寿命を延ばす上で有望な「5つの科学的手法」とは?

GIGAZINE


多くの人々が「長生きしたい」という願いを持っており、長寿に関連して「人間は130歳まで生きられる」「どこに住んでいるのかが寿命に影響する」「人生に目的を持つ人は長生きしやすい」といった科学的知見も蓄積されています。イギリス・ブライトン大学のRichard Faragher教授らが解説する「寿命を延ばす上で有望な5つの科学的手法」には、一般人が今日から実践できるものも含まれています。

Life extension: the five most promising methods – so far
https://theconversation.com/life-extension-the-five-most-promising-methods-so-far-169881

◆1:栄養とライフスタイルの改善
「健康的な食生活を送る」というアドバイスは至る所で目にするかもしれませんが、実際に大規模な調査では「体重増加に気をつけ、喫煙せず、アルコールを適度な量に抑え、1日に少なくとも約400gの野菜と果物を食べる人は、肥満だったり、喫煙習慣を持っていたり、お酒を飲み過ぎたりする人と比べて寿命が7~14年長い」との結果が示されています。また、カロリー制限食事の回数を減らすといったことも、寿命の増加や病気のリスク減につながる可能性があると報告されています。


◆2:適度な運動
世界全体で見ると、冠状動脈性心疾患2型糖尿病、さまざまながんといった慢性疾患による死亡例の10%近くが「運動不足」によって引き起こされているとのこと。もし地球上の全員がただちに適切な運動を始めれば、健康な人の平均余命は1年近く延びるとFaragher教授らは指摘しています。また、「週50分以上のランニングが心臓病やがんのリスクを軽減する」「体力がない人はメンタルヘルスが悪化しやすい」といった研究結果も報告されており、運動は心身に好影響をもたらすそうです。

一方で、運動のしすぎは悪影響を及ぼすことが知られており、運動負荷が高すぎると筋肉の断裂や捻挫といったケガを引き起こすほか、過度の運動は免疫系を抑制して感染症にかかりやすくなるとの研究結果もあります。Faragher教授らは、中程度から激しい運動を1日30分を越える程度行えば十分であり、炎症の軽減効果も得られると述べています。


◆3:免疫システムの強化
どれほど食生活に気を配ろうと、あるいは運動をしようとも、残念ながら体の免疫システムは加齢と共に衰えていきます。免疫システムに関わる胸腺は思春期の頃に最大となり、その後は次第に小さくなっていくため、年齢を重ねると感染症を患いやすくなったり、ワクチン接種への反応が悪くなったりします。リンパ球の一種であるT細胞は胸腺で分化や成熟をするため、胸腺が小さくなったり退化したりすると免疫システムが弱まって感染症への抵抗力が下がるほか、がんを効果的に攻撃できなくなるとのこと。

免疫力を高める方法には、ビタミンAやビタミンDをはじめとする十分なビタミンを摂取することが挙げられます。また、近年では免疫システムを向上させるインターロイキン-7(IL-7)を用いた治療の研究も進んでいるほか、免疫細胞に働きかけて体内のゴミを取り除くスペルミジンといった化合物にも注目が集まっています。


◆4:細胞の若返り
細胞の老化は慢性的な炎症や病気を引き起こし、本質的に生物学的な老化をもたらす原因となります。2009年の研究では、ストレスや栄養に対して細胞反応を調節するタンパク質・mTORを阻害するラパマイシンという薬剤を成熟したマウスに与えたところ、より長生きで健康になることが示されました。研究室内の実験では、ラパマイシンが古い細胞を若い細胞のように振る舞わせることが確認されており、実際に低容量のラパマイシンが人の老化を遅らせるかどうかを確かめる臨床試験もスタートしています。

不老不死の霊薬である「エリクサー」にもたとえられるラパマイシンは、複数のメディアで称賛を受けており、認知症の症状を呈したマウスの記憶力を向上させるとの研究結果も報告されています。しかし、ラパマイシンの免疫抑制効果はかなり強いため、多くの医師は加齢に伴う疾患を防ぐためにラパマイシンの投与を検討することに否定的だそうです。一方で、ラパマイシンと同様の方法で機能しながらも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染率や重量化リスクを下げるRTB101といった薬物も見つかっており、細胞老化を防ぐ薬剤の研究は日々進んでいます。


◆5:老化細胞の除去
マウスの実験では、体内に蓄積した老化細胞を取り除くことによって臓器がより健康になり、がんの発症も遅くなったことで、老化細胞を取り除かなかったマウスより長生きしたことが示されています。また、順天堂大学の研究チームは「老化細胞を除去するワクチン」を開発してマウスで実証しており、寿命を延ばす方法として老化細胞の除去が注目を浴びています。

また、重度の特発性肺線維症を患う人に老化細胞除去薬を投与したところ、歩くことができる距離や速さの改善といった機能的回復が確認されたとの研究結果や、マウスの老化細胞を取り除くとCOVID-19を生き残る可能性が高くなるとの研究結果も報告されています。Faragher教授らは、「老化が進むと感染症にかかりやすくなり、感染症になると老化が促進される」という負のフィードバックがあるとして、老化の治療は全面的な健康を改善する可能性が高いと主張しました。


この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
長生きするために科学者がオススメする5つの生活習慣とは? – GIGAZINE

真の健康を得るために医師が推奨する10の行い – GIGAZINE

人間は130歳まで生きられることが判明、ただし運次第 – GIGAZINE

人間の平均寿命が延びているのは「長生きできる年齢の限界が上がったから」ではないという研究結果 – GIGAZINE

生活習慣だけでなく「どこに住んでいるのか」が寿命に大きな影響を与えるとの研究結果 – GIGAZINE

「人生の目的」を持つかどうかがあなたの寿命に関係している – GIGAZINE

老化をコントロール可能な未来が来たとして私たちは寿命を延ばすべきなのか? – GIGAZINE

科学に裏付けされた「脳の健康を保てる5つのちょっとした習慣」とは? – GIGAZINE

・関連コンテンツ

2022年01月01日 23時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.

Source

タイトルとURLをコピーしました