高速宅配のゴーパフ、「できたて」料理で事業成長狙う:自社でピザブランドも開発

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ゴーパフ(Gopuff)は、自社の高速配達サービスを成長させるため、作りたての食品に賭けようとしている。

同社のもっとも新しい部門であるゴーパフキッチン(Gopuff Kitchen)は昨年7月に操業を開始し、一部の市場でテストをおこなってきた。同社は、トラッフ(Truff)やチャンバーレイン・コーヒー(Chamberlain Coffee)など新興の飲食ブランドと協力し、独自のコラボレーション料理の販売を開始した。

ゴーパフによれば、ゴーパフキッチンはプライベートブランドであるベーシカリー(Basically)とともに、同社の次の成長分野である。これらのコラボレーションは今後数カ月にわたって持続的に行われ、同社のアプリやマーケティング・チャネルで重点的に宣伝されている。テイクアウト配達業界はすでに競合が激しいが、同社は、自社運営と、マイクロフルフィルメントセンターによってサービスを差別化できることに賭けている。同社によれば、現在のところ注文の10〜20%をゴーパフキッチンの注文が占めている。

自社でピザブランドをスタート

ゴーパフキッチンを作り上げるため、同社は3月にこの部門のバイスプレジデントとしてアメリア・リバ氏を招き入れた。リバ氏は過去にペプシ(Pepsi)やネスレ(Nestle)など両方のCPG複合企業で役職を務めたのち、ピザハット(Pizza Hut)とバーガーキング(Burger King)の親会社であるヤム・ブランズ(Yum! Brands)からゴーパフへとやってきた。また、ゴーパフは2021年後半に、ホールフーズ(Whole Foods)の元調理ディレクターであるアラン・モーガン氏を、調理ディレクターとして招き入れた。同社によれば、ゴーパフキッチンは現在70を超える配送エリアで操業しており、そのほとんどはニューヨークやマイアミなどの主要都市に集中している。しかし、同社は今後1年間に規模の拡大を予定している。

「過去数年間における消費者の変化から、ゴーパフで新鮮な食品のビジネスを作り上げる大きな機会があると私は考えている」と、リバ氏は米モダンリテールに語った。

ゴーパフキッチンが最初に販売したのはピザで、これはリバ氏によれば夕食と深夜配達における大きなカテゴリーだ。同社はこのコンセプトの実験を約9カ月前に開始した。「もっとも重要なことは、ピザ、バーガー、チキンなど従来からある配達カテゴリーに新しい要素を加えることだ」と同氏は述べている。

ゴーパフキッチンは5月はじめ、キッチン部門初のブランドとしてザ・ミーン・トマト(The Mean Tomato)を立ち上げた。このブランドは、ソースのブランドであるトラッフ(Truff)とマイクズホットハニー(Mike’s Hot Honey)から提供されるフレーバーを組み合わせた特選ピザと、サイドディッシュやデザートを提供する。ゴーパフキッチンは昨年後半に、ザ・ミーン・トマトのピザにトラッフの代表的な商品である黒トリュフのホットソースをかけるというコラボレーションを実現するため、トラッフにコンタクトを取った。このパートナーシップは、トラッフが2020年前半に自社商品をゴーパフで売り始めたあとで生まれたものだ。

ゴーパフキッチンは5月後半にかけ、ベーコンとチェダートッツに加え、チョコレートとカラメルのワッフルも発売した。

客単価の増加に寄与

リバ氏は、ゴーパフキッチンでは、顧客が日常的に購入するCPGの必需品と一緒に、調理したての温かい食事も注文するようになることに重点を置いていると付け加えている。「当社の構想は、我々のブランドのコンセプトと、我々のキッチンで調理するパートナーのコンセプトが、すべて一緒に提供されるプラットフォームを持つことだ」。

ゴーパフが他社と一線を画すのは、カスタマーエクスペリエンス全体を所有・管理していることだと、リバ氏は語る。これには、顧客サービスの対話や、ゴーパフのフルフィルメントセンターのダークキッチンも含まれる。同氏はこのモデルを、従来型の配達プラットフォームであるグラブハブ(Grubhub)やウーバーイーツ(UberEats)などが既存のローカルレストランと提携した場合の仕組みとは対照的なモデルであると指摘した。

「我々のチームはそれぞれ、注文を受け、調理し、配送を行うまでの責任を負っている」と同氏は述べている。各キッチンには現地市場のニーズに応じた営業時間が決められている。たとえば、キッチンは午前10時から営業しているキッチンもあれば、深夜の午前1時まで配送を行うキッチンもあると、同氏は付け加えている。

ゴーパフキッチンの商品があることによって、平均注文価格が増えるとともに、ゴーパフが1日のさまざまな時間帯で顧客にアプローチすることができている。「次第にこれらの利用者のあいだでバスケットサイズの増大が見られている」と同氏は述べている。

リバ氏は、ゴーパフの顧客にとって、ゴーパフキッチンでの最初の注文は「一般的にはお試しだが、これらの顧客がまた戻ってきてゴーパフキッチンで注文するのを目にしている」と述べる。

信頼と認知の獲得

ゴーパフキッチンがもうひとつ重視している部分は料理の地域性だと、同氏は説明する。同社はこのために現地の有名なチェーン店との提携をめざしている。たとえば現在は、フロリダのローカルチェーン店であるバーガーファイ(BurgerFi)とのコラボレーションバーガーをテスト中だ。

もうひとつの新しいパートナーシップとして、インフルエンサーであるエマ・チェンバレン氏の会社のコーヒーを使用したオーダーメイドのコーヒーやラテを提供している。このブランドはチェンバレンコーヒーという名前で、昨年8月にゴーパフで販売を開始した。この新たに作られたメニューは、先月ニューヨークで発表され、「非常に好評だった」とリバ氏は付け加えている。

CPGブランドには、オーダーメイドのコラボレーションでゴーパフと提携する機会があるとリバ氏は語る。「我々のキッチンのコンセプトに関心を持っているCGPブランドに接触している」と同氏は述べる。この動きは、高速配達サービスによるCGP新興企業への勧誘が強まっていることに歩調を合わせたものだ。

リバ氏は、キッチン部門の成長における最大の課題は、それ自体への認知を作り上げることだと語る。もうひとつの課題は「食品への信頼性を確立する」ことだ。配達分野は業者の数が多いため、「顧客に類例のない体験を与え、その背後に当社ブランドがあるようにしたい」と同氏は語っている。

生き残りをかけた投資の行方

ゴーパフはここ数カ月、多くの課題に直面してきた。同社は全世界で合計1万5000人の従業員のうち3%をレイオフした。また、稼働量の少ないフルフィルメントセンターを最大で22カ所閉鎖すると5月に発表した。これは、高コスト地域における高速配達を拡大するための経費を強調するものだ。

コアサイトリサーチ(Coresight Research)のグローバル調査責任者を務めるジョン・マーサー氏は、ゴーパフの温かい食品を扱う意欲的な事業にはいくつかの利点と障害があると語る。

「ゴーパフは、近接性から有利な位置にあるが、数多くのダークストアをキッチンに改造する、または多数の新しいダークキッチンを開店するのは、かなりの投資が発生するだろう」と同氏は述べている。

さらに同氏は、ゴーパフが参入しようとしているのは、レストランデリバリーという比較的成熟した市場であり、「食料品の高速配達よりも開発が進んでおり、すでに大手業者が確立されている市場だ」と述べている。同時に、これらの競合他社もまた、自社の食料品の品揃えを拡大することで、逆の方向に移行しつつあると、同氏は説明している。

これまでのところ、ゴーパフキッチンは夕食用の料理に注力してきた。次に昼食にも手を広げ、やがては朝食用のメニューも作り上げようとしている。

リバ氏は次のように述べている。「当社が作りたての食品に賭けているのは、垂直統合型であることが利点となるからだ。フルフィルメントセンターを保有していることで、食品をより短時間で顧客に届けられる」。

[原文:How Gopuff is building its fresh food delivery concept]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Gopuff

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