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再販売マーケットプレイスのスレッドアップ(ThredUp)は、買い物客の目をファストファッションから引き離し、資源の節約を心がけようとしている中古品の買い物客が増えつつあるトレンドに乗じようとしている。
ナバ・ローズ氏との共同キャンペーン
同社は2月2日木曜日、中古ファッションのTikTokerであるナバ・ローズ氏と共同のキャンペーンを発表した。バレンタインデーをテーマにしたスレッドアップのショップ「ファストファッションを捨てよう(Dump Fast Fashion)」では、ローズ氏による3つの特徴的なスタイルが展示され、買い物客はスレッドアップの在庫のなかから、自分たちにもっとも適したものを見つけることができる。
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これは、拡大しつつある反ファストファッションの世論に対して、再販売の世界がどのように応えているかを示す最新の例だ。スレッドアップの統合マーケティング担当バイスプレジデントを務めるエリン・ウォーレス氏は、このキャンペーンが、資源の節約を望んでいながらファストファッションを多く購入している、Z世代の買い物客に特に多く見られる葛藤に向き合うことをめざしたものだと、米モダンリテールに語った。
スレッドアップ自身のマーケットプレイスには、シーイン(Shein)から1万点以上、ザラ(Zara)から1万7000点以上、H&Mから2万3000点近く、フォーエバー21(Forever21)から2万3000点以上の商品が展示されている。
ウォーレス氏は次のように述べている。「3人に1人以上の消費者は、今年中にファストファッションの購入を止めたいと思っている。だが、その行動は必ずしもデータに反映されていなかった。当社は、この方向性を推し進め、ウルトラファストファッションに関する認知を促進し、特に「変わりたい」というZ世代の思考に留まるよう働きかけていく」。
ファストファッションに反対する流れ
スレッドアップがファストファッションによる資源の浪費を掲げたマーケティングキャンペーンを開始するのは今回がはじめてではない。昨年6月に同社はベイエリアの買い物客にクーポンを配り、シーインのポップアップ店舗をボイコットするよう求めた。さらに8月には、「ストレンジャー・シングス(Stranger Things)」の主役のプリア・ファーガソン氏と協力し、持続可能なショッピングのヒントを教える「ファストファッションを止めよう」ホットラインを開設した。
ほかの再販売ブランドも、この変化に注目している。ポッシュマーク(Poshmark)では、自社のマーケットプレイスでのファストファッションの売上が減少している。米モダンリテールに提供されたデータは、プリティリトルシング(Pretty Little Thing)、ファッションノバ(Fashion Nova)、シーインの検索が、2022年10月から2023年1月までに、前年と比べてそれぞれ43%、33%、25.8%も減少したことが示されている。一方で、ベスティエールコレクティブ(Vestiaire Collective)は昨秋、自社のマーケットプレイスでいかなるファストファッションブランドも扱わないと発表した。
スレッドアップのウォーレス氏は、ファストファッションに反対する流れは、アパレルから生まれる廃棄物を減らしたいという想いから来たものだと語る。EPAによれば、2018年には合計で9070トンを超える衣服とフットウェアが埋め立てられ、2000年の2倍以上の量となった。
「結局のところ、これらのウルトラファストファッション企業が生産を減らさない限り、我々はこの無意味な問題を抱えることになる。大規模な行動変化によって、企業の生産という究極の問題点にメッセージを送り返す必要がある」と、同氏は述べている。
高品質の中古品
インスタグラムやTikTokでは、ファッションインフルエンサーがフォロワーに対してファストファッションの引き起こす害について警告する傾向が強まっている。また、さらに一歩進んで、中古品でさえ購入を拒否している人もいる。
フィービー・ジョーゼフ氏はモデルで、サステナビリティの提唱者であり、インスタグラムで古着の着こなしを紹介している。同氏は、ファストファッションの品物が中古市場にあふれかえっている状況では、「宝物」を入手することが困難なことに着目した。多くの買い物客は、トレンドのブランド、ビンテージグッズ、そのほかの高価な衣服に特化してキュレーションされたブティックに出向くことを好む。
それでも、同氏は、市場にはファストファッション再販売のための居場所があると考えている。ファストファッションの衣服はどのみち製造されるし、ゴミとして埋め立てるよりはマシな使い方だと、同氏は述べる。
「ファストファッションを中古市場で購入するのは、新品で買うよりずっと良い方法だ」と同氏は述べている。「このような企業の裏の側面をよく知っていれば、そのブランドを購入するときに矛盾した感覚を覚えるものだろう。しかし、人々がこのような衣服を中古で購入する習慣ができれば、新品のファストファッションへの需要は減少していくだろう」。
ポッシュマークのマーチャンダイジング責任者を務めるクロエ・バファート氏も、安価な服装を探している人々は、新品のファストファッションのサイトよりも再販売プラットフォームをまず探すべきだと述べている。
ビンテージへの関心
しかし全体的に、消費者は再販売で高品質のブランドを買い求める方向に変わりつつある。具体的な数値は明かされていないものの、エバーレーン(Everlane)、ガールフレンドコレクティブ(Girlfriend Collective)、パタゴニア(Patagonia)、リフォーメーション(Reformation)などのブランドの売上はいずれも2022年10月から2023年1月にかけて前年同期比で増加した。
また買い物客は、よりビンテージの品物も探しており、ポッシュマークでの検索は2022年11月から2023年1月にかけて前年比で11.8%増加した。
バファート氏は次のように述べている。「買い物客は、ファストファッション小売業者からの複製品を購入するより、ソーシャルメディアプラットフォームでトレンドのスタイルを真似できるようなビンテージの衣服を探している」。
スレッドアップは、自社でファストファッションの在庫がどの程度売れているのか、買い物客がそれらを避けているかどうかというデータを共有していない。しかし、同社はシーイン、H&M、ファッションノバ、そして、ターゲット(Target)の自社ブランドであるワイルドフェイブル(Wild Fable)など、数百のブランドの品物に関して支払いの対象外としている。
ウォーレス氏は次のように述べている。「ウルトラファストファッションの品物には再販売の価値がないということは、ますます明確に伝えられるようになっていくと考えている。そして、購入の時点で再販売の価値についてより深く検討がなされ、対話が促進されるようになることが望ましい」。
どのくらいの価値がある?
モーニングコンサルト(Morning Consult)の小売およびeコマースアナリストのクレア・タシン氏は、ビジネスの観点から、再販売のマーケットプレイスがファストファッションで利益を得ることは「極めて困難」な可能性もあると語る。ポッシュマークのようなピアツーピアネットワークでは、売り手はわずかな利益を得ることができるかもしれないが、大規模な委託販売先店舗の運用では採算が取れないだろうと、同氏は述べている。
「業者は引き取ったボックスを開梱して衣服を検査し、写真を撮影する必要がある。その衣服をシーインの価格からさらに割引で売らなければならないとしたら、採算を取ることは困難だろう」と、同氏は述べている。
スレッドアップのウォーレス氏は、ファストファッションには再販売の価値がほぼないと語る。同社は特定のファストファッションの品物に対して、売り手に支払いを行わない。販売できない品物はリサイクルや再流通のためサードパーティーに送られる。
過剰な品物を引き取ると倉庫での処理に支障をきたし、売り手の品物の処理が遅延または中断することになると、同氏は述べている。
「これでは当社での処理とリスト登録のコストさえ回収できない。消費者が最良の結果を求めるなら、ボックスに何を入れ、何を委託するのかを十分に検討する必要がある」と、同氏は述べる。
[原文:Resale platforms like ThredUp are rebelling against fast fashion]
Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via ThredUp