リスク回避か積極投資か:「店舗閉鎖」が大手小売業者を悩ませている理由

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大手小売業者が、新年早々店舗の閉店を行っている。

メイシーズ(Macy’s)は1月の最初の週、自社を成長と収益性の軌道に乗せるための数年単位の計画であるポラリス(Polaris)戦略の一環として、ショッピングモールにある4つの店舗を閉店すると語った。ベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)は1月10日の第三四半期の決算発表で、2022年度の年末(通常は2月末)までに約150の店舗を閉店する予定だと語った。手芸用品のサプライチェーンのジョアンファブリック(Joann Fabric)は、1月から8つの店舗を閉店する予定だと報じられており、これは標準的な実店舗のプロセスの一環だと述べている。

実店舗とデジタルの適切なバランス

店舗の閉店は、各店舗の収益性を頻繁に評価する従来型の小売業者のあいだではよくある標準的な活動だ。しかし、このラウンドの閉店では、店舗の場所や適切な規模だけでなく、デジタル体験も考慮に入れる小売業者が増えている。これは、人々がどこでどのように買い物をしたいかに合わせて、小売業者が自社の店舗を適応させようとしているかを示している。

「第3四半期には、オムニチャネル市場の20%は前年比で売上を伸ばし、メイシーズの自社所有ブランドとライセンスブランドの既存店売上の約15%を占めるようになった」と、メイシーズのCFOを務めるエイドリアン・ミッチェル氏は、投資家やアナリストとの決算発表で語った。「当社は店舗ベースを適切な規模にするため積極策を講じてきたし、引き続き資産の収益化を優先し続ける」。

デジタルコンサルタンシー企業のシーアイ・アンド・ティー(CI&T)で小売戦略ディレクターを務めるメリッサ・ミンコウ氏は、年間のこの時期に小売業者が店舗を閉店するのは珍しくないと語る。同氏は次のように述べている。「小売戦略の観点から、実店舗とデジタルの適切なバランスをどのように実現するかを決める時期に来ている。これは必ずしも悪いものではなく、多くの場合には悪くない。むしろ、各店舗に対して投資収益率がどの程度のものかを理解することに近い」。

消費者の消費行動の変化

しかし今回、これらの店舗の閉店は、小売業者が自社店舗の一部を、消費者のショッピング行動の進化に合わせてアップデートするよう注力し続けていることも示唆している。たとえば、メイシーズが閉店する4つの店舗はショッピングモール内にある店舗だが、同社はショッピングモール以外の場所にも、小型フォーマットの店舗を開設しようとしている。百貨店である同社は7月、秋にはモール内ではない場所に、マーケットバイメイシーズ(Market by Macy’s)やメイシーズバックステージ(Macy’s Backstage)など、新しい小型の店舗を4つ開設すると語っている。同社の純売上は第3四半期に3.9%減少し、うちeコマースの減少は9%、実店舗売上の減少は1%だった。

信用格付け企業のモーニングスター(Morningstar)ユービーエス(UBS)のアナリストなどから発行されたいくつかのレポートは、コールズ(Kohl’s)が近い将来店舗の閉店ラッシュを経験するかもしれないと述べている。これは、百貨店である同社が小型フォーマットの店舗への投資を続けている最中に発行されたものだ。

これに対してジョアンは、自社のマルチチャネル戦略の強化を計画してきた。「当社はこの四半期、主要な戦略として、店舗体験の向上などを引き続き推進してきた。これにはほかの取り組みとともに、当社の風潮を一新し、店舗を配置しなおす活動が含まれる」と、ジョアンファブリックのCEOを務めるウェイド・ミケロン氏は12月に行われた投資家やアナリストとの決算発表で語った。「当社はこの四半期に13件のグランドオープンを行ったが、そのうち1件以外はすべて、店舗面積を増やすための移転か、まったく新しい市場に参入するものだった」。同社の第3四半期の純売上は、前年比7.9%減の5億6280万ドル(約720億円)だった。一方、オムニチャネルの売上は同社の売上の11%を超えた。

リスク回避のための店舗閉鎖

しかし状況によっては、不採算店舗の閉鎖はリスク管理戦術になり得る。景気後退が起きる可能性があり、運用環境が激変するかもしれない状況では特にそうだと、ピュブリシスサピエント(Publicis Sapient)で北米の小売戦略責任者を務めるヒルディング・アンダーソン氏は語る。同氏はほかのアナリストと同様、店舗の閉店は効果的なコスト削減策であり、小売業者がより収益性の高い店舗に投資を集中させるのに役立つと語る。「これは、現在のあるべき姿と、3~5年後のあるべき姿を照らし合わせるための自然なプロセスの一部だ」と、同氏は述べている。

ベッド・バス&ビヨンドは1月10日火曜日、赤字幅を縮小し倒産を回避するため、さらに多くの店舗を閉店することを認めた。同社は、9月に閉店する予定の56店舗と、さらに新たに閉店する全国62店舗のリストを公表した。同社の営業損失は、第3四半期に前年比423%増の4億5090万ドル(約577億円)に膨らみ、純損失は42.2%増の約3億9300万ドル(約503億円)に達した。

ベッド・バス・アンド・ビヨンドと同様に、ディスカウントチェーンのビッグロッツ(Big Lots)も、2022年12月に行われた2022年度第3四半期決算発表で、「店舗の閉鎖件数をさらに増やす」ことを発表した。小売業者である同社は、インフレによる消費者支出に与える影響によって、四半期の業績が低迷したと語る。この発表にもかかわらず、同社は地方や小都市の市場に特化してきており、これらの地域における新店舗は「堅調な業績」を見せている。

アンダーソン氏は次のように述べている。「同社はこれらのリースのいくつかを解約するため、破産申請や何かほかの機構の正式なプロセスを待つのではなく、店舗の拡大に積極的に投資し、最新の状態を維持する予防的なスタンスをとっているのだと思われる。経済的には、市場には多くの不確定性が存在するということを認める価値があると思う」。

[原文:Why store closures are plaguing big-box retailers]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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