループ(Chalhoub Group)、BPIから1000万ユーロ(約14億円)を調達した

プレリュードグロースパートナーズのマネージングパートナー、アリシア・ソンタグ氏は詰め替え可能は「ますます主流になってきている」と述べている。「これらの製品は現在多くのチャネルで広く入手することができ、消費者からは積極的に求められている」。

プレリュードグロースパートナーズが「ディープグリーン」消費者と呼び、「持続可能性は購入するものの基礎」としている人々に加えて、ソンタグ氏はブルーランドは「ライトグリーン」の購入客にもアピールすると語っている。このような人々は「すべてを望んでいる人たちだ。彼らは効能、そして価格面での価値を求めている。サステナビリティとブランドのミッションという観点から自分が購入してよかったと思えるものを求めている」ソンタグ氏。

プラスチック削減のためのパッケージのイノベーションも成功を収めた。たとえば、プラスチック不使用のスキンケアブランド、コモンエアー(Common Heir)は2月に250万ドル(約3.3億円)を調達している。

また、持続可能な原料調達も投資家にとって重要だった。エスティ ローダー カンパニーズ(Estée Lauder Companies)はサステナブルな海藻をベースにしたブランド、ヘッケルズ(Haeckels)に非公開の金額の投資している。

肌の問題を解決

ニキビやシミ、できものは本人にとっては悩みの種だが、VC投資家にとっては大きなチャンスである。

皮膚の悩みに対する解決策を提供する製品は今年の投資のホットスポットだった。スキンケアのスタートアップ、トピカルズ(Topicals)は11月に、色素沈着過剰、黒皮症、できもの、ざらつきなどの皮膚の状態に対処するOTC製品向けに1000万ドル(約13億円)の資金を調達した。

カヴはトピカルズへの投資について、「慢性皮膚疾患のOTC市場を徹底的にディスラプトしているのが気に入った」とジャクソン氏。「当社は(トピカルズの創業者、オラミデ・オロウェ氏が)ディスラプトを狙っているカテゴリー、そして彼女がディスラプトしている方法が気に入った」。

また、ニキビケア、特にポートフォリオにニキビパッチを持っているブランドも投資家から注目された。今秋、ヒーローコスメティクス(Hero Cosmetics)はチャーチ&ドワイト(Church & Dwight)に6億3000万ドル(約836億円)で買収され、ピースアウトスキンケア(Peace Out Skincare)はフィフスセンチュリーパートナーズ(5th Century Partners)から2000万ドル(約26億円)の資金を受け、消費財企業のヘイデイ(Heyda)はジットスティッカ(ZitSticka)を買収した。ニキビパッチを展開していないブランドも好調だった。ニキビ製品にプロバイオティクスを組み合わせたトゥラ(Tula)は1月にプロクター&ギャンブル(Procter & Gamble)に買収された。フェイスリアリティスキンケア(Face Reality Skincare)は9月にノーウェストベンチャーパートナーズ(Norwest Venture Partners)から過半数の投資を受けた。

ヘアのスキニフィケーション

ヘアケアへの最大の投資トレンドのひとつは同時にスキンケアのトレンドでもあった。5月にウエラ(Wella Company)に買収されたブリジオ(Briogeo)は「複数のトレンドが交わるところに存在している」と、ウエラのCEO、アニー・ヤング・スクリブナー氏は述べている。「ブリジオは、1000億ドル(約13兆円)規模のヘアカテゴリーとネイルカテゴリーで持続的な成長を促進するスキニフィケーション化とプレミアム化のトレンドに明らかに対応している」。

ジャクソン氏は「ブリオジオはセフォラで(スカルプケア)を主導した」と述べ、「ヘアとスカルプにおいて多くの取引やイノベーションが登場し始めている」と指摘した。ジャクソン氏の会社、カヴは、2021年にボディケアのラインナップにスカルプにフォーカスしたヘアケアを追加したネセセールへ投資して、10月にこのトレンドの流れに乗った。

多様でインクルーシブなブランド

米国では長いあいだ、BIPOC(黒人、先住民、有色人種の)美容消費者向けの製品を提供するブランドへの投資はあまり行われてこなかった。だが、逃した機会に気づき始めている人は多い。ビューティブランドの創業者たちは、多様なブランドへの投資の増加が一時的な口先だけのサービスではなく、長期的な変化を確実にもたらせるように尽力している。

たとえば、トピカルズがインクルーシビティを重視していることはカヴにとって魅力のひとつだったとジャクソン氏は述べている。また、すべてのヘアタイプに対応するというブリジオの多様性への取り組みは「DEI(多様性・公平性・インクルージョン)と持続可能性をコアに取り入れて会社を構築するという当社の深い取り組みと一致している」とヤング・スクリブナー氏は語っている。

質感のある髪に対応する複数のブランドも今年投資を獲得した。アドウォアビューティ(Adwoa Beauty)は9月に戦略的成長投資・アドバイザリープラットフォームのペンデュラム(Pendulum)から400万ドル(約5.3億円)の投資を受けた。また、質感のある髪向けのサプリ・ヘアケアブランド、インヘアケア(In Haircare)は3月にロクシタングループ(L’Occitane Group)のVCファンドであるオブラトリ(Obratori)が主導した資金調達で投資を受けた。ヘアエクステンションブランドのノウリエ(Nourie)はインパクトアメリカファンド(Impact America Fund)、ベターベンチャーズ(Better Ventures)、SOSVのインディーバイオ(IndieBio)が主導するシードラウンドで250万ドル(約3.3億円)を9月に調達した。

あらゆる肌色に対応するシェードを提供することで知られているインクルーシブなメイクアップブランドも今年、投資家の注目の的だった。メンテッドコスメティクス(Mented Cosmetics)は1月に500万ドル(約6.6億円)のシリーズAラウンドを完了。ザ・リップバー(The Lip Bar Inc.)は9月に670万ドル(約8.9億円)の資金調達ラウンドを完了した。ザ・リップバーの調達ラウンドはペンデュラムが主導し、エンデバー(Endeavor)とフィアレスファンド(The Fearless Fund)が関与した。

際立つコンセプトのあるクリーン

最後に、今年は、定義がまだ曖昧な「クリーン」に該当するビューティブランドが投資を独占した。だが、ジャクソン氏は「クリーンというのは最低条件」と述べ、クリーンビューティブランドが投資家を惹きつけるためにはもっと開発されたコンセプトが必要であると強調している。たとえば、ネセセールへに対するカヴの投資(金額は非公開)に関して言えば、ボディケアカテゴリーにおけるネセセールのイノベーションはその成分リストと同じくらい重要だったのである。

「ネセセールがボディケアについて考えるべき方向への動きを先導したと感じている。いまでは消費者はクリーンについて考え、ボディケアの悩みを解決するためにクリーンで効果的な方法を求めている」とジャクソン氏は述べている。

現在では、ほとんどの主要な美容コングロマリットのポートフォリオにクリーンを謳うブランドが少なくともひとつはある。今年、クリーンブランドを買収した企業には、3月にイリア(Ilia)を買収したクラランスの親会社であるファミーユC(Famille C)、同月にロクシタンを買収したグロースアルケミスト(Grown Alchemist)、9月にタタハーパー(Tata Harper)を買収したアモーレパシフィック(Amorepacific)がある。

一方、12月13日に1200万ドル(約16億円)のシリーズBラウンドを完了したインビューティ(Innbeauty)はクリーンな成分だけに依存しているのではない。同社はクレドビューティ(Credo Beauty)で取り扱われており、「クリーン・アット・セフォラ(Clean at Sephora)」指定を受けているが、マーケティングにおいては、成分の効果や手頃な価格、カラフルでZ世代にフレンドリーなブランディングにもフォーカスしている。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: 5 beauty trends that attracted investment and M&A deals in 2022

LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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